王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川真人 篇

第14話

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この日は待ちに待った休日。
街を見てまわることになった。
▲「どうかな...?ここ、入ってみる?」
真人が指をさしたのは一つのカフェだった。
(可愛い...)
「入ってみたい!」
▲「よし、じゃあ...」
「...っ!」
(足が...)
真人は黒羽を一度見て、
▲「ちょっと待ってて!」
近くのベンチに黒羽を座らせ、店の方へ行ってしまった。
(足が痛むこと、気づいてくれたんだ...)
そんな優しさに黒羽は思わず泣きそうになる。
▲「お待たせ!あのお店、バニラシェイクが美味しいらしくて...黒羽?どうしたの?」
気がつくと真人に抱きしめられていた。
「ごめんなさい、真人...。気を遣わせて、迷惑かけて、本当にごめんなさい...」
▲「...大丈夫。足が痛むのは黒羽のせいじゃないでしょ?俺の方こそ、いっぱい歩かせちゃってごめんね」
よしよしと頭を撫でて、より強く抱きしめる。
「真人...」
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(...)
黒羽は真人のシャツが濡れるまで泣いてしまったので恥ずかしくなってしまった。
▲「取り敢えず、シェイク飲もうか」
「う、うん」
▲「実は俺のはチョコレート味にしてみたんだけど...少しいる?」
「いいの?」
▲「うん。...はい」
「ゴクゴク...美味しい!ありがとう、真人」
ふわり。
▲「その笑顔が見たかったんだ。笑ってくれてよかった...」
真人は安心しきった顔をしている。
▲「俺にもそのバニラシェイク、一口ちょうだい」
「えっ、わっ...」
(よくよく考えると、これって間接キス...?)
黒羽は夕陽のような真っ赤な顔をしている。
▲「黒羽?...!」
真人も気づいたようだった。
▲「ご、ごめん!」
「私、は...嫌じゃないよ?真人のなら、嫌じゃない...」
▲「そんな可愛いこと言うの、反則」
「んっ...」
ちゅ、と音をたてて唇は離れた。
▲「こっちの方が、何より甘い」
にこりと真人は笑っていた。
「か、帰ろうか!」
▲「そうだね」
二人は手を繋いで家路を急いだ。
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