追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第90話

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採掘道の奥は、外から見るよりも広かった。
壁面に残る掘削跡が不自然に新しく、崩れを防ぐための支柱が追加されている。最近になって使われ始めた場所だと、一目で分かる。

足音は抑えているが、完全に消す気はない。
見つかる前提で進む。隠密よりも、相手の出方を測るためだ。

「灯り、三つ」

アリアが小声で言う。

松明の位置。距離。影の動き。
フィーナは何も言わないが、進行方向に迷いがない。

奥へ進むにつれ、空気が変わった。
湿り気が減り、代わりに人の体臭と油の匂いが混じる。

「……人、いるな」

リオナが低く呟く。

返事はしない。
ライトは剣を抜かず、歩みだけを一定に保った。

やがて、開けた空間に出る。
簡易的な柵。木箱。布をかけられた檻が三つ。

その中に、人がいた。

縛られてはいない。だが、座り込んだまま動かない。
目の焦点が合っていない者もいる。

「やっぱりか」

アリアが歯を噛みしめる。

その瞬間、拍手が響いた。

「よく来たな」

奥の影から、男が一人、姿を現す。
外套は着ていない。魔導具も見えない。だが、立ち方に隙がない。

「観測所を潰したのは、お前たちだな」

ライトは一歩、前に出る。

「ここは何だ」

「選別場だ」

男は即答した。

「壊れるか、残るか。それを見る」

「残ったらどうなる」

「使う」

アリアが踏み出そうとした瞬間、フィーナが腕を掴む。

「……まだ」

男は続ける。

「ここで終わりじゃない。ここは途中だ。だが――」

視線がミリュウに向く。

「お前は想定外だった」

その言葉と同時に、周囲の影が動いた。
柵の裏、支柱の陰、天井近くの足場。

人数は六。
軽装四、重装一、魔導具持ち一。

「囲まれてるわね」

リオナが杖を構える。

「囲ませてるだけだ」

ライトは静かに言った。

最初に動いたのは敵だった。
重装が前へ出る。盾構え。後方から風が走る。

「《ウィンドLv2》」

ライトの風が先に流れを変える。
敵の風が逸れ、壁を叩いた。

同時に、軽装二人が左右から詰める。

「《斬撃強化(大)》」

踏み込み一閃。
片方の得物を弾き、返す刃で肩を斬る。

アリアがもう一人に飛び込み、体勢を崩す。
リオナは詠唱を挟まない。

「フレイムボール」

火球は足元を抉るだけ。
退路を断つためだ。

魔導具持ちが水を放つ。
直線的。速度重視。

「《ウォーターLv2》」

水が水を押し流す。
衝突ではない。流れを奪う。

身体が軽い。
踏ん張りが利く。

「《身体強化Lv3》」

一歩、深く踏み込める。
距離が詰まる。

フィーナが檻の前に立ち、地面に手を当てる。
草が伸び、逃げようとした軽装の足を絡め取った。

男が舌打ちする。

「……早いな」

「終わりだ」

ライトは距離を詰める。

男は後退せず、手を上げた。

「撤退!」

即座に、残りが散る。
引き際は相変わらず早い。

だが、全員は逃げられない。

アリアが重装の足を止め、ライトが剣を振る。
鎧の継ぎ目に刃が入り、男は膝をついた。

静かになった。

檻の中の人々が、ようやくこちらを見る。

「……助けに来た」

ライトはそう言った。

嘘は言わない。
だが、約束もしない。

ここは終点じゃない。
だが、ここで止める。

ミリュウが肩で鳴いた。

「ミリュ」

ライトは剣を収め、檻に近づいた。
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