王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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青海錬 編

第5話

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◇《みんなで出かけない?》
美音からメールがきたのは記憶に新しい。
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遊園地、という場所らしい。
その場には五人いた。
...ん?五人?
◆「こいつは新人の王間晴男(おうま はれお)だよ!」
■「王間です」
◇「彼は、あまりしゃべらないから...」
♪「...よろしくね」
珍しく錬が警戒している。
(でもたしかに、どこかで会ったことがあるような...)
♪「...足、痛むんじゃない?」
「ごめんなさい...」
人混みのせいか足がいつもより痛む。
♪「あの、さ。俺は黒羽のことが」
~「おうおう、見つけたぜぇ~」
(この人たちは...!)
町で襲ってきたやつら。
でも数は二十人近くいた。
◇「休日出勤になったね」
◆「...ちっ、もっと気づくのが早ければ」
■「あんた、一般市民だろう。さがっていろ」
♪「残念だけど、それには時間が足りなかったみたいだ」
いつの間にか、ごろつきたちに囲まれていた。
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~「いい女は離さない主義でよぉ~...」
♪「うるさい黙れ。...僕の彼女に触るな」
~~「状況分かっとるんか、おら~!」
錬の頬に攻撃が...当たる前に、ごろつきは崩れ落ちた。
~「なっ...!?おまえら、やっちまえ!」
◇「...仕方ない。作戦は『アンサンブル』でいく。
     ...オペレーション、スタート」
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(すごい...!)
私以外の四人はどんどんごろつきの塊を蹴散らしていく。
~「ぎゃあああああ!」
しかし。
(錬、気づいてない!)
背後から二人、迫っていた。
(私は、王子様を探すために来た。でも、私が愛しているのは...)
「錬!危ない!」
ザシュ、と音がする。
斬られていたのは...
♪「黒羽!?」
「...っつ」
肩から出血している。
♪「おまえらあああああああ!」
バシッ!バシッ!と音がする。
次の瞬間には、ごろつきたちの手に手錠がかけられていた。
~「おまえら、一体なにもんなんだよ...」
◆「俺らか?俺らは...」
◇「...公安零課」
♪「...っ」
■「こいつらは俺が連れていっておきます」
◆「ああ、俺も行くよ!」
◇「私は報告書を...。錬、二人でごゆっくり。診たところそこまで傷は深くないから二、三日安静にして。それと、今日から一ヶ月おやすみをあげる。黒羽を守って」
♪「黒羽!黒羽!大丈夫!?」
「ごめんなさい、迷惑かけてばっかりで...」
♪「とりあえず応急処置はした。帰ろう」
「うん...」
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♪「どうして僕なんかを...」
「『僕なんか』じゃないよ...。確かに、いつも錬は私を守ってくれる。足が痛むのにもすぐに気づいてくれる。でも私は、錬に死んでほしくない!だって私は錬のことが...」
♪「ちょっと待って。そういうのは男の口から言うものだよ」
「...?」
♪「僕は、黒羽のことが好きなんだ。だからずっと側にいてほしいって、今日言うつもりだったんだけど...。そのために、玲音が場所を用意してくれたのに...」
「...!じゃあ、錬は私のこと...好き、なの?」
♪「黒羽...愛してる」
「...!」
チュ、と軽く口づけされる。
♪「ケガが治ったら...この続き、してもいい?」
「う、うん...」
(続きって、なんだろう...)
そんな疑問を残しながら、黒羽はメールで美音に聞いてみようと思っていた。
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◆「...ね?お互い気づいていないようですけど、順調でしょう?」
■「ああ、安心した。だが...」
◆「?」
■「あの女のことだ、また何か仕掛けてくるはずだ。この命に代えても、あの娘を守ろう」
◆「おっさんにしか見えませんよ、今のあなたは...。しかしまた、何故彼女をそんなにも守ろうと思うのです?」
玲音は疑問だった。
彼や彼女の正体にも、何故彼女を命に代えても守ろうとするのかも。
■「...これは、約束じゃからのう」
◆「誰との約束です?」
■「内緒じゃ。というか、一つ調べたいことがある」
二人がこんな会話をしていることを誰も知らない。
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