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35 一縷の望み
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「いえ…。いえいえ王
そんな事はしなくていいんです…。」
王は立ち上がると、スピナの元に歩き出す。
「……なぜだ?」
王は、マントを邪魔くさそうに払いながら言う。
「……。」
スピナは、一縷の望みをかけている事を王に
知られるのが恥ずかしかった。
それでも正直に言った。
「王が談判に行ったら、今日にでもルドン様と私の関係は終わってしまう…。
…でも、何も言わなければ、もう少し私を側に置いてくださるかも…。
私は、レジー様と共に暮らすことになったとしても…。」
「…レジー?」
王はその名前に反応して、聞き返す。
「アフェリエアの?ラビー族の…。」
「王…。存じ上げておりますか?」
「金髪の…だろ?あれは私の愛人だ。
先の討伐でそうなった…。」
全て話す必要はないと思ったが、なぜかスピナを前にすると、王は正直になった。
「アフェリエアの秘境に住んでいるラビー族に
討伐の協力を頼みに行った際
レジーと恋仲になってしまって…。」
王は遠い目をして、はるか昔の事を話すように話を続ける。
「……それで討伐の最中にも二人で抜け出し
事におよんでおった…。」
「…とっ討伐の最中に…ですか?」
スピナは驚いて王の顔を見る。
「…ルドンがいたから、私がいなくても
大丈夫そうだったし……。
まぁ、それはいいとしよう。」
王は、切り替えるように声色を上げて、話を続ける。
「あの女、愛人にしてやると言ったら王妃では
ないのかと激怒して、この私に攻撃を…。
ラビー族が女傑の一族だったのを忘れていた。
国の中でもあそこは、秘境中の秘境。
独自のルールを持っておるし
女が異常に強い…。油断した。
…男は寝所でも気を抜いたらいけない…。
良い学びをしたわ……。」
「お怪我は、その時の…?」
魔物退治で重傷を負ったわけではないのかと、スピナは驚き呆れる。
「うむ…。あいつは強くて…。
だから、ルドンが直接押さえつけて
家に連れて帰ってくれたんだろう…。
私はずっと意識を失っていたわけだから
そこを襲われたら、いくら私でも…。」
「…でもレジー様のお部屋からはルドン様との
逢瀬の声が聞こえ、朝には贈り物の
銀のネックレスを、レジー様が着けて……。」
「ふっ…。それは首輪だ…。相手の魔力を
封じ込める、ルドンの得意技の一つ…。」
王は、茶会でスピナと出会った時の事を思い出した。
「そなたは、また立ち聞きをしたのか?
まったく…。懲りないな。」
王はそこで一つため息をついて、話を続ける。
「まぁ…声は、逢瀬ではなく二人で戦っていた声じゃないのか?
…首輪を着けるのは大変だから。」
スピナはそれを聞き、後悔の念を抱く。
ルドンはおそらく、レジーを抱いていない。
ルドンも、そう言っていた…。
昨夜は、ルドンの言葉を一つも信用せず……。
いや、そもそもここ最近、ルドンの言葉を
真面目に受け取った事があっただろうか。
ルドンの言葉を無視したのは、保身の為だった。
そんな事はしなくていいんです…。」
王は立ち上がると、スピナの元に歩き出す。
「……なぜだ?」
王は、マントを邪魔くさそうに払いながら言う。
「……。」
スピナは、一縷の望みをかけている事を王に
知られるのが恥ずかしかった。
それでも正直に言った。
「王が談判に行ったら、今日にでもルドン様と私の関係は終わってしまう…。
…でも、何も言わなければ、もう少し私を側に置いてくださるかも…。
私は、レジー様と共に暮らすことになったとしても…。」
「…レジー?」
王はその名前に反応して、聞き返す。
「アフェリエアの?ラビー族の…。」
「王…。存じ上げておりますか?」
「金髪の…だろ?あれは私の愛人だ。
先の討伐でそうなった…。」
全て話す必要はないと思ったが、なぜかスピナを前にすると、王は正直になった。
「アフェリエアの秘境に住んでいるラビー族に
討伐の協力を頼みに行った際
レジーと恋仲になってしまって…。」
王は遠い目をして、はるか昔の事を話すように話を続ける。
「……それで討伐の最中にも二人で抜け出し
事におよんでおった…。」
「…とっ討伐の最中に…ですか?」
スピナは驚いて王の顔を見る。
「…ルドンがいたから、私がいなくても
大丈夫そうだったし……。
まぁ、それはいいとしよう。」
王は、切り替えるように声色を上げて、話を続ける。
「あの女、愛人にしてやると言ったら王妃では
ないのかと激怒して、この私に攻撃を…。
ラビー族が女傑の一族だったのを忘れていた。
国の中でもあそこは、秘境中の秘境。
独自のルールを持っておるし
女が異常に強い…。油断した。
…男は寝所でも気を抜いたらいけない…。
良い学びをしたわ……。」
「お怪我は、その時の…?」
魔物退治で重傷を負ったわけではないのかと、スピナは驚き呆れる。
「うむ…。あいつは強くて…。
だから、ルドンが直接押さえつけて
家に連れて帰ってくれたんだろう…。
私はずっと意識を失っていたわけだから
そこを襲われたら、いくら私でも…。」
「…でもレジー様のお部屋からはルドン様との
逢瀬の声が聞こえ、朝には贈り物の
銀のネックレスを、レジー様が着けて……。」
「ふっ…。それは首輪だ…。相手の魔力を
封じ込める、ルドンの得意技の一つ…。」
王は、茶会でスピナと出会った時の事を思い出した。
「そなたは、また立ち聞きをしたのか?
まったく…。懲りないな。」
王はそこで一つため息をついて、話を続ける。
「まぁ…声は、逢瀬ではなく二人で戦っていた声じゃないのか?
…首輪を着けるのは大変だから。」
スピナはそれを聞き、後悔の念を抱く。
ルドンはおそらく、レジーを抱いていない。
ルドンも、そう言っていた…。
昨夜は、ルドンの言葉を一つも信用せず……。
いや、そもそもここ最近、ルドンの言葉を
真面目に受け取った事があっただろうか。
ルドンの言葉を無視したのは、保身の為だった。
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