王に振られた公爵令嬢は王の側近に拾われる

空田かや

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22 帰還

門の前は人であふれていた。

討伐に成功した事を祝う声、王を心配する声がそこここに聞こえる。

スピナは貴族と分かる、その場にそぐわないドレスで来てしまった事に
後悔を覚えながら、ショールを頭から被り、そこに混じって兵の帰還を待つ。

すると一人が声をあげた。

「王が帰還されたぞ!兵が見える…!」

それとともに「オー!」「ワー!」という歓声が沸き上がる。

兵や騎士の一団が隊列を組んで通って行く。

しばらくそれが続いた後、いつもなら金髪をきらめかせた王が馬に乗り
颯爽と現れる…。

ところが今日は豪華な白いテントのような馬車が、兵に守られるように進んで来る。

スピナの胸は、ギュっとなった。
その中に、王が横たわっているのが想像できる。
この間、優しくチョコレート菓子をくれた王。

スピナの青春の全て…。

スピナは悲しみのあまり顔を手で覆う。

気がつくと、一人の男に目が吸い寄せられていた。
その馬車を守る騎士の中で、一際目立っていたからだ。

彼の周りだけ清浄な空気に包まれている…。

銀髪のルドンだった。


スピナに、嬉しさと安堵の気持ちが広がる。

しかしそのすぐ後、その馬にもう一人乗っているのを見つけて胸が詰まった。

ルドンのローブの中に、すっぽりとくるまって
馬に乗っている女が目に入ったからだ。

遠目から見ても美しい、ほとんど白色と言っていいほどのプラチナブロンドの髪。
まるで光を放っているようだ。

そのさらりとした髪の頭を守るように、ルドンが後ろから包み込んでいる。

討伐や戦の際、女と帰還のする事は稀にある。

略奪なのか、拾ったのか、連れて帰ったのか…。
ただ上官クラスではそんな事はほとんどない。

もし、あったとすれば醜聞を防ぐ為に内緒で連れて来るか
下士官に連れてこさせる。

王の側近がそんな事をしているのは、普通ではない。

スピナはルドンが生きていた事の喜びと
ルドンが、女と共に帰還した事の絶望を同時に味わった。

スピナがふと気がつくと、兵の帰還は終わり
人々はちりぢりに自分の家に帰って行く所だった。

今朝、あんなことを考えなければよかった。

愛人でも連れ込んで自分から出ていってもらうようにする…などと。
本当になるとは思わなかった。
自分が家に帰る意味などあるのであろうか…?

…でも…。まだ、愛人と決まったわけではない。

何かの理由で彼女を馬に乗せただけ。
そう思うと帰路への足も速くなる。


家にたどり着いた時には真っ暗になっていた。

スピナは震える手でドアを開ける。
玄関で出迎えてくれたのはシオだった。

シオはスピナを見ると、気まずそうな笑顔を向けた。
スピナは無言のまま、居間に向かう。

ルドンは夕刻帰還した際の騎士姿で居間のソファーに座っていた。

ルドンはスピナに気がつくと、一瞬嬉しそうに微笑む。
しかし、すぐに問いつめるようにスピナに言った。

「…スピナ。どこに行っていた?こんな夜に…。一人で…。」

「ルドン様…。」

スピナは長距離を歩き、まとめた髪も乱れドレスもヨレヨレだった。
汗で、化粧も落ちてしまった顔はみっともないに違いない。

ルドンの隣には先程、遠くから見た彼女がいた。

プラチナブロンドの腰まである髪の毛。
深紅の瞳、深紅の唇。
男の人が求める理想の美女である。

ルドンはその女の手を、しっかりと握りしめていた…。

「この方は、レジーという。しばらく家に居てもらう事になった…。
だからそのつもりで頼む。今回の討伐では王に怪我を負わせてしまった。
全て私の責任…。王の事を守りきれず…。」

ルドンは辛そうに話す。

レジーはルドンに手を握られたまま、クスリと笑ってルドンの膝の上に乗る。
ルドンは少しひるむが、そんな様子を楽しむようにレジーが続ける。

「ルドン様の奥様ですか?よろしくお願いしますね。」

そう言うと、にっこり笑った。


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