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雑草
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翌日リリィと会えたので
お礼を言ったら
「放っとくわけ無いでしょ」と当たり前のことをしただけだと言っていた
思わず抱きしめたのは不可抗力というものだ
ほんとにいい友人を持ったと実感した
ラルフはいま授業中でいないし
リリィは用事、カップルの間にいるのも邪魔になるだけなので一人で過ごしていた
雪が降り積もっているし人気もないので
降り積もった新雪に足跡をつけるのは少し楽しい
中庭の花壇には魔法がかかっており季節外れの草花が咲いている
隅にまだ引き抜かれていない草が生えていた
いつもは気にも止めないのに今日は目が行ってしまう
「雑草…」
昨日のクロエの言葉はそこまで気にしてなかったが意外と深く刺さっていたらしい
ケイラはラルフに好きな人などいないと言っていたが、ケイラ自身が知らないことを想定してなかったな
そもそも本人が話すはずもないよな。好きになったのは婚約者のいる妹なのだとしたら
私も彼の立場なら言わないと思う
「構わない」と言って一緒にいてくれるのも
好きな人の頼みだったからか⋯
ミラも以前「好きな人の役に立てるのは嬉しい」と言っていた
私も前世では恋の一つや二つはしていたが
全部失恋に終わっていた
ミラには愛嬌も可愛らしい容姿もある
ケイラは少し残念なところはあるもののそれをカバーしても有り余る美貌に抜群のスタイル
リリィだって怒っていなければ春の妖精のような可憐さだ
昨日突っかかってきた
クロエだって私よりも美人だったしスタイルも良かった
⋯性格はちょっとひねくれてるけど…
ニーナ自身は自分の見た目は飛び抜けてはいないものの前世に比べれば可愛らしい方だと思っていた
今までなんの不満もこんな劣等感も感じたことがなかったというのに
もしかしてニーナにハードモードしか存在しないのは可愛らしさも美しさとか飛び抜けているところがないから⋯?
今までゲームのご都合だと思ってたけどそんな理由とかからだったとか?
⋯それはちょっと、凹む…
今まで感じたことないほどの惨めさだ
じわじわと目が潤んできてしまう
泣きそうになるがラルフにこんな姿見られたくない
手鏡で自分の顔と雑草を見比べ
今更どうにもならないことにため息をついていると声をかけられた
「ニーナ嬢じゃないか!こんなところで何してるんだ?」
ライリー・エイダンの声だ
「⋯こんにちは エイダン様」
「何かあったのか?」
私の隣にしゃがむ気配がする
なんか温かい
外気が寒いからか隣に人がいるだけで物理的に暖かさを感じるのかな?
そういえばこの人も攻略対象だった
いま美形を目にしても私の心が抉られるだけ
さっきから雑草から目を離せない
「いえ⋯少し花を見てまして」
雑草だけど
「花?⋯花なら植物園に行ったほうが良くないか?」
「えぇ。まぁ、そうなんですけど…エイダン様はどうしてここ…に?」
授業はどうしたんだと隣を見れば上半身裸のライリー
ポカンと空いた口が閉まらない
引き締まった筋肉があらわになっている少しだけとはいえど、雪積もってる状態だというのに寒くないのか
「あぁ!ちょうど実習が終わったところなんだよ」
特に気にすることもなく質問に答えてくれるが
そうじゃない
「寒くないんですか?」
「ちょっと火照っちゃってね」
ニカッと笑っているが
脱いだまま女子に近づくのは如何なものか
そのうち通報されるぞ
目のやり場に困ったのでうつ向いた瞬間
「おっ」というライリーの声とともに
ザバーっと言う音がした
視界に入る水たまりとライリーの靴
それはみるみる広がっていくので驚いて
ライリーを確認しようとすれば
急にバサリと布らしきものを被された
「おわっ!」
急に視界が真っ暗になるのでパニックだが顔を出そうとすれば手で布を抑えられた
「見るんじゃない」
ラルフの声がする
いつもより声が低い…怒気を帯びている気がする
「何してるんだ こんなところで」
「おお ラルフ助かったよ!少し熱を冷ましてたんだ」
「⋯はぁ…もういいから。早く服を着ろ馬鹿。そんな格好でウロウロするな」
流石に友人の痴態には怒るよな
「すまんすまん!」
カラカラと笑いながら布の擦れる音がする
もう服着たのかな
怒られているというのに、全然気にしている感じがない
「あの、もう良いですか?」
「あぁ」
ラルフの声を合図に布を剥がせば
彼のコートだったらしい
彼を見れば片手には杖
絶対それで水被せただろう
「そのままそれ着てろ…また風引くぞ」
「でも…」
私はケープ着てるから風引くほど体を冷やしたりはしてない
「⋯⋯」
異論は認めないと言いたげな目でジロリと睨まれた
「お、お借りします…」
か⋯過保護だ…
「ライリー、杖を教室に忘れてたぞ。行ってこい」
「あれ‥?あっ本当だ…じゃあ二人とも、またなー!」
杖忘れるとかあるのか
まぁ、普段使ってるのは剣だしな…
杖ほとんど使わないよな
二人きりになったところで
「⋯何してたんだ?」
ライリーは居なくなったというのに
まだラルフは怒っているようだ
「⋯花を、見てたらエイダン様に声をかけられました」
見てたのは草だけど
「⋯⋯そうか」
それだけ言って歩き出すラルフについていく
「「⋯」」
雨の間には来ているが機嫌が悪そうだ
もしかして私にも怒っていたのだろうか…
何かしたっけ
「⋯怒ってます?」
「⋯別に」
きのこの中なのに少しひんやりしている
めっちゃ怒ってるじゃん…
「⋯⋯仲いいのか?」
「え?」
誰と?
