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44 卒業後の希望
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形のいい顎に手を当てて、神妙な面持ちで
立っている王に、ルドンは不意に言った。
「王…私は本当は卒業したらあなたなど捨てて
外国で、商人でもして暮らそうと
思っていたんですよ。」
急に思わぬ事を言い出したルドンに王は慌てる。
「…商人……?何を言っている?
お前、私を捨てようと思っていたのか?!」
下を向いて、ハハッと軽く笑うとルドンは続けた。
「学生の頃、私は王の周りの人間を
全て把握していた。
それは、王を守る上で必要な事だから…。
あなたの事も調べた…スピナ。」
当時を思い出したのか、ルドンは先程とは違う
優しい目でスピナを見る。
「あまりにも無防備だったあなたを、せめて
卒業までは王の毒牙から、守ってやろうと
当時の私は酔狂にも思った…。」
王は毒牙と言われ、抗議をしようかと思ったが
踏みとどまった…。
「だから、王の嫌う髪型と服装にさせた……。」
ルドンはスピナに目をやり、スピナが
マントの中に、当時のオレンジ色の服を
着ている事に気がついた…。
「なぜ着ている?
……でも、まぁ…すまなかった…。スピナ。」
スピナはルドンにまで、この服を着ている姿を
見られた事に屈辱を覚えた…。
ルドンは、言いたい事を言ってしまいたかったのか、そのまま話を進めた。
「だが、あなたを守っているうちに
本気になってしまった。
それで、ローセンナ公に正式に申し込みに行った…。
商人の息子などと、一笑に付されたが諦めずに
通っているうちに信用を得る事が出来た。
卒業するまでに、貴族からの申し込みがなく
この先、娘がこの国で幸せに暮らせるように
国にとどまり尽力するなら、娘を託すと
言っていただけた……。」
そこまで話すと、ルドンは学生の頃のスピナを
思い出したのか、自然と顔をほころばせる。
そして頭に手を突っ込むと、銀色の髪を
ぐしゃりとかき上げて、辛そうに目を閉じた。
「悪いのだが、私は王と女を共有する趣味はない……。
私は嫉妬深いという自覚がある。
これ以上は無理だ。
──お別れだ…スピナ…。」
ルドンは、泣いているスピナに近づくと
片膝を立ててひざまずいた。
「私は、自分が本気を出せばあなたを守って
やれるし幸せに出来ると思っていた。
こんな王のそばでも、夫婦で添い遂げられると…。
しかし、違った。
レジーとの件も……。
あなたからの信頼を得ていないから、ここまで
こじらせてしまったのだと思う……。
全て私の力不足だ。
ただただ、あなたに混乱を与えた…。
邪魔な私は、消える。
あなたには私より、王の方が似合う。
きっと、幸せになれる…。」
そう言うと切なそうな瞳で、スピナの瞳を見つめる。
スピナの目の周りは、泣き過ぎて赤くなっていた。
立っている王に、ルドンは不意に言った。
「王…私は本当は卒業したらあなたなど捨てて
外国で、商人でもして暮らそうと
思っていたんですよ。」
急に思わぬ事を言い出したルドンに王は慌てる。
「…商人……?何を言っている?
お前、私を捨てようと思っていたのか?!」
下を向いて、ハハッと軽く笑うとルドンは続けた。
「学生の頃、私は王の周りの人間を
全て把握していた。
それは、王を守る上で必要な事だから…。
あなたの事も調べた…スピナ。」
当時を思い出したのか、ルドンは先程とは違う
優しい目でスピナを見る。
「あまりにも無防備だったあなたを、せめて
卒業までは王の毒牙から、守ってやろうと
当時の私は酔狂にも思った…。」
王は毒牙と言われ、抗議をしようかと思ったが
踏みとどまった…。
「だから、王の嫌う髪型と服装にさせた……。」
ルドンはスピナに目をやり、スピナが
マントの中に、当時のオレンジ色の服を
着ている事に気がついた…。
「なぜ着ている?
……でも、まぁ…すまなかった…。スピナ。」
スピナはルドンにまで、この服を着ている姿を
見られた事に屈辱を覚えた…。
ルドンは、言いたい事を言ってしまいたかったのか、そのまま話を進めた。
「だが、あなたを守っているうちに
本気になってしまった。
それで、ローセンナ公に正式に申し込みに行った…。
商人の息子などと、一笑に付されたが諦めずに
通っているうちに信用を得る事が出来た。
卒業するまでに、貴族からの申し込みがなく
この先、娘がこの国で幸せに暮らせるように
国にとどまり尽力するなら、娘を託すと
言っていただけた……。」
そこまで話すと、ルドンは学生の頃のスピナを
思い出したのか、自然と顔をほころばせる。
そして頭に手を突っ込むと、銀色の髪を
ぐしゃりとかき上げて、辛そうに目を閉じた。
「悪いのだが、私は王と女を共有する趣味はない……。
私は嫉妬深いという自覚がある。
これ以上は無理だ。
──お別れだ…スピナ…。」
ルドンは、泣いているスピナに近づくと
片膝を立ててひざまずいた。
「私は、自分が本気を出せばあなたを守って
やれるし幸せに出来ると思っていた。
こんな王のそばでも、夫婦で添い遂げられると…。
しかし、違った。
レジーとの件も……。
あなたからの信頼を得ていないから、ここまで
こじらせてしまったのだと思う……。
全て私の力不足だ。
ただただ、あなたに混乱を与えた…。
邪魔な私は、消える。
あなたには私より、王の方が似合う。
きっと、幸せになれる…。」
そう言うと切なそうな瞳で、スピナの瞳を見つめる。
スピナの目の周りは、泣き過ぎて赤くなっていた。
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