追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第78話

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川沿いの道を離れ、低い丘を二つ越えた先で、空気が変わった。

湿り気が抜け、代わりに乾いた鉄の匂いが混じる。人工物の気配だ。焚き火や野営の痕跡とは違う。人が長く留まり、何かを繰り返し使っていた場所特有の残り香。

ライトは足を止め、指で合図した。

アリアが前に出る。リオナは少し距離を取り、フィーナは地面に膝をついた。

「……ここ、削られてる」

フィーナが小さく言う。

「草の根が途中で切れてる。魔力の流れも歪」

丘の向こう、谷の縁に沿って、木々が不自然に間引かれている。視界を確保するために切った痕だ。だが、見張りの姿はない。

「罠は?」

「ある。けど、見せるためのやつ」

アリアが地面を軽く蹴る。石が一つ転がり、数歩先で弾かれた。何かが反応したが、攻撃には至らない。

「足止め用だな」

ライトは頷いた。

「本命は、もう少し奥」

谷底へ降りると、簡素な施設が姿を現した。木と鉄を組み合わせた半固定式。洞窟の装置よりも粗いが、守る気はある。入口の前には、すでに人がいた。

三人。

装備は揃っている。だが統一感はない。寄せ集めだ。中央の男が一歩前に出る。

「来ると思ってた」

声は若い。だが目は落ち着いている。

「測定班じゃないな」

リオナが言う。

「違うよ」

男は肩をすくめた。

「俺たちは“回収”」

次の瞬間、左右から同時に動きがあった。

矢が飛ぶ。角度が低い。脚狙い。

ライトは踏み込み、剣を振る。

「《斬撃強化(大)》」

刃が矢をまとめて叩き落とす。弾かれた矢が地面に刺さる前に、アリアが飛び込んだ。獣人の跳躍が影を超える。

「遅い!」

重装の一人が構えるより早く、刃が肩口を裂いた。だが致命には届かない。相手は踏みとどまる。

後方で魔力が膨らんだ。

水だ。

圧縮された塊が横薙ぎに放たれる。

ライトは半歩前に出る。

「《ウォーターLv2》」

水をぶつけない。流れを斜めに当て、軌道をずらす。塊は地面を削り、勢いを失った。

同時に、身体にかかる負荷が一段軽くなる。

《身体強化Lv2》が《身体強化Lv3》にレベルアップ。

踏み込みが深くなる。衝撃を受け止める余裕が増えた。

「……いい動きだな」

中央の男が短く笑う。

「だが、足りない」

男が地面を踏み鳴らす。仕込まれていた魔導具が反応し、周囲に電光が走った。細い雷。威力は低いが、範囲が広い。

ライトは即座に判断する。

「《サンダーLv1》」

自分の雷を放つのではない。流れを引き寄せ、散らす。電光が拡散し、致命的な帯電を防いだ。

リオナが間髪入れずに詠唱する。

「フレイムボール」

火球が装置に直撃し、爆ぜた。電光が途切れる。

フィーナが地面に手を当てる。草が伸び、逃げ道を塞ぐ。

「今!」

ライトは前に出る。

「《斬撃強化(大)》」

刃が一直線に走る。中央の男が防ぐが、弾ききれない。衝撃で体勢が崩れる。

男は舌打ちし、後退した。

「回収失敗か……」

仲間二人が即座に退く。撤退は早い。判断も的確だ。

深追いはしない。

施設の奥から、重い音がした。何かが起動しかけている。

「壊す」

ライトは即断した。

リオナと同時に動く。火と水を叩き込み、装置を潰す。金属が歪み、魔力の流れが断たれた。

静寂が戻る。

アリアが息を吐いた。

「測定より厄介だな」

「実用前の試運転だ」

ライトは壊れた装置を見下ろした。

「次は、完成品が出てくる」

フィーナが頷く。

「……でも、追える」

道は、もう隠されていない。

四人は顔を見合わせ、谷を抜けた。

動きは加速している。だが、こちらも止まらない。
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