追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第22話

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 朝の光が窓から差し込み、部屋の床をゆっくりと照らしていく。
 ライトは寝返りを打つと、昨夜からずっと胸元に置いていた卵へ視線を移した。

 赤い卵は、早朝の静かな空気の中でも、ほんのりと光を帯びている。
 手を伸ばして触れると、温かさが指先から腕へと伝わってきた。

「……昨日より、少し強くなってる?」

 耳を澄ますと、ごく微かな鼓動のようなものが感じられる。
 生きているのは分かっていたが、こうして実感すると胸の奥がそっと震えた。

 布を巻き直して抱え込むと、ライトは深呼吸をした。

「今日も、ギルドに報告しないと……」

 宿の部屋を出る前に、ふと昨晩のグランの言葉がよみがえる。

(何が起きても、お前が悪いわけではない)

 あの言葉は、今も胸のどこかを温かくしている。
 責任を抱き込みやすい自分の性格を見抜かれたようで、少し恥ずかしくもある。

 宿を出ると、朝の街はすでに活気づいていた。
 露店が準備を始め、パン屋から香ばしい匂いが漂う。
 そんな日常の一角を、ライトは卵を大切に抱えながら歩いていった。

 ギルドに近づくにつれ、胸の鼓動が少し早まる。
 卵に昨夜から変化があったこと、それをどう説明すべきかが頭をよぎった。

「……大丈夫。落ち着いて話せばいい」

 扉を押して中へ入ると、少しざわついたギルドの空気が肌を包む。
 早朝の依頼を受けに来た冒険者たちが集まっているが、その視線が一瞬だけライトへ向いた。

 胸元の卵がぼんやりと光っているせいだろう。

 視線に気づいたミィナが、ぱっと表情を明るくして手を振った。

「ライトさん! おはようございます!」

「おはようございます。昨日の卵なんですけど……少し変化があったみたいで」

「本当ですか? グランさん、もう奥にいますよ。すぐ案内しますね!」

 ミィナが慌ててカウンターを出る。その動きに、卵が少しだけ光を強めたように見えた。

「わ……今、光が……?」

「やっぱり、何かあるんですね……。とにかく、早くグランさんに見てもらいましょう!」

 ミィナに促され、ライトはギルドマスター室へ向かう。

 ノックすると、すぐに中から声が返った。

「入れ」

「失礼します。昨日の卵ですが……少し変化がありました」

 グランは椅子から立ち上がり、ライトの腕に抱えられた卵に視線を落とす。

「ほう。見せてみろ」

 ライトが布をほどくと、卵は昨日よりも明確な赤い脈動を放っていた。
 部屋の薄明かりの中で、その光は呼吸するようにゆっくりと強弱を繰り返す。

「……これは」

 グランの声が低くなる。

「昨日よりも魔力が安定している。いや、安定しているだけじゃないな……これは、成長している兆候だ」

「成長……しているんですか?」

「竜種の卵は、外界の気配を受けて変化することがある。特に……信頼できる存在に触れられ続けると、孵化が早まる場合がある」

 ライトは息を飲む。

「じゃあ、この卵は……」

「おそらく、お前を危険な存在とは認識していない。むしろ、守られていると感じている可能性が高い」

 昨日と同じような結論だが、より確信に満ちていた。

「ライト、この卵は普通の魔獣の比じゃない価値を持つ。力も危険も、共にだ。だが……お前が抱えている限り、落ち着いている」

 グランの視線は重いが、どこか温かかった。

「俺は、これを預かり続けてもいいんでしょうか」

「卵の状態を見る限り、お前が持つのが最も自然だ。嫌なら預かるが……どうする?」

 ライトは卵を見つめる。光は穏やかに脈動し、まるで問い返してくるようだ。

「……俺が預かります」

「そう言うと思っていた」

 グランはわずかに笑い、机の上から何かを取り出した。

「これは、卵を安定させるための保護布だ。高位魔力を吸収して卵に負担をかけない。普段はそれで包んでおけ」

「ありがとうございます。助かります」

「卵の変化があれば毎日報告しろ。森の異変とも関係している可能性が高いからな」

「分かりました」

 話が終わり、ライトが部屋を出ようと扉へ向かうと、グランが背中に声を投げた。

「ライト。お前はよくやっている。自信を持て」

 ライトは足を止め、振り返った。

「……はい。ありがとうございます」

 その言葉は、昨日よりもさらに深く胸に響いた。

 ギルドのホールに戻ると、ミィナが待っていたかのように駆け寄ってきた。

「どうでした? 卵、何かあったんですか?」

「少し成長してるみたいで……。しばらく俺が預かることになりました」

「成長……してるんですか? すごい……!」

「俺が持ってると落ち着くらしいです」

「なんだか……ライトさんらしい気がします。守ってあげている感じが、すごく」

「そんなことないですよ」

 照れくさくて視線をそらしたが、ミィナは柔らかく笑った。

「でも、本当に気をつけてくださいね。卵って……割れちゃったら大変ですから」

「はい。ありがとうございます」

 ギルドを出て街へ戻る頃、卵は再び静かに光を弱めていった。
 まるでライトの腕の中が安心だと言うように。

「……本当に、不思議な卵だな」

 温かさを感じながら歩くうちに、胸の奥で小さな予感が芽生える。

(この卵は……俺の人生を変えるのかもしれない)

 そんな思いが、静かに心を満たしていった。
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