追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第44話

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 集落へ戻る途中、二人は畑道を外れ、低い丘の陰に身を寄せた。夜風は冷たく、湿り気を含んで肌を撫でる。追撃は来ない。だが完全に撒けたとも言い切れなかった。
ライトは足を止め、周囲を見渡す。

「この先、街道に合流する。人の流れがある分、相手も手を出しづらい」

「同感。でも、あの鎧の男……引き際が妙に綺麗だった」

リオナが小さく舌打ちする。

「消耗戦にするつもりは最初からなかった感じ」

「ああ。目的は確認だ。俺とミリュウ、それに……水の反応」

ミリュウが肩で小さく鳴いた。

「ミリュ」

 丘を越えた先で、街道の松明が見えた。二人は足早に合流する。往来は少ないが、荷車が時折通る。人目があるだけで空気は違った。

「ここまで来れば一旦は大丈夫だな」

「でも、集落の被害は続く」

リオナが前を見据える。

「戻って報告?それとも、追跡を続ける?」

ライトは一瞬だけ考え、首を横に振った。

「戻る。今夜は情報が揃った。無理に追えば、向こうの思う壺だ」

リオナは頷いた。

「賢明ね」

 街へ入る門前で、門番がこちらに気づく。視線はミリュウに一瞬留まったが、すぐにライトの顔へ戻る。

「お帰りですか」

「はい。ギルドへ向かいます」

 短く答え、通過する。街の灯りが近づくにつれ、緊張が少しずつほどけていく。だが完全には抜けない。

 ギルドの扉を押し開けると、夜にも関わらず人は多かった。噂は早い。集落の騒ぎも、黒装束の襲撃も、すでに広がっている。カウンターに立つミィナが二人を見つけ、すぐに声をかけた。

「ライトさん、リオナさん。無事で……!」

ライトは軽く頷く。

「捕縛は失敗しましたが、交戦ありです。水を使う魔導具と使い手を確認しました」

「……水、ですか」

ミィナの表情が引き締まる。

「ギルドマスターは奥にいます」

二人は頷き、奥へ進む。

グランは地図から顔を上げ、短く言った。

「戻ったか」

「はい。集落外縁で交戦。鎧の使い手が一人、撤退しました」

「水だな」

グランは即座に言い当てる。

「やはり来たか」

「やはり、ですか」

「ああ。ここ数日、街道沿いで水絡みの被害報告が増えている。井戸が枯れる、用水が荒らされる、魔獣が水場に集められる……」

ライトは頷く。

「囮と分断。今日の動きと一致します」

「リオナ」

「はい」

リオナが前に出る。

「魔導具は粗製。だが使い手は慣れている。訓練を受けた動きです」

「となると、裏で糸を引く組織がいる」

グランは地図に指を走らせる。

「街の外、川沿いだ。連中が潜むならここだろう」

「今夜は動きません」

ライトが言う。

「向こうも引いた。こちらの出方を見ている」

「判断は妥当だ」

グランは頷いた。

「明日、正式な討伐依頼として出す。ライト、リオナ、引き続き組め」

「分かりました」

二人は同時に答える。

ギルドを出ると、夜は深まっていた。宿へ向かう道すがら、リオナがふと口を開く。

「……さっきの水、すぐ返してたわね」

「《ウォーターLv1》だ」

「獲得した瞬間に、あそこまで?」

ライトは淡々と答える。

「受けたものは、使える」

リオナは小さく笑った。

「相変わらず、理屈が通じない男」

 宿に戻ると、部屋は静かだった。ミリュウをベッドに下ろし、ライトは椅子に腰を下ろす。肩の違和感は消えている。踏ん張りが利く感覚も残っていた。

「……《身体強化Lv1》」

 声に出して確認するように呟く。戦闘中、確かに身体が応えた。力任せではない、支えが増えた感覚だ。

「ミリュ」

ミリュウが顔を上げる。

「大丈夫だ。明日も動く」

 灯りを落とし、目を閉じる。外では遠く鐘が鳴った。水の使い手。魔導具。組織的な動き。そして、勇者パーティ。すべてが別々に見えて、確実に繋がり始めている。

ライトは静かに息を整えた。次は、こちらから踏み込む番だ。
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