追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

文字の大きさ
74 / 82

第74話

しおりを挟む
森を抜けると、地形は一変した。
樹木は低くなり、代わりに岩肌が露出している。踏み固められた獣道が何本も交差し、意図的に作られた導線が見て取れた。

「……拠点だな」

ライトは足を止め、周囲を見渡した。
野営跡がある。焚き火の灰は新しく、荷の跡も残っている。ここ数日で何度も使われた形跡だ。

アリアが地面を蹴る。

「守りは薄い。戦う場所じゃない」

「中継地点」
リオナが頷く。
「情報と物資だけ受け取って、すぐ移動するタイプ」

フィーナは岩壁に手を当て、目を閉じた。

「……人の気配は消えてる。でも、完全には隠してない」

つまり、急いで離れた。
追われることを前提に。

ライトは剣から手を離さず、奥へ進む。
岩陰の向こうで、何かが動いた。

「止まれ」

声は若い。
だが、怯えはない。

現れたのは一人の少女だった。
外套は簡素。武器は短槍。冒険者装備だが、どこか寄せ集めに見える。

「……追ってきたのは、あんたたち?」

ライトは頷いた。

「ここを使ってた連中を探してる」

少女は一瞬、歯を噛みしめた後、槍を下ろした。

「なら、方向は合ってる。あたしも、あいつらにやられた」

アリアが眉を上げる。

「一人で?」

「仲間は……逃げた。いや、散った」

声は淡々としていたが、拳は震えている。

リオナが一歩前に出る。

「名前は?」

「……フィオ」

短く答えた少女は、岩壁に背を預けた。

「魔導具と水使い、風の斥候、重装の前衛。あたしの村を通って行った。止めようとしたら、返り討ち」

ライトは即座に判断した。
情報が一致している。

「進行方向は?」

フィオは南を指した。

「渓谷。下に降りる道がある」

そのときだった。

遠くで、別の気配が動いた。
森ではない。
統制された足音。

アリアが舌打ちする。

「……来たな。別口だ」

フィーナが顔を上げる。

「強い人たち」

数秒後、姿を現したのは四人。
迷いのない歩き方。装備の質。無駄のない間合い。

勇者カイルを先頭に、アルシア、リデル、そしてグロウ。

カイルはライトを見て、わずかに目を細めた。

「……やはり、ここにいたか」

ライトは剣に手を添えたまま、答える。

「そっちも来てたか」

アルシアがフィオに視線を向ける。

「新顔?」

「関係ない」
ライトが遮る。

カイルは一瞬だけ黙り、それから言った。

「この先は、国の管轄になる。下がれ」

「断る」

即答だった。

リデルが静かに言う。

「忠告だ。奥にいるのは、今までの連中とは違う」

「分かってる」

ライトは渓谷の方を見る。

「だから、止まらない」

短い沈黙。
そして、カイルが小さく息を吐いた。

「……勝手にしろ。ただし、邪魔はするな」

「同じだ」

勇者パーティは進路をずらし、別の尾根へ向かっていった。
交わることなく、しかし同じ場所を目指している。

フィオが呟く。

「……あれが、勇者?」

アリアが笑った。

「肩書きは立派だな」

ライトは振り返る。

「行けるか」

フィオは槍を握り直した。

「……行く。今度は逃げない」

フィーナが頷く。

「一緒なら、通れる」

渓谷へ続く細道に、五人分の足音が重なる。
下から、湿った空気と微かな魔力のうねりが上がってきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...