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第1章:笑わない操り人形
3.セントリア家の噂の真実
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カイル様のお父様……つまり、セントリア公爵家の当主にあたる人。
粗相を起こさないようにしなければならない。
──コンコン
「父上、私の客人をご紹介に参りました」
先程までの親しみやすいカイル様とは違って、今のカイル様は貴族としての威厳が漂う姿だった。
「入れ」
しばし沈黙が流れた後、扉の奥から返事が来た。
『失礼いたします』
静まり返った周囲の中、ナル達は挨拶をして部屋の中へと入っていく。
そこに居たのは、このセントリア公爵家の当主であるガーフ・セントリアと、その護衛であろう男が2人。
「カイル……客人とはそこの方か?」
「はい……左様でございます」
「フォルン伯爵家の長女の、ナル・レ・フォルンと申します」
ガーフ・セントリアは「フム……」と指で顎をなぞりながらナルの目を見据える。
10数秒目線を合わせた後、ガーフ・セントリアが口を開く。
「貴族の娘方だったとはな……なんのおもてなしも出来ず、申し訳ない」
その時、公爵家の当主でもあろう者が頭を下げた。
その状況に思わず驚いてしまったナルは、すぐに「頭を上げてください」と申す。
その言葉を聞いてガーフ・セントリアは頭を上げる。
貴族の頭はそう安いものではない。それが公爵家の、それも当主ともなれば尚更だ。
それなのにも関わらず、ガーフ・セントリアは頭を下げた。
「私が頭を下げたことに驚いているのかい?」
カイル様と同様に、またしても心が読まれた。
セントリア家はそういう訓練でもしているのだろうか?
「君は、セントリア家にはなぜこんな噂が流れていると思っているのか、聞いてもいいか?」
セントリア家の噂……それは、セントリア家の者は冷徹で、無慈悲で、人の心など持ち合わせていないと言われていることだろう。
ただ、実際のセントリア家は違った。
カイル様は執事やメイド、初対面の私にも心優しく話しかけてくれる
当主のガーフ様は、見た目こそ少し怖いものの、話してみればいい人だとすぐに分かる。
となると、この噂が流れたきっかけは……
「誰かの嫉妬によるもの……?」
結果、誰かの嫉妬によって流された噂だという結論に至った。
「さすが貴族の子供だな、察しが良い」
ナルは、カイルやガーフが人の心を読むのが得意なように、私は状況から察することが得意だ。
だから、今回も状況から結論を導き出し、結果それが正解だった。
「君になら、見せてもいいかもしれないな」
そう言いながら、ガーフ様はその長い袖の腕をまくる。そこに出てきたのは──
「犯罪……紋……?」
「そう、私は犯罪紋持ちなんだ」
それを見て、ナルは心底驚く。
犯罪紋は、過去に犯罪を働いたことがある者に課せられる罰だ。
「昔、ある貴族に嵌められてしまってね……」
そこから、ガーフ様は昔あった辛かったであろう出来事を、私のために思い出しながら語ってくれた。
◇◇◇
昔から、ガーフ様はこのセントリア公爵家が大好きだった。
ただ、公爵家は、有名であるが故に、それをよく思わない者も多数いた。
そのうちの1人が、ガーフ様の目の前でセントリア公爵家を馬鹿にした。
そのことに腹を立てて、ただがむしゃらになってしまったガーフ様は、その貴族の子供に手をあげてしまったという。
いくら先に仕掛けたのが向こう側だとはいえ、手を出したのはセントリア公爵家。
つまり、罪が着せられるのはガーフ様だけではなく、セントリア公爵家全体だったのだ。
その時、そこで自分の行いのせいでセントリア公爵家の顔に泥を塗ってしまった、その事実に後悔していたガーフ様に言い寄る、1つの影があった。
それは、セントリア公爵家を馬鹿にした、貴族の子供と、その親だった。
彼らは1つの提案をする。
それは、
①、犯罪紋をガーフ様に課す
②、①をすれば、今回のことはなかったことにする
③これからセントリア公爵家に直接危害は与えないが、こちら側に反抗するならこのことをばら撒く
ということだった。
この時のガーフ様は、まだ若かった。
その条件を受け入れてしまった。
……それが間違いだった。
その貴族は、あろうことかセントリア公爵家の噂を流し始めた。
裏仕事をしている、税を払っていない、その噂は数十個に上った。
……だけど、セントリア公爵家は何も言い返せなかった。
言い返してしまえば、更に状況は悪化するから。
◇◇◇
「だから、セントリア公爵家の噂については、全て私が悪いのだ」
だからこんな頭ぐらい下げることは躊躇わない、と言わんばかりにもう一度「こんな話を聞いてくれてありがとう」と頭を下げた。
こんなに素晴らしい貴族の家に、不景気な噂を流し始めたその貴族……いつか懲らしめてやろう。
私がただの辺境伯の娘なら、それをすることすら叶わない。
ただ、本当の私は違う、本当の私は隣国の王女、
いつか自分の国に戻った時、仕返しをしてやろう。
ただ、それは今やることでは無い。
「そういえば、どうして私はここに呼ばれたのです……?」
