突然「婚約破棄」と言われても、私は婚約者ではありません!

おやっつ

文字の大きさ
7 / 16
第1章:笑わない操り人形

7.因縁と敵討ち

しおりを挟む
「ガーフ様」

影が短くなっていく中、ナルは中庭の手入れをしていたガーフに話しかけていた。
何を話そうかは、決めていない。
ただなんとなく、話したいと思った気持ちを貫こうとしていた。

「この屋敷の中では、敬称は要らんのだがね」

ゆっくりと立ち上がってくるガーフの背丈は、ナルにとって普通の身長よりも高く見えた。

「なにか用が……?」
まだ用件を伝えられていないガーフは、ナルに用件を尋ねる。
ただ、まだ何を話そうか決めていなかったナルは、少し間を置いてから口を開く。

「街に……出かけに行ってもよろしいですか?」
咄嗟に出てきた用とは、ただ出かけるということだった。……少し安直すぎたかしら?

本当は出かけに行くと言っても、特にしたいことはない。それでも何となく、街に出てみたいと思った。

街に出てから、今こう思った気持ちは、神様にでも操られているのかと感じた──

◇◇◇

──ガラガラガラ
街に出てみたが、何年間か過ごしてきたこの街はいつもと変わらない。
お祭りでもないのに、あちらこちらに屋台を開くものや、馬車をひいて通りを過ぎる貴族。

毎日のように開かれる屋台でも、毎回人が集まっているのだから、それなりに活気のついた国なのは確かだ。

……フォルティア王国も、もっと活気づいてくれると良いのだけれど……まぁ、それは今の私にできることは少ないし、また今度考えよう。

「……~……!!」
その時、どこからともなく叫び声……いや、これは嘆きが混じっている。
嘆きは怒りよりも恐ろしいと私は思っている。
嘆く時の心の強さは、怒りの感情よりも強いと考えているから。

「……少し、様子を見るだけ」
そう自分に言い聞かせ、声のする方向へと気持ち足早にして向かう。
もしこれで殺人騒動にでも発展したら、目覚めが悪いし。



「離せ!離せって言ってるんだよ!!」
近づくにつれてはっきりと聞こえてくる声は、聞き覚えのある声だった。
それもつい最近聞いたことのある声。

大事に発展しないようにと来たけれど、既に街を巡回していた騎士の人達が居た。
そしてその騎士たちに抑えつけられている人間は……

「いい加減にしないと、お前らなんてすぐに潰せるんだぞ!」

「確かに公爵家だったら可能かもですが……もうあなたの家の爵位は下がっているのです。貴族で、しかも小さな子供でもないのですから、いい加減に現実を受け止めて下さい」

そう、騎士に押さえつけられていたのは、私をグラシア家から追い出したラン・フォン・グラシアだった。怒鳴りつけるようなラン様……いや、ランの言葉に対して、泣いた子供をあやすかのような声色で騎士の人は話しかける。

私を追い出して、国王から忠告を受けたのものだと思ったけど……まさか、爵位まで下げられていたとは。
グラシア家はそこそこ長続きしていた公爵家だったはず……この1人のせいでグラシア家の、歴史に亀裂が入ると思うと、なぜか私が先代の方達に申し訳なく思えてしまう。

「本当に……離してくれよ……」
さっきまでの怒鳴り声とはうって変わって、嗚咽を漏らすかのように懇願する。

ただ、そこで私は気がついてしまった。
先程までは角度的に見えなかった、ランが右手で掴んでいるについて。

「いくら貴族といえど、を持っておいて、逃がすことは出来ない。それはそちらも分かっているだろう?」
「………………」

問いに対しての沈黙、それはつまり肯定を示唆していた。

……ランが持っていたもの、それはだった。
それもただの毒ではない、、お母様を殺した時に使われた毒とそっくりそのままだ。

……なぜ、一介の貴族がそれを持っている?
王女である私ですら、それを見たことはお母様が亡くなった時に1度見たきり。
中身の入っている物は、初めて見た。

それを、ランが持っている。
それはつまり、その毒とグラシア家になにか

その毒は発売所、製造場所、原料生産場所、原料、そのいずれもが不明で、謎に包まれている毒。
私が産まれてくるよりも数十年前に、この毒が使われた、貴族の晩餐会があった。
それは大規模なテロで、国の重役が数十人と殺されたらしい。

それからこの毒はどこの国でも、大陸中、いや、世界中で使用、所持は厳禁だ。
もしそれが発覚したら、極刑で済めば良い方だろう。

考えは冷静。
至って冷静。
見た目も冷静。

ただ……なぜだろうか?
私の考えとは裏腹に、心の奥底からなにかが込み上げてくる。

この感情は……憎悪?なぜ今私の心に?
憎悪をグッとのみこみ、1度心も冷静になる。

ただ、私は今すぐに、ここで騎士に押さえつけられている男を尋問したい。

自分の手で拷問してでも、全てを吐き出させたい。

少なくとも、その毒について知っていることは、全て吐き出させたい。


全ては最愛のお母様を殺して、最愛のお父様を今現在まで悲しませている、その小瓶の中身について知るために。

その毒をどのように使おうとしたのかは、気にならない。

私に使おうとしていることは、分かっているから。

ただ今は、この感情のままに体を任せたい、このまま、お母様の仇をうちたい、その一心だった──────
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

さようなら、婚約者様。これは悪役令嬢の逆襲です。

パリパリかぷちーの
恋愛
舞台は、神の声を重んじる王国。 そこでは“聖女”の存在が政治と信仰を支配していた。 主人公ヴィオラ=エーデルワイスは、公爵令嬢として王太子ユリウスの婚約者という地位にあったが、 ある日、王太子は突如“聖女リュシエンヌ”に心を奪われ、公衆の場でヴィオラとの婚約を破棄する。 だがヴィオラは、泣き叫ぶでもなく、静かに微笑んで言った。 「――お幸せに。では、さようなら」 その言葉と共に、彼女の“悪役令嬢”としての立場は幕を閉じる。 そしてそれが、彼女の逆襲の幕開けだった。 【再公開】作品です。

婚約破棄? あ、ハイ。了解です【短編】

キョウキョウ
恋愛
突然、婚約破棄を突きつけられたマーガレットだったが平然と受け入れる。 それに納得いかなかったのは、王子のフィリップ。 もっと、取り乱したような姿を見れると思っていたのに。 そして彼は逆ギレする。なぜ、そんなに落ち着いていられるのか、と。 普通の可愛らしい女ならば、泣いて許しを請うはずじゃないのかと。 マーガレットが平然と受け入れたのは、他に興味があったから。婚約していたのは、親が決めたから。 彼女の興味は、婚約相手よりも魔法技術に向いていた。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...