178 / 385
夏彦ルート
第51話
しおりを挟む
お仕事が休みの日、夏彦が休んでいる間にレシピどおりに試してみようと思っていると、ぱらぱらと何かが崩れる音がした。
そちらの方を見てみると、1冊のリングノートがばらばらになってしまっている。
順番までは分からないけれど戻しておきたくて、つい中身が見えてしまった。
【兄さんとの思い出がなくなることはない。そして、これは自分への戒めだ】
そんな言葉が並ぶ頁には3枚の写真が貼られていた。
小さな男の子がふたり写っているもの、その子たちが成長したであろう姿のもの…そして、ギターを持って笑っている少年と別の楽器と笑っている青年。
…ここに写っているのが誰かなんて訊かなくても分かる。
「月見ちゃん?」
後ろから声をかけられたような気がするけれど、誰がいるか確認することなんてできない。
自分でもよく分からないけれど、涙が溢れて止まらなかった。
彼が背負っているものはどれ程重いのだろう。
「ごめんなさい、なんでもなくて…」
「ああ、それ…落ちちゃったんだね。大切に扱ってくれてありがとう」
「あ、あの、これ…大切なもの、」
「うん。だけど、破れなかったのは奇跡だよ。本当にありがとう」
「…夏彦は」
「ん?」
「夏彦は、どうして人を護っているんですか?」
唐突すぎたかもしれない。
ただ、何を話せばいいのか分からなくて咄嗟に出てきたのがそんな言葉だった。
「前に話さなかったっけ?」
「そう、だったかもしれません。でも、そういうことじゃなくて、夏彦は、傷ついていて、でも、それだけじゃなくて…」
言葉が上手く繋がらない。
どんな反応をするのがいいのか、どんな話をすればいいのか分からなかった。
多分夏彦は、お兄さんを傷つけた相手を許していない。
もしもその相手を見つけたらどうするんだろう。
これから私には何ができるのだろうか。
そのとき、指先に痛みがはしる。
「……っ」
「月見ちゃん?大丈夫?」
「お願いします。今は、近づかないでください」
ファイルを手渡してベランダに出る。
どこまで力が暴走してしまうか分からないだけに、本当はすごく怖い。
もしも止められなかったらどうしよう、もしも誰かを傷つけてしまったら…。
感情を抑えたいのに、そんな不安ばかりがつのっていく。
「…止まって」
そんな呟きを風が嘲笑うようにさらっていく。
グローブをはずして、人がいないであろう空に向かって手をかざす。
どんな状態になるのか分からないだけに、見たくなくて目を閉じる。
こういうとき、私が普通だったらよかったのにと少しだけ考えてしまう。
──普通の女の子だったら、夏彦の隣を歩けたのかな。
そちらの方を見てみると、1冊のリングノートがばらばらになってしまっている。
順番までは分からないけれど戻しておきたくて、つい中身が見えてしまった。
【兄さんとの思い出がなくなることはない。そして、これは自分への戒めだ】
そんな言葉が並ぶ頁には3枚の写真が貼られていた。
小さな男の子がふたり写っているもの、その子たちが成長したであろう姿のもの…そして、ギターを持って笑っている少年と別の楽器と笑っている青年。
…ここに写っているのが誰かなんて訊かなくても分かる。
「月見ちゃん?」
後ろから声をかけられたような気がするけれど、誰がいるか確認することなんてできない。
自分でもよく分からないけれど、涙が溢れて止まらなかった。
彼が背負っているものはどれ程重いのだろう。
「ごめんなさい、なんでもなくて…」
「ああ、それ…落ちちゃったんだね。大切に扱ってくれてありがとう」
「あ、あの、これ…大切なもの、」
「うん。だけど、破れなかったのは奇跡だよ。本当にありがとう」
「…夏彦は」
「ん?」
「夏彦は、どうして人を護っているんですか?」
唐突すぎたかもしれない。
ただ、何を話せばいいのか分からなくて咄嗟に出てきたのがそんな言葉だった。
「前に話さなかったっけ?」
「そう、だったかもしれません。でも、そういうことじゃなくて、夏彦は、傷ついていて、でも、それだけじゃなくて…」
言葉が上手く繋がらない。
どんな反応をするのがいいのか、どんな話をすればいいのか分からなかった。
多分夏彦は、お兄さんを傷つけた相手を許していない。
もしもその相手を見つけたらどうするんだろう。
これから私には何ができるのだろうか。
そのとき、指先に痛みがはしる。
「……っ」
「月見ちゃん?大丈夫?」
「お願いします。今は、近づかないでください」
ファイルを手渡してベランダに出る。
どこまで力が暴走してしまうか分からないだけに、本当はすごく怖い。
もしも止められなかったらどうしよう、もしも誰かを傷つけてしまったら…。
感情を抑えたいのに、そんな不安ばかりがつのっていく。
「…止まって」
そんな呟きを風が嘲笑うようにさらっていく。
グローブをはずして、人がいないであろう空に向かって手をかざす。
どんな状態になるのか分からないだけに、見たくなくて目を閉じる。
こういうとき、私が普通だったらよかったのにと少しだけ考えてしまう。
──普通の女の子だったら、夏彦の隣を歩けたのかな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる