王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川真人 篇

第16話

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▲「黒羽、レジをお願いできる?」
この日は真人の本格的なお店のお手伝いをすることになった。
「うん!」
(うまくできるかな...)
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(すごい...!)
どんどん花が売れていく。
(真人がそれだけ信用されているんだろうな...)
「ありがとうございました」
ふわり。
ー「お姉さん、ありがとう!」
まだ小さな男の子が手をふってくれた。
「また買いにきてください」
ふわり。
(これで、間違ってないのかな...)
ちらりと真人の方を見ると、優しく微笑んでくれた。
(よかった、合ってたみたい...)
黒羽もふわりと笑顔を見せた。
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▲「黒羽、お疲れ」
「お、お疲れ...」
いかに体力を使う仕事なのか、改めて実感した。
(ずっと立ってたせいか、足が...)
▲「午後はしばらく休んでて」
「いいの?」
▲「うん。そんなに忙しくならないし、それに...」
黒羽の足に真人の細い指がそっと触れる。
▲「足、痛むでしょ?」
(気づいてくれたんだ...)
「ありがとう」
▲「あとで軟膏塗ってあげるから、待っててね」
「...ごめんなさい」
真人が黒羽を抱きよせる。
▲「言ったでしょ、足が痛むのは黒羽のせいじゃないって。それでももし、ごめんって言うなら...」
「...!?」
唇と唇が重なる。
「んっ...」
思わず身を捩って避けようとするが真人の腕に力で勝てるはずもなくされるがままになってしまった。
▲「午後のために、エネルギーを充電させてもらった。いい?足のこと...自分のせいで、なんて思わないでほしい。俺はいつも、優しくて強い黒羽から元気をもらってるから」
「真人...ありがとう。私も、真人に助けてもらってばかりじゃなくて、真人のことを支えられるようになりたい」
ふわり。
▲「本当に優しいんだね...」
ぽん、と頭をなで、
▲「じゃあ午後のお仕事いってきます!」
「いってらっしゃい」
(真人、ありがとう)
黒羽の顔には再び笑みが浮かんでいた。
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