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第一部
19 エレナ王立学園に通う
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知らない顔ばかりがこちらを向いている。
講堂の入り口でわたしは立ちすくんだ。
今までは、顔を見れば相手の名前がすぐ思い出せたのに、見渡してもここにいる生徒について誰一人名前が思い出せないどころか、顔すら知らない。
ってことは、ここにいるのはストーリーに関係のないモブばっかりなのかしら……
モブにしては美男美女ばかりだけど。
エレナの記憶に頼ろうとしても、そもそもエレナ自体が王立学園に入学したばかりで階段の転落事故を起こして、すぐ休んでいたから、まったくもって誰のこともわからない。
確か親戚の子がいるはずなんだけど。ぐるりと見ても見つからない。
周りはそんなわたしを見ているばかりで、話しかけてくれるわけでもない。
そして好意的な視線じゃないのも、手に取るようにわかる。
こんな時どう振舞ったらいいのかわからない。
心配おかけしましたけど、元気になりました。とか言えばいいのかな?
嫌味にしか聞こえないよね?
普通に、おはようございます! って挨拶したらいいの?
っていうか普通は挨拶して入るものだっけ? 前世でそんなことした記憶ない。
むしろ、しれっと入って、適当に座っておけばいいの?
身動きできないまま、不躾な視線だけが集まってくる。
数秒しか経ってないだろうけど、体感的には悠久の時を過ごしている。
「エレナ様! 体調はいかがですか?」
「えっ?」
急に後ろから声をかけられて、慌てて振り返る。
そこには、ストロベリーブロンドのクルクルした髪の毛をツインテールに結んだ少女がにこやかに笑って立っていた。
「まっ……魔法少女……」
まるで小さい女の子がテレビで夢中になる戦う魔法少女みたい。
そう思ってつい漏らしたわたしの言葉にその魔法少女が目を丸くする。
「魔法少女? わたしの事ですか?」
わ! やっちゃった!
親しくもない……と思われるクラスメイトに、魔法少女なんてあだ名つけたりしたら、エレナの印象は最悪よね。
こんな殿下と関係のないところで悪役令嬢の道を走るわけには行かない。
「違うの! あだ名をつけるつもりじゃないの。ごめんなさい!」
とりあえずこういう時は、素直に謝っておこう。
「いえ! わたしは魔力持ちだからこの学園に特待生として入れていただいただけなのでエレナ様のおっしゃる通りなんです! 魔法少女とお呼びいただいて構いません!」
「で、でも名前でお呼びしないなんて失礼だわ。本当にごめんなさい。入ってすぐお休みしてしまったから、まだ貴女のお名前を覚えていなくて……教えていただける?」
魔法少女はにっこり笑った。
「スピカです! 未来の王妃様と同じ学舎で学べるだけでも信じられないのに、名前を聞かれちゃうだなんて身に余る光栄です!」
魔法少女……
じゃなくて、スピカさんの元気な声が静かな講堂にこだまする。
……めちゃくちゃ注目浴びてる。
ヒソヒソ声の中で「チッ」と舌打ちが聞こえた。
聞こえた方向を見ると、ものすごい勢いで睨む女生徒達がいた。
ふーん。
きっと彼女たちが噂のコーデリア嬢の取り巻きか、殿下の婚約者を狙って色仕掛けをしてるご令嬢だかで、エレナを虐めていた女生徒達ね……
じっと見つめ返して顔を覚えようとする。
わたしの視線に慌てて女生徒たちは顔を逸らした。
「あっ……あの……エレナ様。申し訳ありません。わたしが大きい声出したから注目させてしまって……」
この場の空気に耐えられなくなったスピカさんが涙目で訴えてくる。
スピカさんのこの居た堪れない感じわかる。
恵玲奈の時に目立たない様にじっと息を潜ませて学校で暮らしてたのに、ついオタ仲間と盛り上がって、気がついたら注目浴びてひそひそされたりした時は、こんな風に居た堪れない感じだったよ。
わたしはこういう時にどうして欲しかった?
