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第一部
14 エレナ、湖への小旅行
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規則的な揺れが止まって、わたしはハッと目を覚ます。
わっ! やばい! 寝てた! 降車駅乗り過ごした⁈
やばい! やばい! 隣の人に寄りかかってた!
可愛いギャルじゃなくてすいません!
どうしよう。オタバレしてるかな。
キモがられてたらどうしよう!
とにかくわたしは謝ろうと勢いよく姿勢を正して迷惑をかけただろう人物に向き合うと、緑色の瞳と目が合う。
「エレナ、よく寝てたね」
エメラルドみたいな瞳をした人物は目を細め、わたしに笑顔を向ける。
お兄様っ!
考え事をしていたら、いつの間にかお兄様に寄りかかって、うとうと眠ってしまったらしい。
そっか、そうだった。
わたしはなんかの作品の中に転生してるんだった。
だからここは通学電車の中じゃなくて馬車の中。
くっ。お兄様に寄りかかってたなら、もっと堪能したかった。
イケメンに甘えるチャンスだったのに……
「大丈夫? まだ体調良くない?」
わたしの反応があまりよくないからか、お兄様は心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「体調は大丈夫です! 日差しが気持ちよくてつい」
「ならよかった」
お兄様はホッとした顔をしてわたしの頭をポンポンする。
せっかくの頭ポンポンも邪な事を考えていたので超絶後ろめたい。
「ほら、着いたよ」
お兄様に言われて、窓の外を見る。
湖だ。
森の木々の隙間から見えていたきらめく湖も素敵だったけれど、近くで見る湖はまるで海みたい。
「見て! お兄様! 大きくて海みたいよ!」
「あはは! 小さい頃と同じ事をいうね。もうエレナは小さな女の子ではなかったんじゃないの?」
はしゃいでいるわたしに向かって、お兄様はそう言っていたずらっ子の様にウィンクをする。
イケメンにイケメンっぷりを発揮されて、キュンキュンが止まらない。
「おいで、僕の可愛いレディ。もっと景色のいい場所まで少し歩こう」
わたしはお兄様に差し出された手を取り、馬車を降りる。
歩きやすいようにとメリーが選んでくれた編み上げブーツで、お兄様と湖畔を散策する。
エレナのお気に入りだったこの靴は、足に馴染み、不安定な砂利の道も足を取られる事なくしっかりと歩ける。
あい変わらず選ばれたのは青い綿のワンピースだけど、今日のワンピースは軽やかな膝下丈で歩きやすい。
お兄様と手を繋ぎながら湖畔を歩く。
新緑の季節の湖畔では花が咲き、若草の匂いが風に乗り、耳をすませば小鳥のさえずりが聞こえる。
懐かしいな。
小さい頃から遊びに来ていた湖。
少しづつ思い出してきたエレナの記憶に浸る。
夏になるとこの湖畔で毎日のように水遊びをして、疲れたら木陰でお昼寝をする。
メリーやメイド達が用意してくれたお茶を飲んで、お菓子を食べて……
そうそう。
お兄様達と木の実を取るために木登りをしていたら、メリーがお転婆にしてるとお嫁にいけなくなると心配してたわ。
──大丈夫だよ。メリー。そしたらエレナは僕のお嫁さんになればいい。
そう言って屈託なく笑う美少年……サラサラの淡い色の金髪に、深い湖の様な青色の瞳……
幼い頃の殿下だ!
急に思い出した幼い頃の記憶に胸の奥がキュンッとする。
そんな事言われたら意識するよ。
大好きになっちゃうよ。
だって、王子様からのプロポーズだもん。
まぁね、客観的に考えれば子供の思いつきの戯言だけど、恋を意識するには充分な威力だわ。
そうかエレナは小さい頃に殿下に恋に落ちたんだ。
王都に近くて、王国内で一番大きなこの湖のほとりはトワイン領だけど王族が避暑地として使う別荘もある。
小さい頃避暑にいらしていた殿下やランス様とわたしたち兄妹はこの湖畔で遊んで過ごした。
優しい殿下のことが小さい頃から大好きで、後ろをいっつもくっついて歩いてたわたしの事を、殿下は「妹ができたみたい」と可愛がってくれていた。
そうそう!
湖が見える丘の上まで鬼ごっこを何度もした。
一度、みんなに追いつけずに転んで泣いていたら、殿下がわたしを背負って丘の上まで連れて行ってくれたのよね……
昔、何度も殿下達と走り回った道、そして殿下に背負ってもらった道を、いまはお兄様に手を引かれながら歩く。
「着いたよ」
お兄様に、声をかけられ顔をあげる。
あの時に背負ってくれていた殿下の背中越しに見たのと同じ、キラキラ輝く湖面と一面に咲き誇る純白のマーガレットの花畑が広がっていた。
──わたし、マーガレットだーいすき!
──可愛い花だね。まるでエレナみたい。
あの時たしかに殿下とそんな会話をした……
お見舞いの花束をいただいた時に「殿下がエレナ様にと選ばれた花束です」そうランス様は言っていた。
殿下は「マーガレットの花の精みたい」と言っていた。
もしかしてマーガレットの花束を下さったのは、殿下もこの思い出を大切にしてくださっているからかしら……
ダメよ。
仮に殿下がエレナとの思い出を大切にしてくれていたとしても、あくまでも殿下がエレナの事を妹の様に可愛いがってくださっていたというだけ。
恋愛対象として見てもらえてるわけじゃない。
ちゃんと冷静にならないと。
淡い期待を振り払う様に、かぶりを振った。
わっ! やばい! 寝てた! 降車駅乗り過ごした⁈
やばい! やばい! 隣の人に寄りかかってた!