「あ……」
その問いかけに、2人は「そういえば話していなかった」といった顔をした──────
粗相を起こさないようにしなければならない。
──コンコン
「父上、私の客人をご紹介に参りました」
先程までの親しみやすいカイル様とは違って、今のカイル様は貴族としての威厳が漂う姿だった。
「入れ」
しばし沈黙が流れた後、扉の奥から返事が来た。
『失礼いたします』
静まり返った周囲の中、ナル達は挨拶をして部屋の中へと入っていく。
そこに居たのは、このセントリア公爵家の当主であるガーフ・セントリアと、その護衛であろう男が2人。
「カイル……客人とはそこの方か?」
「はい……左様でございます」
「フォルン伯爵家の長女の、ナル・レ・フォルンと申します」
ガーフ・セントリアは「フム……」と指で顎をなぞりながらナルの目を見据える。
10数秒目線を合わせた後、ガーフ・セントリアが口を開く。
「貴族の娘方だったとはな……なんのおもてなしも出来ず、申し訳ない」
その時、公爵家の当主でもあろう者が頭を下げた。
その状況に思わず驚いてしまったナルは、すぐに「頭を上げてください」と申す。
その言葉を聞いてガーフ・セントリアは頭を上げる。
貴族の頭はそう安いものではない。それが公爵家の、それも当主ともなれば尚更だ。
それなのにも関わらず、ガーフ・セントリアは頭を下げた。
「私が頭を下げたことに驚いているのかい?」
カイル様と同様に、またしても心が読まれた。
セントリア家はそういう訓練でもしているのだろうか?
「君は、セントリア家にはなぜこんな噂が流れていると思っているのか、聞いてもいいか?」
セントリア家の噂……それは、セントリア家の者は冷徹で、無慈悲で、人の心など持ち合わせていないと言われていることだろう。
ただ、実際のセントリア家は違った。
カイル様は執事やメイド、初対面の私にも心優しく話しかけてくれる
当主のガーフ様は、見た目こそ少し怖いものの、話してみればいい人だとすぐに分かる。
となると、この噂が流れたきっかけは……
「誰かの嫉妬によるもの……?」
結果、誰かの嫉妬によって流された噂だという結論に至った。
「さすが貴族の子供だな、察しが良い」
ナルは、カイルやガーフが人の心を読むのが得意なように、私は状況から察することが得意だ。
だから、今回も状況から結論を導き出し、結果それが正解だった。
「君になら、見せてもいいかもしれないな」
そう言いながら、ガーフ様はその長い袖の腕をまくる。そこに出てきたのは──
「犯罪……紋……?」
「そう、私は犯罪紋持ちなんだ」
それを見て、ナルは心底驚く。
犯罪紋は、過去に犯罪を働いたことがある者に課せられる罰だ。
「昔、ある貴族に嵌められてしまってね……」
そこから、ガーフ様は昔あった辛かったであろう出来事を、私のために思い出しながら語ってくれた。
◇◇◇
昔から、ガーフ様はこのセントリア公爵家が大好きだった。
ただ、公爵家は、有名であるが故に、それをよく思わない者も多数いた。
そのうちの1人が、ガーフ様の目の前でセントリア公爵家を馬鹿にした。
そのことに腹を立てて、ただがむしゃらになってしまったガーフ様は、その貴族の子供に手をあげてしまったという。
いくら先に仕掛けたのが向こう側だとはいえ、手を出したのはセントリア公爵家。
つまり、罪が着せられるのはガーフ様だけではなく、セントリア公爵家全体だったのだ。
その時、そこで自分の行いのせいでセントリア公爵家の顔に泥を塗ってしまった、その事実に後悔していたガーフ様に言い寄る、1つの影があった。
それは、セントリア公爵家を馬鹿にした、貴族の子供と、その親だった。
彼らは1つの提案をする。
それは、
①、犯罪紋をガーフ様に課す
②、①をすれば、今回のことはなかったことにする
③これからセントリア公爵家に直接危害は与えないが、こちら側に反抗するならこのことをばら撒く
ということだった。
この時のガーフ様は、まだ若かった。
その条件を受け入れてしまった。
……それが間違いだった。
その貴族は、あろうことかセントリア公爵家の噂を流し始めた。
裏仕事をしている、税を払っていない、その噂は数十個に上った。
……だけど、セントリア公爵家は何も言い返せなかった。
言い返してしまえば、更に状況は悪化するから。
◇◇◇
「だから、セントリア公爵家の噂については、全て私が悪いのだ」
だからこんな頭ぐらい下げることは躊躇わない、と言わんばかりにもう一度「こんな話を聞いてくれてありがとう」と頭を下げた。
こんなに素晴らしい貴族の家に、不景気な噂を流し始めたその貴族……いつか懲らしめてやろう。
私がただの辺境伯の娘なら、それをすることすら叶わない。
ただ、本当の私は違う、本当の私は隣国の王女、
いつか自分の国に戻った時、仕返しをしてやろう。
ただ、それは今やることでは無い。
「そういえば、どうして私はここに呼ばれたのです……?」
「あ……」
その問いかけに、2人は「そういえば話していなかった」といった顔をした──────
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