──よし。
「ふふ。気にしないでスピカさん。ほら、授業が始まるわ。座りましょう」
何事もなかったかの様にわたしは優雅に微笑み、スピカさんの手を取ると、近くの席に座るように促した。
「エレナ様。ありがとうございます」
ホッとした様子のスピカさんを見て、いつの日かの恵玲奈も救われた気がした。
講堂の入り口でわたしは立ちすくんだ。
今までは、顔を見れば相手の名前がすぐ思い出せたのに、見渡してもここにいる生徒について誰一人名前が思い出せないどころか、顔すら知らない。
ってことは、ここにいるのはストーリーに関係のないモブばっかりなのかしら……
モブにしては美男美女ばかりだけど。
エレナの記憶に頼ろうとしても、そもそもエレナ自体が王立学園に入学したばかりで階段の転落事故を起こして、すぐ休んでいたから、まったくもって誰のこともわからない。
確か親戚の子がいるはずなんだけど。ぐるりと見ても見つからない。
周りはそんなわたしを見ているばかりで、話しかけてくれるわけでもない。
そして好意的な視線じゃないのも、手に取るようにわかる。
こんな時どう振舞ったらいいのかわからない。
心配おかけしましたけど、元気になりました。とか言えばいいのかな?
嫌味にしか聞こえないよね?
普通に、おはようございます! って挨拶したらいいの?
っていうか普通は挨拶して入るものだっけ? 前世でそんなことした記憶ない。
むしろ、しれっと入って、適当に座っておけばいいの?
身動きできないまま、不躾な視線だけが集まってくる。
数秒しか経ってないだろうけど、体感的には悠久の時を過ごしている。
「エレナ様! 体調はいかがですか?」
「えっ?」
急に後ろから声をかけられて、慌てて振り返る。
そこには、ストロベリーブロンドのクルクルした髪の毛をツインテールに結んだ少女がにこやかに笑って立っていた。
「まっ……魔法少女……」
まるで小さい女の子がテレビで夢中になる戦う魔法少女みたい。
そう思ってつい漏らしたわたしの言葉にその魔法少女が目を丸くする。
「魔法少女? わたしの事ですか?」
わ! やっちゃった!
親しくもない……と思われるクラスメイトに、魔法少女なんてあだ名つけたりしたら、エレナの印象は最悪よね。
こんな殿下と関係のないところで悪役令嬢の道を走るわけには行かない。
「違うの! あだ名をつけるつもりじゃないの。ごめんなさい!」
とりあえずこういう時は、素直に謝っておこう。
「いえ! わたしは魔力持ちだからこの学園に特待生として入れていただいただけなのでエレナ様のおっしゃる通りなんです! 魔法少女とお呼びいただいて構いません!」
「で、でも名前でお呼びしないなんて失礼だわ。本当にごめんなさい。入ってすぐお休みしてしまったから、まだ貴女のお名前を覚えていなくて……教えていただける?」
魔法少女はにっこり笑った。
「スピカです! 未来の王妃様と同じ学舎で学べるだけでも信じられないのに、名前を聞かれちゃうだなんて身に余る光栄です!」
魔法少女……
じゃなくて、スピカさんの元気な声が静かな講堂にこだまする。
……めちゃくちゃ注目浴びてる。
ヒソヒソ声の中で「チッ」と舌打ちが聞こえた。
聞こえた方向を見ると、ものすごい勢いで睨む女生徒達がいた。
ふーん。
きっと彼女たちが噂のコーデリア嬢の取り巻きか、殿下の婚約者を狙って色仕掛けをしてるご令嬢だかで、エレナを虐めていた女生徒達ね……
じっと見つめ返して顔を覚えようとする。
わたしの視線に慌てて女生徒たちは顔を逸らした。
「あっ……あの……エレナ様。申し訳ありません。わたしが大きい声出したから注目させてしまって……」
この場の空気に耐えられなくなったスピカさんが涙目で訴えてくる。
スピカさんのこの居た堪れない感じわかる。
恵玲奈の時に目立たない様にじっと息を潜ませて学校で暮らしてたのに、ついオタ仲間と盛り上がって、気がついたら注目浴びてひそひそされたりした時は、こんな風に居た堪れない感じだったよ。
わたしはこういう時にどうして欲しかった?
──よし。
「ふふ。気にしないでスピカさん。ほら、授業が始まるわ。座りましょう」
何事もなかったかの様にわたしは優雅に微笑み、スピカさんの手を取ると、近くの席に座るように促した。
「エレナ様。ありがとうございます」
ホッとした様子のスピカさんを見て、いつの日かの恵玲奈も救われた気がした。
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