追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

文字の大きさ
44 / 72

第44話

しおりを挟む
 集落へ戻る途中、二人は畑道を外れ、低い丘の陰に身を寄せた。夜風は冷たく、湿り気を含んで肌を撫でる。追撃は来ない。だが完全に撒けたとも言い切れなかった。
ライトは足を止め、周囲を見渡す。

「この先、街道に合流する。人の流れがある分、相手も手を出しづらい」

「同感。でも、あの鎧の男……引き際が妙に綺麗だった」

リオナが小さく舌打ちする。

「消耗戦にするつもりは最初からなかった感じ」

「ああ。目的は確認だ。俺とミリュウ、それに……水の反応」

ミリュウが肩で小さく鳴いた。

「ミリュ」

 丘を越えた先で、街道の松明が見えた。二人は足早に合流する。往来は少ないが、荷車が時折通る。人目があるだけで空気は違った。

「ここまで来れば一旦は大丈夫だな」

「でも、集落の被害は続く」

リオナが前を見据える。

「戻って報告?それとも、追跡を続ける?」

ライトは一瞬だけ考え、首を横に振った。

「戻る。今夜は情報が揃った。無理に追えば、向こうの思う壺だ」

リオナは頷いた。

「賢明ね」

 街へ入る門前で、門番がこちらに気づく。視線はミリュウに一瞬留まったが、すぐにライトの顔へ戻る。

「お帰りですか」

「はい。ギルドへ向かいます」

 短く答え、通過する。街の灯りが近づくにつれ、緊張が少しずつほどけていく。だが完全には抜けない。

 ギルドの扉を押し開けると、夜にも関わらず人は多かった。噂は早い。集落の騒ぎも、黒装束の襲撃も、すでに広がっている。カウンターに立つミィナが二人を見つけ、すぐに声をかけた。

「ライトさん、リオナさん。無事で……!」

ライトは軽く頷く。

「捕縛は失敗しましたが、交戦ありです。水を使う魔導具と使い手を確認しました」

「……水、ですか」

ミィナの表情が引き締まる。

「ギルドマスターは奥にいます」

二人は頷き、奥へ進む。

グランは地図から顔を上げ、短く言った。

「戻ったか」

「はい。集落外縁で交戦。鎧の使い手が一人、撤退しました」

「水だな」

グランは即座に言い当てる。

「やはり来たか」

「やはり、ですか」

「ああ。ここ数日、街道沿いで水絡みの被害報告が増えている。井戸が枯れる、用水が荒らされる、魔獣が水場に集められる……」

ライトは頷く。

「囮と分断。今日の動きと一致します」

「リオナ」

「はい」

リオナが前に出る。

「魔導具は粗製。だが使い手は慣れている。訓練を受けた動きです」

「となると、裏で糸を引く組織がいる」

グランは地図に指を走らせる。

「街の外、川沿いだ。連中が潜むならここだろう」

「今夜は動きません」

ライトが言う。

「向こうも引いた。こちらの出方を見ている」

「判断は妥当だ」

グランは頷いた。

「明日、正式な討伐依頼として出す。ライト、リオナ、引き続き組め」

「分かりました」

二人は同時に答える。

ギルドを出ると、夜は深まっていた。宿へ向かう道すがら、リオナがふと口を開く。

「……さっきの水、すぐ返してたわね」

「《ウォーターLv1》だ」

「獲得した瞬間に、あそこまで?」

ライトは淡々と答える。

「受けたものは、使える」

リオナは小さく笑った。

「相変わらず、理屈が通じない男」

 宿に戻ると、部屋は静かだった。ミリュウをベッドに下ろし、ライトは椅子に腰を下ろす。肩の違和感は消えている。踏ん張りが利く感覚も残っていた。

「……《身体強化Lv1》」

 声に出して確認するように呟く。戦闘中、確かに身体が応えた。力任せではない、支えが増えた感覚だ。

「ミリュ」

ミリュウが顔を上げる。

「大丈夫だ。明日も動く」

 灯りを落とし、目を閉じる。外では遠く鐘が鳴った。水の使い手。魔導具。組織的な動き。そして、勇者パーティ。すべてが別々に見えて、確実に繋がり始めている。

ライトは静かに息を整えた。次は、こちらから踏み込む番だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
*読者のみなさま  この作品をお読みいただきありがとうございました。こちらの作品は1月10日12時をもって非公開とさせていただきます。 『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

神様のせいで最強魔力持ちにされたけどコミュ障だから、森の奥で人外の弟子とひっそり暮らしたい

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
極度のコミュニケーション障害で、まともに人と話せない青年、相川静(あいかわ しずか)。 彼はある日、女神の手違いで異世界に転移させられてしまう。 お詫びとして与えられたのは、世界を滅ぼせるほどの規格外の魔力。 しかし、コミュ障のシズカにとって、そんな目立つ力はトラブルの元でしかない。 彼は人目を避けるように、魔物が住む広大な森の奥深くへと逃げ込んだ。 そこで出会ったのは、親を亡くした一匹の幼いドラゴン。 言葉が通じないはずのドラゴンになぜか懐かれ、なし崩し的に弟子(?)として面倒を見る羽目に。 シズカは強すぎる魔力で獲物を狩り、ドラゴンに食事を与え、魔法をジェスチャーで教える。人間相手には一言も話せないが、ドラゴン相手なら不思議と心が安らぐのだった。 これは、最強の力を持つコミュ障青年が、人間社会から完全に孤立し、人外の弟子とのんびり暮らそうと奮闘する物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...