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第73話
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夜明けとともに、川沿いの霧は薄くなっていた。
水音が一定の調子で耳に残り、鳥の鳴き声が森の奥から返ってくる。
ライトは足を止め、対岸の地形を目でなぞった。
「……ここだな」
川幅が狭まり、渡渉できる浅瀬が続いている。
人の往来は少ないが、痕跡はある。
荷車の轍。人為的に踏み固められた土。
ここを通っている。
アリアが鼻を鳴らす。
「匂いが残ってる。昨日の連中より数が多い」
「隠す気もないな」
ライトは短く答え、剣を背に回した。
リオナは杖を軽く叩き、周囲を見回す。
「ここ、拠点に近い。魔力の残り方が雑」
フィーナは地面に膝をつき、草を指で撫でた。
「人が集まって、また離れている。長くは留まらない場所」
一時的な中継地。
補給と連絡のためだけの拠点。
だからこそ、荒い。
「行くぞ」
川を越えた瞬間、空気が変わった。
湿り気が減り、代わりに乾いた鉄の匂いが混じる。
前方の林が揺れた。
弓矢が飛ぶ。
ライトは足を止めず、身体を捻った。
矢は肩口を掠めるだけで地面に突き刺さる。
「散開!」
アリアが跳び、右側の茂みへ。
同時に三人、いや四人。
数が増えている。
「《斬撃強化(大)》」
踏み込みと同時に剣を振る。
木の陰から飛び出した軽装の男が、防御も間に合わず弾き飛ばされた。
火花。
刃が骨に当たった感触。
背後から魔法が来る。
炎ではない。
圧縮された水塊。
ライトは半身になり、流れを受け流す。
「《ウォーターLv2》」
放った水が衝突するのではなく、相手の塊を割る。
飛沫が散り、威力が失われた。
リオナが即座に詠唱する。
「ファイアランス」
細く伸びた炎が一直線に走り、後衛の足元を焼いた。
派手さはない。
逃げ道だけを断つ。
アリアが前線に出る。
「邪魔だ!」
獣人の踏み込みは低く、速い。
短剣使いの懐に入り、刃を弾き上げる。
次の瞬間、相手は地面に転がっていた。
風が来る。
横薙ぎではない。
叩き落とす流れ。
ライトは一歩踏み込み、足場を固定する。
「《身体強化Lv2》」
衝撃が脚で止まり、体勢が崩れない。
剣を返し、風の使い手の腕を斬った。
悲鳴。
だが倒れない。
歯を食いしばり、退く。
雷光が走った。
空からではない。
地面を這うように。
ライトは即座に距離を詰める。
「《サンダーLv1》」
放った雷が、相手の魔導具に走る。
制御を失った光が弾け、魔導具が砕けた。
沈黙。
残った敵は三人。
そして、奥から足音。
重い。
鎧だ。
「来たな」
ライトは剣を構え直す。
今までとは違う。
動きが揃っている。
鎧の男が前に出た。
「……ここまで来るとはな」
声は低く、落ち着いている。
「撤退の判断が遅い」
ライトは淡々と言った。
「判断じゃない。命令だ」
男は剣を抜く。
「お前を測れ、と」
次の瞬間、斬り結ぶ。
重い。
だが、遅い。
ライトは半歩外し、刃を返す。
「《斬撃強化(大)》」
衝突。
金属音が響き、鎧の男が膝をついた。
その背後で、リオナの魔法が炸裂する。
「アイスランス」
逃げ道を塞ぐ。
アリアが横から入り、柄で叩き落とした。
残りは散った。
森の奥へ、二度と振り返らず。
ライトは剣を収め、周囲を見渡す。
「……繋がったな」
拠点。
中継。
そして、指示系統。
フィーナが顔を上げる。
「もっと奥に、人が集まっている」
「なら、そこが本命だ」
アリアが笑う。
「やっと、殴りがいが出てきたな」
ミリュウが肩で鳴いた。
「ミリュ」
ライトは一度だけ頷いた。