可愛いギャルじゃなくてすいません!
どうしよう。オタバレしてるかな。
キモがられてたらどうしよう!
とにかくわたしは謝ろうと勢いよく姿勢を正して迷惑をかけただろう人物に向き合うと、緑色の瞳と目が合う。
「エレナ、よく寝てたね」
エメラルドみたいな瞳をした人物は目を細め、わたしに笑顔を向ける。
お兄様っ!
考え事をしていたら、いつの間にかお兄様に寄りかかって、うとうと眠ってしまったらしい。
そっか、そうだった。
わたしはなんかの作品の中に転生してるんだった。
だからここは通学電車の中じゃなくて馬車の中。
くっ。お兄様に寄りかかってたなら、もっと堪能したかった。
イケメンに甘えるチャンスだったのに……
「大丈夫? まだ体調良くない?」
わたしの反応があまりよくないからか、お兄様は心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「体調は大丈夫です! 日差しが気持ちよくてつい」
「ならよかった」
お兄様はホッとした顔をしてわたしの頭をポンポンする。
せっかくの頭ポンポンも邪な事を考えていたので超絶後ろめたい。
「ほら、着いたよ」
お兄様に言われて、窓の外を見る。
湖だ。
森の木々の隙間から見えていたきらめく湖も素敵だったけれど、近くで見る湖はまるで海みたい。
「見て! お兄様! 大きくて海みたいよ!」
「あはは! 小さい頃と同じ事をいうね。もうエレナは小さな女の子ではなかったんじゃないの?」
はしゃいでいるわたしに向かって、お兄様はそう言っていたずらっ子の様にウィンクをする。
イケメンにイケメンっぷりを発揮されて、キュンキュンが止まらない。
「おいで、僕の可愛いレディ。もっと景色のいい場所まで少し歩こう」
わたしはお兄様に差し出された手を取り、馬車を降りる。
歩きやすいようにとメリーが選んでくれた編み上げブーツで、お兄様と湖畔を散策する。
エレナのお気に入りだったこの靴は、足に馴染み、不安定な砂利の道も足を取られる事なくしっかりと歩ける。
あい変わらず選ばれたのは青い綿のワンピースだけど、今日のワンピースは軽やかな膝下丈で歩きやすい。
お兄様と手を繋ぎながら湖畔を歩く。
新緑の季節の湖畔では花が咲き、若草の匂いが風に乗り、耳をすませば小鳥のさえずりが聞こえる。
懐かしいな。
小さい頃から遊びに来ていた湖。
少しづつ思い出してきたエレナの記憶に浸る。
夏になるとこの湖畔で毎日のように水遊びをして、疲れたら木陰でお昼寝をする。
メリーやメイド達が用意してくれたお茶を飲んで、お菓子を食べて……
そうそう。
お兄様達と木の実を取るために木登りをしていたら、メリーがお転婆にしてるとお嫁にいけなくなると心配してたわ。
──大丈夫だよ。メリー。そしたらエレナは僕のお嫁さんになればいい。
そう言って屈託なく笑う美少年……サラサラの淡い色の金髪に、深い湖の様な青色の瞳……
幼い頃の殿下だ!
急に思い出した幼い頃の記憶に胸の奥がキュンッとする。
そんな事言われたら意識するよ。
大好きになっちゃうよ。
だって、王子様からのプロポーズだもん。
まぁね、客観的に考えれば子供の思いつきの戯言だけど、恋を意識するには充分な威力だわ。
そうかエレナは小さい頃に殿下に恋に落ちたんだ。
王都に近くて、王国内で一番大きなこの湖のほとりはトワイン領だけど王族が避暑地として使う別荘もある。
小さい頃避暑にいらしていた殿下やランス様とわたしたち兄妹はこの湖畔で遊んで過ごした。
優しい殿下のことが小さい頃から大好きで、後ろをいっつもくっついて歩いてたわたしの事を、殿下は「妹ができたみたい」と可愛がってくれていた。
そうそう!
湖が見える丘の上まで鬼ごっこを何度もした。
一度、みんなに追いつけずに転んで泣いていたら、殿下がわたしを背負って丘の上まで連れて行ってくれたのよね……
昔、何度も殿下達と走り回った道、そして殿下に背負ってもらった道を、いまはお兄様に手を引かれながら歩く。
「着いたよ」
お兄様に、声をかけられ顔をあげる。
あの時に背負ってくれていた殿下の背中越しに見たのと同じ、キラキラ輝く湖面と一面に咲き誇る純白のマーガレットの花畑が広がっていた。
──わたし、マーガレットだーいすき!
──可愛い花だね。まるでエレナみたい。
あの時たしかに殿下とそんな会話をした……
お見舞いの花束をいただいた時に「殿下がエレナ様にと選ばれた花束です」そうランス様は言っていた。
殿下は「マーガレットの花の精みたい」と言っていた。
もしかしてマーガレットの花束を下さったのは、殿下もこの思い出を大切にしてくださっているからかしら……
ダメよ。
仮に殿下がエレナとの思い出を大切にしてくれていたとしても、あくまでも殿下がエレナの事を妹の様に可愛いがってくださっていたというだけ。
恋愛対象として見てもらえてるわけじゃない。
ちゃんと冷静にならないと。
淡い期待を振り払う様に、かぶりを振った。
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