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第1章:笑わない操り人形
6.大切なものは失くしてから気づく
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──グラシア家にて
「なんて事をしてくれたんだ!!」
「な、何の事だよ?父上」
セントリア家でナルが夢の中で過去を振り返っていた頃、一方グラシア家では、親子の言い争いが繰り広げられていた。
「お前がナル・レ・フォルン追い出したせいで、
我がグラシア家が窮地に陥っているのだぞ!」
……は?
いきなり父上か帰って来たかと思えば、私はされるがままに叱責されていた。
それも、あの忌まわしきナル・レ・フォルンを追い出しただけで、だと?
「ち、父上!もう一度言っていただけますか!?」
そうだ、きっと聞き間違いだ。
私があいつを追い出しただけで、このグラシア家が窮地に陥ることなど万が一にも無い。
「はぁ……いい加減現実を受け入れろ……と言っても、私も未だに受け入れられているわけではないが」
そんな……本当に、私が聞いたことは全て事実だったというのか?
決して信じたくない、その話が?
「お前がナル・レ・フォルン……いや、ナル・レ・フォルティアを追い出したことで、つい先程我が国の国王から直々に爵位を降格するとまで言われたのだぞ!」
「た、ただの辺境伯の娘ごときが、この公爵家に居座っていることがおかしいのです!
だから私は間違いを正すために
婚約破棄破棄を……」
その時、必死に彼の父に言い訳をするランが「あっ……」間抜けな声を出し、それと同時に一気に顔が青ざめていく。
「フォルティア……まさか、あいつがフォルティア王国の王女だとでも言うのか……?」
「やっと理解したか……。
何を勘違いしているのかは分からないが、天と地がひっくり返っても、ナル様とお前が婚約などあるわけがない」
信じられない……いや、信じたくない事実を目の前に、ランは口をあんぐりと開きながら膝を地につける。
そのランには目もくれず、グラシア家当主は話の続きを始める。
「ナル様はお前に追い出された後、セントリア家に匿われたそうだ」
「……セントリア家に?」
はは……やっと俺にツキが回ってきたか!
この国の貴族なら誰もが知る、セントリア公爵家。
冷徹無比で、人間に温情を抱かない、それに裏仕事にも加担しているとか。
そんな所に匿われただなんて……考えただけで思わず口角が上がる。
働かされているか、奴隷のように働かされているか……それとも、食われたか……?
いや、それでも生ぬるいかもしれないな。
ただ、この私に恥をかかせたのだ。
「これくらいの報いは、当然だろう」
ランはグラシア家当主にすら聞こえないほど小さな声で、俯きながらそう呟く。
「また勘違いしているのか……」
やれやれ、といった様子で、グラシア家当主も思わず頭に手を当て、頭を悩ませていた。
「なぜお前はこんなにも無知なのだ……?セントリア家とフォルティア家、この2つの家系は国を超えた仲だと知らないのか?」
……は?あの悪い噂しか流れないセントリア家と、温情の厚い国のトップである、フォルティア家の仲がいいだと?
そんなの嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ。
そうだ、きっと父上は仕事のしすぎで疲れているのだ。だから、これまでのこともきっと嘘のはず……。
でも、もしも、この話が全て本当のことだとしたら。
我がグラシア公爵家の爵位は降格して、ライバルであるセントリア公爵家の権力が更に強くなるだと?
「あと1ヶ月……そうだ、あと1ヶ月お前が持ちこたえていれば、そのままセントリア家に引き渡され何も起きずに済むはずだったのに!!」
高級感溢れる木製の机をドンッという、威圧が混じった音をたてながら立ち上がる。
それでもまだ自分の非を認めようとしないランは、また震える唇を離す。
「だ、だとしたら……僕に教えてくれても良かったのではないのですか?」
「………………それは出来ない。ナル様のお父様……フォルティア王国の国王から言われているから、関係者以外に知らせることは、できなかったのだ」
ランの言葉に叱責するかのように思われたが、少し冷静になって椅子に腰をかけてから、返事をする。
「もういい、私は仕事に戻る。……お前もこれからどうするか考えておけ」
これまでかけられたことの無いほど冷徹な声色で話しかけられたランは、一瞬ビクッと震える。
バタンと扉を閉めるグラシア家当主の姿も見ずに、ランはただただ床とにらめっこをしていた。
……絶望と復讐に満ち溢れた不気味な笑顔で────
◇◇◇
私は起きたのも、朝食を食べたのも、ガーフ様を見つけたのも、日が昇る前の早朝の出来事だった。
ガーフ様が中庭の手入れをしている所を見ると、ちょうど朝日が昇ってくる。
段々と照らされる地上は、白い光に照らされるが、反射したものはこの目に色鮮やかに映り始める。
そして中庭の噴水と朝日が重なった時、目を見張る光景が現実に起こる。
光に照らされた水は、どこからともなく、弧を描くような七色の線を創り出していた──────
「なんて事をしてくれたんだ!!」
「な、何の事だよ?父上」
セントリア家でナルが夢の中で過去を振り返っていた頃、一方グラシア家では、親子の言い争いが繰り広げられていた。
「お前がナル・レ・フォルン追い出したせいで、
我がグラシア家が窮地に陥っているのだぞ!」
……は?
