追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

文字の大きさ
40 / 93

第40話

しおりを挟む
 街外れの訓練場は、朝から妙にざわついていた。

 木製の標的が並ぶ簡易施設。普段は新人や軽い調整目的の冒険者しか使わない場所だが、今日は視線の集まり方が違う。

 理由は分かりきっている。

 ライトの肩に乗ったミリュウだった。

「……やっぱり目立つな」

「ミリュ?」

「いや、気にするな」

 隠すつもりはなかった。
 むしろ、どこまで知られているのかを確かめたかった。

 木剣を手に取り、中央へ進む。
 周囲の冒険者たちが、無言で距離を取る。

 剣を構え、ゆっくり振る。

 一振り。
 二振り。

 力は込めすぎない。だが、甘くもしない。

(……昨日より、動きが軽い)

 意識していないのに、身体が自然と最適な動きを選んでいる。
 軸がぶれず、踏み込みが安定しているのが自分でも分かった。

 ミリュウが、じっと剣の動きを見つめていた。

「ミリュ……」

「大丈夫だ。落ち着いてろ」

 その瞬間だった。

 背後から、はっきりとした足音が近づいてくる。
 複数。鎧の擦れる音。

 ライトは剣を下ろし、振り返った。

 そこに立っていたのは、見覚えのありすぎる顔だった。

 先頭に立つ青年。
 迷いのない足取りと、変わらない雰囲気。

 勇者カイル。

 その後ろに、アルシアとリデルが並んでいる。
 グロウの姿だけが、ない。

 カイルはライトを見て、短く息を吐いた。

「……生きてたか、ライト」

 胸の奥が、わずかに冷えた。

「見ての通りだ」

 淡々と答える。

 アルシアが、ミリュウに視線を向けた。

「それが、噂の竜か」

「ミリュ」

 ミリュウが短く鳴く。
 威嚇ではないが、警戒は隠していない。

 リデルが一歩前に出る。

「洞窟で騒ぎがあったって聞いた。お前が関わってるらしいな」

「襲われただけだ」

 即答だった。

「仕掛けてきたのは人間だ」

 空気が、わずかに張りつめる。

 カイルは表情を変えずに言った。

「知ってる。だから来た」

「調査か?」

「ああ」

 アルシアが肩をすくめる。

「この街の周辺、妙な動きが多いのよ。魔獣も、人も」

 ライトは一歩も引かなかった。

「俺はここで暮らしてる」

「分かってる」

 カイルの視線が、真っ直ぐに刺さる。

「だから忠告だ。余計なことに首を突っ込むな」

 余計なこと。

 その言葉に、胸の奥が静かに揺れた。

「それは俺が決める」

 声は低く、落ち着いていた。

 リデルが、ほんの少しだけ目を細める。

「前より、目が変わったな」

「そうかもな」

 否定もしない。

 カイルは数秒、黙ってから口を開いた。

「その竜は危険だ」

「危険なのは竜じゃない」

 自然と、言葉が出た。

「狙ってる連中の方だ」

 一瞬、カイルの目が鋭くなる。

「……いい目をしてる」

 そう言って、踵を返した。

「忠告はした。あとはお前次第だ」

 アルシアとリデルも、それに続く。

 三人の背中が遠ざかる。

 ミリュウが小さく鳴いた。

「ミリュ……」

「大丈夫だ」

 自分に言い聞かせるように呟く。

 だが、確信していた。

 勇者パーティは、もう動いている。
 そして――自分も、無関係ではいられない。

 訓練場の外で、視線を感じた。

 建物の影。
 誰かが、こちらを見ている。

 振り返った瞬間、その気配は消えた。

(……監視されてる)

 勇者だけじゃない。
 洞窟の外套の連中とも、別の線が動いている。

 ライトは剣を鞘に収め、ミリュウを肩に乗せ直した。

「行くぞ」

「ミリュ」

 選ばされる前に、選ぶ。

 その覚悟だけは、もう固まっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...