王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚篇

第46話

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何度目かになる作戦会議。
いつも賑やかな会話からはじまる。
◇「玲音うるさい」
◆「美音ひでー!」
☆「本当のことだろう?」
▲「遥、言い過ぎだよ」
♪「玲音がうるさいのはいつものこととして...どうする?本拠地に乗り込む?」
▼「いきなり入るのは危険だ」
♪「じゃあまた、二手に分かれようか。雑魚は美音たちに任せるよ。で、僕たちはボスをやっつけよう」
☆「しかし、市役所近くとなると...またあの変な攻撃を仕掛けてくるんじゃないか?」
「それは、私が止める。この前はビックリしたけど...今度は大丈夫だよ」
☆「どういうことだ?」
黒羽はみんなが自分が人魚であることを知らないことに今さら気づいた。
なんと説明しようか考えていると、渚が咄嗟に答える。
▼「あの手品はかなり凝っているが、黒羽なら仕掛けをはずせる。美音はもう、あいつに目をつけられているし...黒羽のことを、あいつは『何もできない女』だと思って油断しているはずだ。だが...こいつが一番いろんなことができることを、俺が知っている。だから俺は、こいつに任せたい」
(渚...)
♪「彼氏ならではの意見だね」
「...!」
◇「黒羽、顔赤い。渚も」
▼「うるせえ」
○「素直に認めろ、渚。ところでみなさん、他の証拠についてはどうするんですか?」
♪「それは僕が持ってるよ。いい?この作戦でいきたいんだけど...」
錬が広げた図をもとに、作戦がたった。
☆「ではこれで今日は解散だ」
みんなが帰ったあと、黒羽は渚に礼を言った。
「ありがとう、渚。助かったよ。それに、ああ言ってくれて嬉しかった」
ふわり。
▼「わ、忘れろ。思い出しただけで恥ずかしいから」
「忘れたくないよ」
▼「じゃあ...」
「んぅっ⁉」
いきなりの激しい口づけに、黒羽の息はすぐにあがってしまう。
▼「さっきごまかしたことの報酬な」
顔を真っ赤にして渚が言う。
「ふふっ」
黒羽はたちまち笑顔になった。
(あと三日で作戦決行...。全部に片がつくといいな)
この日は曇っていて月が見えなかったが、二人の心はあったかかった。
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