「⋯ライリーと」
「顔見知り程度ですけど…」
「⋯そうか」
少しだけ冷たさが和らいだ
「⋯⋯?」
「⋯半裸姿を見ても叫びもしないから…そういう関係なのかと」
どんな関係だ
変質者を見慣れているとでも思ってるのか
「それは!驚きすぎて声が出なかっただけです!」
「⋯そうなのか?」
「そうですよ!」
普通の女の子だし⋯前世の記憶持ってるけど
「⋯誤解してた。すまない」
「いえ…」
「「⋯⋯」」
外気は暖かくなったと言うのに
なんとも言い難い空気になってしまった
「⋯明日は植物園に行かないか」
珍しく会話を切り出すラルフ
その上、初めて自分で場所を提案してくれている
「⋯!良いですね!」
私の返事に顔を綻ばせているラルフ
そんな喜ぶものなのか
ドキッとしてしまった
でも私の恋は終わったも同然なのだ
早く蓋をしなければ⋯
悶々としながらその日は過ごしていた
お礼を言ったら
「放っとくわけ無いでしょ」と当たり前のことをしただけだと言っていた
思わず抱きしめたのは不可抗力というものだ
ほんとにいい友人を持ったと実感した
ラルフはいま授業中でいないし
リリィは用事、カップルの間にいるのも邪魔になるだけなので一人で過ごしていた
雪が降り積もっているし人気もないので
降り積もった新雪に足跡をつけるのは少し楽しい
中庭の花壇には魔法がかかっており季節外れの草花が咲いている
隅にまだ引き抜かれていない草が生えていた
いつもは気にも止めないのに今日は目が行ってしまう
「雑草…」
昨日のクロエの言葉はそこまで気にしてなかったが意外と深く刺さっていたらしい
ケイラはラルフに好きな人などいないと言っていたが、ケイラ自身が知らないことを想定してなかったな
そもそも本人が話すはずもないよな。好きになったのは婚約者のいる妹なのだとしたら
私も彼の立場なら言わないと思う
「構わない」と言って一緒にいてくれるのも
好きな人の頼みだったからか⋯
ミラも以前「好きな人の役に立てるのは嬉しい」と言っていた
私も前世では恋の一つや二つはしていたが
全部失恋に終わっていた
ミラには愛嬌も可愛らしい容姿もある
ケイラは少し残念なところはあるもののそれをカバーしても有り余る美貌に抜群のスタイル
リリィだって怒っていなければ春の妖精のような可憐さだ
昨日突っかかってきた
クロエだって私よりも美人だったしスタイルも良かった
⋯性格はちょっとひねくれてるけど…
ニーナ自身は自分の見た目は飛び抜けてはいないものの前世に比べれば可愛らしい方だと思っていた
今までなんの不満もこんな劣等感も感じたことがなかったというのに
もしかしてニーナにハードモードしか存在しないのは可愛らしさも美しさとか飛び抜けているところがないから⋯?
今までゲームのご都合だと思ってたけどそんな理由とかからだったとか?
