転生したら大嫌いなキャラだったけど何故か主人公に愛されそうです

五話 辛い発作

　ルナの家に来て5日が経った。
　この間にわかった事はルナの発作がかなり酷いということだ。

「けほっけほっ……」

「ルナ。苦しいね……」

　夜になるとルナは発作を起こし、咳をしたり胸の苦しさに耐えている。
　その度に隠そうとするので、そこは少し困ってる。

　ルナの発作はゲーム内でも知っていたけど、傍で見るとかなり酷いと分かる。　

　咳が止まらず、胸が痛み、涙をぼろぼろと溢す姿は見ているだけで僕まで辛くなる。

　こんな発作ずっと繰り返してたら精神がすり減るし、死すら覚えてしまう。

　僕は不治の病を治せる回復の魔法も持っているがまだ上手く制御出来ない。
　この力が制御可能になるのはゲームではルナとの一騎討ちが終わった後だ。多分ルナがくれるあの光の玉が魔法を制御可能にするのだろうが、そのルートになればルナが死ぬので回避することにしてる。

　多分他になにか、回復魔法を制御できる様にするルートがあるのだろうけど、フェアリー・スクイズはストーリーを見ただけで、やり込みをしていなかったからその辺りの情報が僕にはない。

　……情報があれば真っ先に探すんだけどね……

　フェルの持つ回復魔法はルナが患う、不治の病を完治させることが出来る唯一の魔法だったりする。
　なにせこのゲームではヒロインのアクアもこの病を患っている。
　まぁ、アクアの場合、ルナみたいに重くないからまだマシだけど。

　ちなみにルナの病は隠しルートで初めて酷いものだと分かるようになっている。

「けほっ…けほっ…フェル…くるしい……」

「今癒してるからね……」

　ルナの胸に手を当て回復魔法を当てるとルナの呼吸が整う。

　あまりの苦しさに過呼吸になりかけていたらしく、肩が酷く上下している。

　このままこの場所に置いておく訳には行かないので、一昨日、父さんにルナの事を話し、僕の家に引き取る準備をして貰っている。

　こんなに苦しい病を持っているのに、ルナはゲーム内では途中から一人で過ごすことになる。

　しかも発作の苦しみから死を悟ったルナが取る行動は僕に嫌われること。

　邪神と契約して、無理やり体を強くして言葉遣いも変えて、フェルのライバルとなるルナ。

　彼は嫌われる為にたくさん沢山酷いことをする。

　しかし邪神の力がルナを苦しめ始めてしまう。

　そしてフェルと一騎討ちになって、敗れた後、ルナは言葉使いも戻り、フェルが知ってるルナとなる。

　そしてフェルの腕の中で眠るように死んでしまう。フェルの魔法の温かさに身を寄せながら……

　あのラストシーンを思い出すだけで泣きそうになってしまう。だから必ずルナを守り抜くって決めてる。

「フェル……」

「ルナ。苦しくない？」

「うん……ありがとう…暖かいね。フェルの魔法」

　ルナは僕の手を握る。

「僕が護るから大丈夫だよ。今は安心してお休み」

「フェル…」

　そしてルナは眠りに落ち、僕はルナの額にキスを落としたのだった。