いきなり父上か帰って来たかと思えば、私はされるがままに叱責されていた。
それも、あの忌まわしきナル・レ・フォルンを追い出しただけで、だと?
「ち、父上!もう一度言っていただけますか!?」
そうだ、きっと聞き間違いだ。
私があいつを追い出しただけで、このグラシア家が窮地に陥ることなど万が一にも無い。
「はぁ……いい加減現実を受け入れろ……と言っても、私も未だに受け入れられているわけではないが」
そんな……本当に、私が聞いたことは全て事実だったというのか?
決して信じたくない、その話が?
「お前がナル・レ・フォルン……いや、ナル・レ・フォルティアを追い出したことで、つい先程我が国の国王から直々に爵位を降格するとまで言われたのだぞ!」
「た、ただの辺境伯の娘ごときが、この公爵家に居座っていることがおかしいのです!
だから私は間違いを正すために
婚約破棄破棄を……」
その時、必死に彼の父に言い訳をするランが「あっ……」間抜けな声を出し、それと同時に一気に顔が青ざめていく。
「フォルティア……まさか、あいつがフォルティア王国の王女だとでも言うのか……?」
「やっと理解したか……。
何を勘違いしているのかは分からないが、天と地がひっくり返っても、ナル様とお前が婚約などあるわけがない」
信じられない……いや、信じたくない事実を目の前に、ランは口をあんぐりと開きながら膝を地につける。
そのランには目もくれず、グラシア家当主は話の続きを始める。
「ナル様はお前に追い出された後、セントリア家に匿われたそうだ」
「……セントリア家に?」
はは……やっと俺にツキが回ってきたか!
この国の貴族なら誰もが知る、セントリア公爵家。
冷徹無比で、人間に温情を抱かない、それに裏仕事にも加担しているとか。
そんな所に匿われただなんて……考えただけで思わず口角が上がる。
働かされているか、奴隷のように働かされているか……それとも、食われたか……?
いや、それでも生ぬるいかもしれないな。
ただ、この私に恥をかかせたのだ。
「これくらいの報いは、当然だろう」
ランはグラシア家当主にすら聞こえないほど小さな声で、俯きながらそう呟く。
「また勘違いしているのか……」
やれやれ、といった様子で、グラシア家当主も思わず頭に手を当て、頭を悩ませていた。
「なぜお前はこんなにも無知なのだ……?セントリア家とフォルティア家、この2つの家系は国を超えた仲だと知らないのか?」
……は?あの悪い噂しか流れないセントリア家と、温情の厚い国のトップである、フォルティア家の仲がいいだと?
そんなの嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ。
そうだ、きっと父上は仕事のしすぎで疲れているのだ。だから、これまでのこともきっと嘘のはず……。
でも、もしも、この話が全て本当のことだとしたら。
我がグラシア公爵家の爵位は降格して、ライバルであるセントリア公爵家の権力が更に強くなるだと?
「あと1ヶ月……そうだ、あと1ヶ月お前が持ちこたえていれば、そのままセントリア家に引き渡され何も起きずに済むはずだったのに!!」
高級感溢れる木製の机をドンッという、威圧が混じった音をたてながら立ち上がる。
それでもまだ自分の非を認めようとしないランは、また震える唇を離す。
「だ、だとしたら……僕に教えてくれても良かったのではないのですか?」
「………………それは出来ない。ナル様のお父様……フォルティア王国の国王から言われているから、関係者以外に知らせることは、できなかったのだ」
ランの言葉に叱責するかのように思われたが、少し冷静になって椅子に腰をかけてから、返事をする。
「もういい、私は仕事に戻る。……お前もこれからどうするか考えておけ」
これまでかけられたことの無いほど冷徹な声色で話しかけられたランは、一瞬ビクッと震える。
バタンと扉を閉めるグラシア家当主の姿も見ずに、ランはただただ床とにらめっこをしていた。
……絶望と復讐に満ち溢れた不気味な笑顔で────
◇◇◇
私は起きたのも、朝食を食べたのも、ガーフ様を見つけたのも、日が昇る前の早朝の出来事だった。
ガーフ様が中庭の手入れをしている所を見ると、ちょうど朝日が昇ってくる。
段々と照らされる地上は、白い光に照らされるが、反射したものはこの目に色鮮やかに映り始める。
そして中庭の噴水と朝日が重なった時、目を見張る光景が現実に起こる。
光に照らされた水は、どこからともなく、弧を描くような七色の線を創り出していた──────
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