⋯それはちょっと、凹む…
今まで感じたことないほどの惨めさだ
じわじわと目が潤んできてしまう
泣きそうになるがラルフにこんな姿見られたくない
手鏡で自分の顔と雑草を見比べ
今更どうにもならないことにため息をついていると声をかけられた
「ニーナ嬢じゃないか!こんなところで何してるんだ?」
ライリー・エイダンの声だ
「⋯こんにちは エイダン様」
「何かあったのか?」
私の隣にしゃがむ気配がする
なんか温かい
外気が寒いからか隣に人がいるだけで物理的に暖かさを感じるのかな?
そういえばこの人も攻略対象だった
いま美形を目にしても私の心が抉られるだけ
さっきから雑草から目を離せない
「いえ⋯少し花を見てまして」
雑草だけど
「花?⋯花なら植物園に行ったほうが良くないか?」
「えぇ。まぁ、そうなんですけど…エイダン様はどうしてここ…に?」
授業はどうしたんだと隣を見れば上半身裸のライリー
ポカンと空いた口が閉まらない
引き締まった筋肉があらわになっている少しだけとはいえど、雪積もってる状態だというのに寒くないのか
「あぁ!ちょうど実習が終わったところなんだよ」
特に気にすることもなく質問に答えてくれるが
そうじゃない
「寒くないんですか?」
「ちょっと火照っちゃってね」
ニカッと笑っているが
脱いだまま女子に近づくのは如何なものか
そのうち通報されるぞ
目のやり場に困ったのでうつ向いた瞬間
「おっ」というライリーの声とともに
ザバーっと言う音がした
視界に入る水たまりとライリーの靴
それはみるみる広がっていくので驚いて
ライリーを確認しようとすれば
急にバサリと布らしきものを被された
「おわっ!」
急に視界が真っ暗になるのでパニックだが顔を出そうとすれば手で布を抑えられた
「見るんじゃない」
ラルフの声がする
いつもより声が低い…怒気を帯びている気がする
「何してるんだ こんなところで」
「おお ラルフ助かったよ!少し熱を冷ましてたんだ」
「⋯はぁ…もういいから。早く服を着ろ馬鹿。そんな格好でウロウロするな」
流石に友人の痴態には怒るよな
「すまんすまん!」
カラカラと笑いながら布の擦れる音がする
もう服着たのかな
怒られているというのに、全然気にしている感じがない
「あの、もう良いですか?」
「あぁ」
ラルフの声を合図に布を剥がせば
彼のコートだったらしい
彼を見れば片手には杖
絶対それで水被せただろう
「そのままそれ着てろ…また風引くぞ」
「でも…」
私はケープ着てるから風引くほど体を冷やしたりはしてない
「⋯⋯」
異論は認めないと言いたげな目でジロリと睨まれた
「お、お借りします…」
か⋯過保護だ…
「ライリー、杖を教室に忘れてたぞ。行ってこい」
「あれ‥?あっ本当だ…じゃあ二人とも、またなー!」
杖忘れるとかあるのか
まぁ、普段使ってるのは剣だしな…
杖ほとんど使わないよな
二人きりになったところで
「⋯何してたんだ?」
ライリーは居なくなったというのに
まだラルフは怒っているようだ
「⋯花を、見てたらエイダン様に声をかけられました」
見てたのは草だけど
「⋯⋯そうか」
それだけ言って歩き出すラルフについていく
「「⋯」」
雨の間には来ているが機嫌が悪そうだ
もしかして私にも怒っていたのだろうか…
何かしたっけ
「⋯怒ってます?」
「⋯別に」
きのこの中なのに少しひんやりしている
めっちゃ怒ってるじゃん…
「⋯⋯仲いいのか?」
「え?」
誰と?
「⋯ライリーと」
「顔見知り程度ですけど…」
「⋯そうか」
少しだけ冷たさが和らいだ
「⋯⋯?」
「⋯半裸姿を見ても叫びもしないから…そういう関係なのかと」
どんな関係だ
変質者を見慣れているとでも思ってるのか
「それは!驚きすぎて声が出なかっただけです!」
「⋯そうなのか?」
「そうですよ!」
普通の女の子だし⋯前世の記憶持ってるけど
「⋯誤解してた。すまない」
「いえ…」
「「⋯⋯」」
外気は暖かくなったと言うのに
なんとも言い難い空気になってしまった
「⋯明日は植物園に行かないか」
珍しく会話を切り出すラルフ
その上、初めて自分で場所を提案してくれている
「⋯!良いですね!」
私の返事に顔を綻ばせているラルフ
そんな喜ぶものなのか
ドキッとしてしまった
でも私の恋は終わったも同然なのだ
早く蓋をしなければ⋯
悶々としながらその日は過ごしていた
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