王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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白鳥雪 編

第19話

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(さっきまで痛かったのに、不思議...)
雪に塗ってもらうと一段と調子がよくなる気がする。
「雪」
◯「なんでしょう?」
「あのね、前から聞きたかったんだけど...。どうして周りに真緒さんみたいな完璧な女性がいたのに、私を選んでくれたの?」
◯「一つ目は、真緒さんは女性というよりは共に過ごしてきた家族のようなものだからです。二つ目は...あなたが可愛いのが悪いんです」
「...!?」
◯「初めて会ったときから目が離せなかった...。あなたは可愛いのに、自分でそれに気づいていない。どうしようかと思いましたよ」
「雪...」
ポロポロ、と目からこぼれ落ちる。
◯「泣かないでください。あなたに涙は似合いませんから」
雪は、ぐしぐしと頬を伝う涙をふいてやる。
「嬉しくて...」
◯「まったく、あなたは...。それで最近元気がなかったのですか?」
「ずっと、考えてたんだ...。どうして私みたいな欠陥品を選んでくれたのか...」
◯「...!彼女たちに何を吹き込まれたか知りませんが、あなたは欠陥品ではありません!」
ぎゅう、と抱きしめられる。
彼女たちとは、同じ秘書として働く女性の意地悪集団のことだ。
◯「あなたには、人を優しく思う心があります。それなのに、欠陥品なんて言わせません!」
「せ、つ...」
二人はそのあと、何度も確かめるように口づけを交わした。
月が綺麗に輝いていた...。
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