51 / 93
第51話
しおりを挟む
街道を離れ、森沿いの小道へ入ると、空気が一段と静まった。鳥の声が遠く、木々の葉擦れが一定のリズムで続いている。視界は悪くないが、足元は柔らかく、痕跡が残りやすい。
「ここから先、嫌な感じがする」
先頭を歩いていたフィーナが足を止めた。淡い光が彼女の足元に広がり、地面の様子を確かめる。
「どうした」
「森が、落ち着いてない。踏み荒らされた跡が多いのに、逃げた気配がない」
アリアが鼻を鳴らす。
「待ち伏せか」
「可能性は高い」
ライトは周囲を見回し、剣に手をかけた。ミリュウが肩で身を低くし、喉を鳴らす。
次の瞬間だった。
木々の間から、鈍い衝撃音が響いた。
地面が揺れる。
「下から来る!」
フィーナの声と同時に、土が盛り上がった。太い腕のようなものが地面を突き破り、唸り声が森に広がる。
土塊の魔獣。
だが、普通のものとは違う。動きが速く、狙いが正確すぎる。
「操られてるな」
ライトは踏み込み、剣を振る。
「《斬撃強化(中)》」
刃が土を削り取るが、すぐに再生する。硬さも、粘りも増している。
リオナが距離を取り、杖を掲げた。
「ストーンブレイク!」
衝撃波が土塊を砕くが、完全には止まらない。
「土だけじゃない!」
アリアが叫ぶ。木々の間から、さらに二体。左右から挟む動き。
その瞬間、フィーナが一歩前に出た。
「私が抑える」
ライトは即座に判断する。
「任せる」
フィーナは両手を広げ、静かに息を整えた。足元の草木が揺れ、地面の色がわずかに変わる。
土塊の魔獣が踏み込んだ瞬間、地面が沈んだ。
絡みつく根。
足を取られ、動きが止まる。
「……自然の力、か」
リオナが思わず呟く。
だが、それだけでは終わらない。魔獣の背後、木の上から人影が落ちてきた。
外套の男。
刃が一直線にライトへ向かう。
ライトは半歩下がり、剣を振る。
「《ウィンドLv1》」
風が刃を逸らし、軌道がずれる。その隙にアリアが割り込んだ。
「遅い」
一閃。
外套が裂け、男は地面に叩きつけられる。
だが、別方向から魔法が飛んできた。
土の塊を圧縮した弾丸。
ライトは反射的に踏ん張る。
衝撃が走る。
だが、身体が崩れない。
脚に、確かな力が通っていた。
剣を構え直し、前に出る。
「今だ」
フィーナが地面を踏みしめる。
根が一斉に締まり、土塊の魔獣が完全に動きを止めた。
リオナが詠唱を短く切る。
「フレイムボール」
火球が弱点を撃ち抜き、土塊が崩れ落ちる。
残る一体も、アリアの踏み込みで沈黙した。
静寂が戻る。
森が、ゆっくりと息を整えるようだった。
「……助かった」
ライトが言うと、フィーナは小さく首を振った。
「私も、守られてる」
視線はライトとミリュウに向いている。
ミリュウが短く鳴いた。
「ミリュ」
倒れた外套の男は、すでに息をしていなかった。だが、その身体には、洞窟や集落で見たものと同じ歪みがある。
「やっぱり、組織的ね」
リオナが眉を寄せる。
「しかも、森や土にまで手を出してる」
ライトは森の奥を見据えた。
「範囲が広がってる」
勇者パーティ、追手、魔獣、改変。
それぞれが別々に動いているようで、確実に重なり始めている。
「戻ろう」
ライトが言う。
「今日は十分だ」
誰も異論はなかった。
帰路につく四人の背後で、森が静かに揺れた。
それを、誰も見ていない。
「ここから先、嫌な感じがする」
先頭を歩いていたフィーナが足を止めた。淡い光が彼女の足元に広がり、地面の様子を確かめる。
「どうした」
「森が、落ち着いてない。踏み荒らされた跡が多いのに、逃げた気配がない」
アリアが鼻を鳴らす。
「待ち伏せか」
「可能性は高い」
ライトは周囲を見回し、剣に手をかけた。ミリュウが肩で身を低くし、喉を鳴らす。
次の瞬間だった。
木々の間から、鈍い衝撃音が響いた。
地面が揺れる。
「下から来る!」
フィーナの声と同時に、土が盛り上がった。太い腕のようなものが地面を突き破り、唸り声が森に広がる。
土塊の魔獣。
だが、普通のものとは違う。動きが速く、狙いが正確すぎる。
「操られてるな」
ライトは踏み込み、剣を振る。
「《斬撃強化(中)》」
刃が土を削り取るが、すぐに再生する。硬さも、粘りも増している。
リオナが距離を取り、杖を掲げた。
「ストーンブレイク!」
衝撃波が土塊を砕くが、完全には止まらない。
「土だけじゃない!」
アリアが叫ぶ。木々の間から、さらに二体。左右から挟む動き。
その瞬間、フィーナが一歩前に出た。
「私が抑える」
ライトは即座に判断する。
「任せる」
フィーナは両手を広げ、静かに息を整えた。足元の草木が揺れ、地面の色がわずかに変わる。
土塊の魔獣が踏み込んだ瞬間、地面が沈んだ。
絡みつく根。
足を取られ、動きが止まる。
「……自然の力、か」
リオナが思わず呟く。
だが、それだけでは終わらない。魔獣の背後、木の上から人影が落ちてきた。
外套の男。
刃が一直線にライトへ向かう。
ライトは半歩下がり、剣を振る。
「《ウィンドLv1》」
風が刃を逸らし、軌道がずれる。その隙にアリアが割り込んだ。
「遅い」
一閃。
外套が裂け、男は地面に叩きつけられる。
だが、別方向から魔法が飛んできた。
土の塊を圧縮した弾丸。
ライトは反射的に踏ん張る。
衝撃が走る。
だが、身体が崩れない。
脚に、確かな力が通っていた。
剣を構え直し、前に出る。
「今だ」
フィーナが地面を踏みしめる。
根が一斉に締まり、土塊の魔獣が完全に動きを止めた。
リオナが詠唱を短く切る。
「フレイムボール」
火球が弱点を撃ち抜き、土塊が崩れ落ちる。
残る一体も、アリアの踏み込みで沈黙した。
静寂が戻る。
森が、ゆっくりと息を整えるようだった。
「……助かった」
ライトが言うと、フィーナは小さく首を振った。
「私も、守られてる」
視線はライトとミリュウに向いている。
ミリュウが短く鳴いた。
「ミリュ」
倒れた外套の男は、すでに息をしていなかった。だが、その身体には、洞窟や集落で見たものと同じ歪みがある。
「やっぱり、組織的ね」
リオナが眉を寄せる。
「しかも、森や土にまで手を出してる」
ライトは森の奥を見据えた。
「範囲が広がってる」
勇者パーティ、追手、魔獣、改変。
それぞれが別々に動いているようで、確実に重なり始めている。
「戻ろう」
ライトが言う。
「今日は十分だ」
誰も異論はなかった。
帰路につく四人の背後で、森が静かに揺れた。
それを、誰も見ていない。
45
あなたにおすすめの小説
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる