旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪

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8.勝者の要望は?

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セルト様が私の向かい側に座って朝食をとっている。

以前はよく拝見していなかったが、マナーも相まってその美しさは確かに女性を惹き寄せそうだと思ってしまう。

「それで、セルト様。私への願いはなんでしょうか?」

セルト様がナプキンで口をそっと拭って、私に向けて微笑む。




「色々考えていたのだが……例えばリーナから口付けをして貰うとか、抱きしめて貰うとか……」



「何を仰っているのですか!」




私が言い返したのを見て、セルト様が私の顔をじっと見つめている。

「そうやって顔を赤らめているレシールを見るのが好きなんだ」

「からかわないでくださいませ……!」

「からかっていない。君はもう少し自分の可愛さを自覚した方が良い」

「私が可愛いはずはないですわ。冗談も程々にして下さいませ」

私がピシャリを厳しくそう述べたのを聞いて、セルト様の瞳が少しだけかげった。

「誰かにそう言われたのか? 先ほども前から口付けをしておけば良かったと話していたが、想い人がいるのか?」

「想い人はいませんわ。ただ……」

「ただ?」





「私は気が強くて可愛くないでしょう?」





反応が怖くてすぐにセルト様の顔を見れなかったが、暫く静寂が走って私はゆっくりと顔を上げた。

セルト様は私の言葉の意味が分からないとでもいうように不思議そうな表情を浮かべていた。

「レシール、本気で言っているのか?」

「え……」

私がセルト様の言葉の意味が分からない間に、セルト様は何かを決意してしまったらしい。




「レシール。君への要望が決まった。私から逃げないこと。次に顔を赤らめたり、気の強いレシールじゃなくなった時にでもね。今度は逃げることを許さない」




「何を仰っているのですか……!」




「次は真っ赤な顔を存分に私に見せて。そしてただ『可愛い』と愛でられていれば良い」




セルト様は何故か得意気にそう言い放った。
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