旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪

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9.次は逃げられない

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それからの毎日、セルト様は積極的に私に関わってくるようになった。

しかし逃げるという選択肢を封じられた私は、セルト様に触れられようと自室に戻ることすら許されなかった。

セルト様は今日も何故か私を膝の上に乗せて、そっと私の頬を撫でている。

「私の可愛いレシール」

一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。

勝負に負けたら離婚を突きつけられてもおかしくないと思っていた。

しかし望まれたのは真逆のこと。

私自身が初めて会った時に「向き合ってほしい」と願ったのだから、何も嫌ではなかったが、私は攻められるのが苦手なのに。

強気じゃない自分を見られることも。



「ほら、こっちを向いて」



なのにレシール様は私の顔が真っ赤になればなるほど嬉しそうに顔を見つめて、優しく頭を撫でて下さる。

まるで可愛らしく愛おしい女性を扱うように。

「セルト様は女性がお嫌いだったのではないのですか?」

「確かに女性と接するのは得意ではないが、レシールが思っているほどではないよ。何よりレシールは特別だと前に言っただろう?」

今まで私を特別扱いする人などいなかった。

気の強い女性だと遠目に見られることはあっても、こうやって頭を撫でてくれる人などいなかった。

セルト様は私の頭を撫でていた手で、そっともう一度頬に触れる。



「レシール、可愛い。本当に君は可愛いよ」



セルト様は私が一番頬を赤らめる言葉を知っていて、わざと使っているのではないかと思ってしまう。

「可愛い」などと言われ慣れていない私に、沢山の甘さを与えてくる。

それでも「愛している」とは言って下さらないのに。

「セルト様はずるいですわ……」

気の強い私ですら可愛いと仰るこの方は、結婚初日に私に「君を愛する気はない」と言い放った方。




「セルト様、もう一度勝負しませんか?」



「ん……?」



「今だけは私から逃げたら負けですからね」




私はそう述べて、そっと自分からセルト様に口付けを落とした。
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