【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
10 / 276
第一部

10 エレナとお見舞いの花束

しおりを挟む
 お兄様としばらく談笑をしていると、殿下とランス様がいらっしゃった。
 殿下の顔色も良くなったみたいで安心する。

「殿下。体調は大丈夫?」
「あぁ、問題ない」
「お茶は?」
「いや。お茶は結構だ。仕事が残っててすぐ戻らないといけないからね」
「相変わらず大変だね。まぁ、とりあえず席に座ったら?」

 いま、この部屋にはわたしとお兄様と殿下とランス様の他にはメリーがテーブルから離れて控えているだけ。他の使用人は下がらせている。
 お兄様は周りに他人がいないからか、殿下と幼馴染らしい気安い喋り方にかわった。

 親しげな雰囲気は見てるだけでときめく。
 殿下とランス様の二人の関係性も尊いけれど、殿下とお兄様の幼馴染っぷりも萌える。

「エレナ嬢。待たせてすまなかったね。今日は花束を渡したかっただけなんだ」

 殿下はお兄様がおすすめした席に座ると、隣に立つランス様に声をかけて、わたしに花束を渡す様に促した。

 ……そっか。
 殿下から直接渡されるわけではないのね。
 そっか、渡すのも嫌なのか。殿下から渡されたりしたらエレナが調子に乗ると思われてるのかな。
 胸がぎゅっと苦しくなる。

 でもまぁ、エレナは耐えられないかもだけど、わたしは大丈夫。
 ランス様もイケメンだしね。
 殿下もお兄様もどちらかと言うと煌びやかな感じだけど、ランス様はクールでそれはそれで素敵。
 メガネかけてないけど、メガネが似合いそうな、影のある優等生みたいなイケメン。

 うん。イケメンから花束渡されるなんて、キュンキュンする! って思い込もうとする。

「殿下がエレナ様にと選ばれた花束です。お受け取りを」

 受け取った花束を覗き込むと、沢山のマーガレットと、なんかいろんな菊がひとまとめにされていた。

 ん? んん?

 わたしには、おばあちゃんがお仏壇に供えてる仏花にしか見えないんだけど。
 この世界はお仏壇なんてないだろうし、お見舞いに菊をプレゼントする習わしがあるのかしら……

 よくわからないけど、とにかく笑顔でお礼を言わなくちゃ。

「殿下。可愛いマーガレットの花束をありがとうございました」

 花束から顔をあげると殿下はわたしをじっと見つめていた。

「……どうされましたか?」
「あっ。いや。まるでマーガレットの花の精のようだと思ってね」

 殿下は一瞬戸惑った顔を見せたけど、すぐに口角を上げて笑顔を作ると、さらりと歯が浮く甘い言葉をかける。
 本当のエレナならこの台詞に喜んだのかしら。
 マーガレットの花の精だなんて、そんなこと心にも思ってなさそうなのに。

 仏花のような花束を抱えていると、困惑した顔のメリーが近寄ってくる。

「エレナお嬢様。せっかくシリル殿下に頂いたお花ですから、さっそく花瓶に生けましょうね」
「ありがとうメリー。お願いね」

 わたしはメリーに笑顔を向けて、花束を渡す。

 きっとメリーの表情から察するに、やっぱりお見舞いに菊の花束はこの世界でもおかしいのね……
 殿下はどういうつもりでこの花束を贈ったのかしら。
 口角だけあげて笑顔を作った殿下からは、気持ちは全く読み取れない。
 じっと見ていると、殿下はそっとわたしから目線を外し、さっきみたいに眉間を摘んでため息をつく。

「エレナ嬢。先程トワイン侯爵に、体調が万全になるまでしばらく屋敷で過ごすと聞いたよ。しばらくの間エレナ嬢と王立学園アカデミーで過ごせないのは残念だが、何か私ができることがあったら言っておくれ。では、私はやらなくてはいけない仕事が残っている。これで失礼するよ」

 忙しい中婚約者としての責務を果たしたのだからもういいだろうとでも言わんばかりに、殿下は立ち上がると、こちらに一瞥もくれず扉に向かってしまう。

「エレナ様。お大事に」

 ランス様がそう言い慌てて殿下の後を追いかけていったのを、わたしは声もかけられずに、ただただ見送ることしか出来なかった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...