「行くぞ。
ここから先は、止まらない」
四人は足並みを揃え、森の奥へ踏み込んだ。
水音が一定の調子で耳に残り、鳥の鳴き声が森の奥から返ってくる。
ライトは足を止め、対岸の地形を目でなぞった。
「……ここだな」
川幅が狭まり、渡渉できる浅瀬が続いている。
人の往来は少ないが、痕跡はある。
荷車の轍。人為的に踏み固められた土。
ここを通っている。
アリアが鼻を鳴らす。
「匂いが残ってる。昨日の連中より数が多い」
「隠す気もないな」
ライトは短く答え、剣を背に回した。
リオナは杖を軽く叩き、周囲を見回す。
「ここ、拠点に近い。魔力の残り方が雑」
フィーナは地面に膝をつき、草を指で撫でた。
「人が集まって、また離れている。長くは留まらない場所」
一時的な中継地。
補給と連絡のためだけの拠点。
だからこそ、荒い。
「行くぞ」
川を越えた瞬間、空気が変わった。
湿り気が減り、代わりに乾いた鉄の匂いが混じる。
前方の林が揺れた。
弓矢が飛ぶ。
ライトは足を止めず、身体を捻った。
矢は肩口を掠めるだけで地面に突き刺さる。
「散開!」
アリアが跳び、右側の茂みへ。
同時に三人、いや四人。
数が増えている。
「《斬撃強化(大)》」
踏み込みと同時に剣を振る。
木の陰から飛び出した軽装の男が、防御も間に合わず弾き飛ばされた。
火花。
刃が骨に当たった感触。
背後から魔法が来る。
炎ではない。
圧縮された水塊。
ライトは半身になり、流れを受け流す。
「《ウォーターLv2》」
放った水が衝突するのではなく、相手の塊を割る。
飛沫が散り、威力が失われた。
リオナが即座に詠唱する。
「ファイアランス」
細く伸びた炎が一直線に走り、後衛の足元を焼いた。
派手さはない。
逃げ道だけを断つ。
アリアが前線に出る。
「邪魔だ!」
獣人の踏み込みは低く、速い。
短剣使いの懐に入り、刃を弾き上げる。
次の瞬間、相手は地面に転がっていた。
風が来る。
横薙ぎではない。
叩き落とす流れ。
ライトは一歩踏み込み、足場を固定する。
「《身体強化Lv2》」
衝撃が脚で止まり、体勢が崩れない。
剣を返し、風の使い手の腕を斬った。
悲鳴。
だが倒れない。
歯を食いしばり、退く。
雷光が走った。
空からではない。
地面を這うように。
ライトは即座に距離を詰める。
「《サンダーLv1》」
放った雷が、相手の魔導具に走る。
制御を失った光が弾け、魔導具が砕けた。
沈黙。
残った敵は三人。
そして、奥から足音。
重い。
鎧だ。
「来たな」
ライトは剣を構え直す。
今までとは違う。
動きが揃っている。
鎧の男が前に出た。
「……ここまで来るとはな」
声は低く、落ち着いている。
「撤退の判断が遅い」
ライトは淡々と言った。
「判断じゃない。命令だ」
男は剣を抜く。
「お前を測れ、と」
次の瞬間、斬り結ぶ。
重い。
だが、遅い。
ライトは半歩外し、刃を返す。
「《斬撃強化(大)》」
衝突。
金属音が響き、鎧の男が膝をついた。
その背後で、リオナの魔法が炸裂する。
「アイスランス」
逃げ道を塞ぐ。
アリアが横から入り、柄で叩き落とした。
残りは散った。
森の奥へ、二度と振り返らず。
ライトは剣を収め、周囲を見渡す。
「……繋がったな」
拠点。
中継。
そして、指示系統。
フィーナが顔を上げる。
「もっと奥に、人が集まっている」
「なら、そこが本命だ」
アリアが笑う。
「やっと、殴りがいが出てきたな」
ミリュウが肩で鳴いた。
「ミリュ」
ライトは一度だけ頷いた。
「行くぞ。
ここから先は、止まらない」
四人は足並みを揃え、森の奥へ踏み込んだ。
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