王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚篇

第7話

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▼「ありがとうございます」
渚はため息をついた。
▼「...」
「あ、あの!」
少し離れた場所から黒羽の声がした。
「これ、忘れ物です」
ー「あ!お姉さん、ありがとう」
「どういたしまして」
ふわり。
「お大事に...」
ばいばーい、と子どもが手をふり、母親が頭を下げていた。
▼「おい、何してる」
「大切なものなんじゃないかなって、思って...。あ、あと白玉を追いかけてきたの」
泥だらけの白玉は渚に抱かれ、じたばたしている。
▼「おい白玉...」
「おいで、白玉」
白玉は黒羽の方に走っていき、すりよる。
「シャワー借りるね。行こう、白玉。渚の邪魔をしたらダメだよ」
白玉は大人しくついていく。
▼「...」
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▼「白玉、飯だ」
その日の夕方、早めに店を閉めた渚は白玉にご飯をあげていた。
「いただきます」
▼「...」
白玉が渚のズボンに噛みついた。
▼「どうしたんだよ、白玉」
「...多分、いただきますって言ってって言ってるんじゃないかな?」
▼「はあ?」
白玉はさらに強く噛んでくる。
▼「...いただきます」
取り敢えず渚が言うと、白玉はズボンを噛むのをやめた。
▼「おまえ、よく分かったな」
「なんとなくそう思っただけだよ」
白玉と黒羽は、渚が知らない間に仲良くなっていた。
渚は少し、悔しかった。
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その日の夜、黒羽は字の練習に励んでいた。
(早く上手になりたい...)
▼「おまえ、字が書けないのか」
「わっ、渚...?」
▼「漢字が書けないのか」
「...うん」
▼「...は、下手くそ」
黒羽はその言葉に傷ついた。
(そうだよね、普通は書けるものなんだもんね...)
「...そうでしょ?」
ふわり。
▼「程々にしろよ」
そう言って渚は出ていった。
「...ふぅ」
黒羽は一人、泣いていた。
(上手に笑って、誤魔化せたかな?)
こうして黒羽は夜の間、ずっと嗚咽をもらしていた。
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