341 / 405
フェリアル・エーデルス
376.幸せに死ぬ方法
しおりを挟むドクンと鼓動が大きな音を立てる。
どうしてライネスがきっかけに……?なんて気になったけれど、お口チャックしてシモンの話に耳を傾けた。
話を聞くに、どうやら原因は僕とライネスがはわわな関係になったことらしい。シモンは自分が僕の一侍従でしかないことを改めて思い知り、ライネスの為に距離感を今一度考えて……そして、誓約のことを言わないようにとの決断をしたのだとか。
しかしその問題は既に解決して、ライネスとの話にも決着がついた。だから今はうじうじ考えているわけじゃ云々かんぬんと話すシモンだけれど、僕は全く納得できない。むぅである。
「……僕に遠慮したの」
「え、遠慮というか、何と言いますか……そのぅ……」
ぷくぅっと頬を膨らませる。ぽかぽかっとシモンを攻撃しながら、じわじわと湧き上がる悲しみに何とか耐える。だめだめ、これくらいのことで泣いちゃだめ。
そもそもあの誓約は一方的なもの。シモンがやめたいと言うなら、直ぐさま誓約破棄のための方法を探していた。
けれど今回は、そういう穏便なものとは違う。シモンの命がかかった誓約の件だというのに、またまたシモンは自分を蔑ろにして僕を一番に考えたのだ。
シモンが僕をそんなにも想ってくれていることは嬉しいけれど、嬉しいけれど……でも、何だか複雑。シモンは、僕がシモンを蔑ろにするような人に見えているのかな、なんて。
「今は!今は全然、馬鹿なこと何も考えてませんから!フェリアル様がやっぱり誓約を再開したいと言うなら勿論そうしますし、その時は公子がどうのこうのなんて何も……」
「僕がする」
「…………はい?」
あたふたと弁明みたいに言葉を羅列するシモン。その声を遮ってムッとした声で言うと、シモンのあたふた笑顔が途端にぽかんとしたものに変わった。
そのぽかん顔を見てちょっぴりスッキリ。むふふと頬を緩めてどどどやぁと答える。
「僕が、シモンに誓約する!」
数秒の静寂の後、シモンの顔色がサーッと蒼白した。
わなわなと震える姿に首を傾げる。ふむ、何かおかしなことを言ってしまっただろうか。
「フェッ、フェリアル様がっ、誓約を……!?」
「む?うむ。シモンに誓約するよ。シモンがばたんしたら、僕もばたんする」
シモンが僕にしてくれた誓約を、今度は僕がシモンにする。
それが僕のけじめで、シモンへの罰でもある。僕とシモンの関係は絶対なのに、ちょっぴりでも疑った罰。僕がどれだけシモンのこと大好きか、思い知らせてあげるのだ。
僕とシモンはずーっと一緒。それは誰にも覆せない事実で、使命。僕にもシモンにも覆せない。
「意味を分かって言ってるんですか!?隷属誓約ですよ!?俺が死んだらフェリアル様が死んでしまう!フェリアル様には何のメリットも無いんです!」
肩をガシッと捕まれ力説される。酷く焦った声音を発するシモンにきょとんと瞬いて、ぽんぽんと肩を撫でてあげた。
「わかってるよ。そうしたら、僕が死なないように、シモンは自分のこと今よりもっと大事にできるよね」
「は……」
「僕は、死なないようにシモンを守る。シモンは僕が死なないように、自分を守る。メリット、たくさんだね?」
にこっと微笑む。シモンの顔は蒼白から唖然とした色になって……ころころ変わる表情がおかしくて思わず吹き出した。
常にニコニコ余裕そうにするシモンも好きだけれど、こういう人間味のある変化をするシモンも同じくらい大好きだ。
大好きなシモンを守るためなら、僕は何だってできる。シモンもそうでしょ?
「……フェリアル様には……公子が……」
「シモン。シモンとライネスは同じ人じゃないよ。シモンが死んだ時の悲しい気持ちは、僕でもライネスでもどうにもできないの」
それはライネスでも同じ。もしもライネスが不慮の事故で死んじゃったりでもしたら、僕はとっても悲しくてどうなるか分からない。
そういう時、シモンが居れば少しは状況を紛らわすことができるかも。でも、根本的な悲しい気持ちはシモンがいてもどうにもならない。
同じ人なんていない。大切な人はみんな違う人だから、一人でも欠けちゃいけないのだ。
「替えなんていないの。シモン、シモンはライネスのこと、自分の替えだと思ってるよね」
「っ……それは……」
「だからそんなことが言えるの。思ってなかったら、誓約のことだって、遠慮なんてしないはずだよ」
シモンは全部同じことにして考えている。だからそうやって悩むのだ。全部別にして考えたら、きっと悩むことなんて何も無いのに。
「僕はライネスが大好きだから、ライネスと一緒ならずっと幸せに生きられる。シモンが大切だから、シモンと一緒ならきっと幸せに死ねるよ」
真面目な声と表情。瑠璃色の瞳が真剣な色を纏っているのが、シモンの緑の瞳越しによく分かる。
不意に皇宮の鐘の音が鳴って、そういえばお茶会の約束をしていたんだとふと思い出した。真剣な話をしていただけに、ちょっぴり目的を忘れそうになっていた。危ない危ない。
「そろそろ行かないと、時間に遅れちゃう。影の中、入る?」
そろっと振り返って問い掛ける。シモンは呆然と見開いていた目を震わせて、やがて微かにこくっと頷いた。
416
あなたにおすすめの小説
気付いたらストーカーに外堀を埋められて溺愛包囲網が出来上がっていた話
上総啓
BL
何をするにもゆっくりになってしまうスローペースな会社員、マオ。小柄でぽわぽわしているマオは、最近できたストーカーに頭を悩ませていた。
と言っても何か悪いことがあるわけでもなく、ご飯を作ってくれたり掃除してくれたりという、割とありがたい被害ばかり。
動きが遅く家事に余裕がないマオにとっては、この上なく優しいストーカーだった。
通報する理由もないので全て受け入れていたら、あれ?と思う間もなく外堀を埋められていた。そんなぽややんスローペース受けの話
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
お子ちゃま勇者に「美味しくないから追放!」された薬師、田舎でバフ飯屋を開く
風
ファンタジー
現代日本から転生した味覚オタクの薬師ユージンは、幼い勇者パーティの“保護者枠”として命を守るため口うるさくしていたが、「薬が苦い」「うるさい」と追放される。
田舎ミズナ村で薬膳小料理屋「くすり香」を開いた彼の“バフ飯”は冒険者を覚醒させ、村を救い、王都の薬利権すら揺らす。
一方、追放した子どもたちはユージンの真意を知って大泣きするが、彼は戻らない──自分の人生を取り戻すために。
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。