44 / 276
第一部
44 エレナとマーガレットのカフスボタン
しおりを挟む
「コーデリア!」
ダスティン様は顔を真っ青にして名を叫ぶと、倒れたコーデリア様を軽々と抱き上げて医務室に向かった。
騒がしかった四阿は静寂に包まれている。
これはきっと医務室で目を覚まして、ダスティン様にお姫様抱っこで運ばれたことをお医者様に告げられて、その事実にまたコーデリア様が失神するパターンだと思う。
なのにダスティン様が取り乱してコーデリア様のこと呼び捨てにしてた、なんてときめきシーンは本人は気を失っていて知らない。
進展しそうでしない恋は少女漫画で見る分にはいいけど、目の前で見ると焦ったい。
……もしかして、わたしが転生したのはヒロインはコーデリア様でお相手はダスティン様の少女漫画の物語で、わたしと殿下はモブなんじゃないかしら。
って、都合のいい説を考えてはみたけれど、コーデリア様がヒロインな話だって見覚えはない。
「ねぇ。エレナあのカフスボタンって誰が作ったの? まさかエレナ?」
一人で考え込んでいたらお兄様に声をかけられる。
エレナとして生活をしていると、エレナが刺繍やレース編みみたいな手芸が大好きで得意にしている事を思い出した。
刺繍も編み物も針を持てば勝手に手が動いていく。
それでも流石に金属加工を伴うリメイクはさすがにやり方は分からない。
「お兄様が街に出てはいけないって言うから、スピカさんからアクセサリーを扱うジェームズ商会の御子息が王立学園にいると教えてもって、紹介していただいたの。ジェームズ商会お抱えの工房に、カフスボタンのリメイクを依頼しました」
「よかった。まだ金属細工には手を出さないか」
ホッとした様子のお兄様を見上げる。
リメイク依頼をしたカフスボタンは、想像以上に素敵な出来上がりで、満足したわたしはダスティン様に御守り代わりだなんて適当なことを言ってお渡しした。
もちろんただのカフスボタンで、加護を感じるかはダスティン様次第だったのだけど、凄い効果が現れる結果となった。
「あっ!」
お兄様が何かに気がついた様子でわたしを見る。
「エレナ! カフスボタンいま持ってるなら、殿下に渡して!」
「え⁈」
「いま持ってないの? 屋敷?」
お兄様は当然の様にエレナが自分の分……というか、殿下の分のカフスボタンも用意していると信じている。
いや、まぁ作ってもらったけど。
でもそれは渡すためじゃなくて、このカフスボタンを殿下がつけるところを想像してニヤニヤしたいという、推しが身につけてそうな物を手元に置きたい恵玲奈の悪い癖がでてしまっただけで……
何故それがお兄様にバレてしまったのかが分からない。
「なっ。なんで殿下にお渡しする分があると思ってるの?」
「だって、毎年殿下に贈るハンカチと同じ意匠のスカーフタイだのリボンタイだの、セットで作るだけ作るくせに『あまりたくさんお送りしてもご迷惑だわ』なんて白々しい言い訳して、手元に残して眺めてうっとりしてるじゃない。どうせカフスボタンだって眺めるつもりで作ったでしょ」
お兄様によってエレナの秘事が明かされる。
……エレナ……愛が重いよ。
オタクと同じ方向性だよ。
それにしてもお兄様の思ったことをすぐ口にするところは良いところだと思っていたけど、デリカシーのかけらもない。
やっぱり短所だとおもう。
ベンチに座る殿下は、突然明かされた内容に困惑したのか顔を下に向けて眉間を摘んでいる。
「ほら、出して」
お兄様にせっつかれてポケットから、いつでも眺められる様にと小さな袋に入れたカフスボタンをおずおずと出す。
「じゃあ僕ジェームズ商会の息子と契約の話しに行ってくるから、殿下はエレナから受け取ってちゃんとそのカフスボタンつけといて下さいね!」
そういうとお兄様はこちらを振り返りもせずに飛び出して行ってしまった。
ダスティン様は顔を真っ青にして名を叫ぶと、倒れたコーデリア様を軽々と抱き上げて医務室に向かった。
騒がしかった四阿は静寂に包まれている。
これはきっと医務室で目を覚まして、ダスティン様にお姫様抱っこで運ばれたことをお医者様に告げられて、その事実にまたコーデリア様が失神するパターンだと思う。
なのにダスティン様が取り乱してコーデリア様のこと呼び捨てにしてた、なんてときめきシーンは本人は気を失っていて知らない。
進展しそうでしない恋は少女漫画で見る分にはいいけど、目の前で見ると焦ったい。
……もしかして、わたしが転生したのはヒロインはコーデリア様でお相手はダスティン様の少女漫画の物語で、わたしと殿下はモブなんじゃないかしら。
って、都合のいい説を考えてはみたけれど、コーデリア様がヒロインな話だって見覚えはない。
「ねぇ。エレナあのカフスボタンって誰が作ったの? まさかエレナ?」
一人で考え込んでいたらお兄様に声をかけられる。
エレナとして生活をしていると、エレナが刺繍やレース編みみたいな手芸が大好きで得意にしている事を思い出した。
刺繍も編み物も針を持てば勝手に手が動いていく。
それでも流石に金属加工を伴うリメイクはさすがにやり方は分からない。
「お兄様が街に出てはいけないって言うから、スピカさんからアクセサリーを扱うジェームズ商会の御子息が王立学園にいると教えてもって、紹介していただいたの。ジェームズ商会お抱えの工房に、カフスボタンのリメイクを依頼しました」
「よかった。まだ金属細工には手を出さないか」
ホッとした様子のお兄様を見上げる。
リメイク依頼をしたカフスボタンは、想像以上に素敵な出来上がりで、満足したわたしはダスティン様に御守り代わりだなんて適当なことを言ってお渡しした。
もちろんただのカフスボタンで、加護を感じるかはダスティン様次第だったのだけど、凄い効果が現れる結果となった。
「あっ!」
お兄様が何かに気がついた様子でわたしを見る。
「エレナ! カフスボタンいま持ってるなら、殿下に渡して!」
「え⁈」
「いま持ってないの? 屋敷?」
お兄様は当然の様にエレナが自分の分……というか、殿下の分のカフスボタンも用意していると信じている。
いや、まぁ作ってもらったけど。
でもそれは渡すためじゃなくて、このカフスボタンを殿下がつけるところを想像してニヤニヤしたいという、推しが身につけてそうな物を手元に置きたい恵玲奈の悪い癖がでてしまっただけで……
何故それがお兄様にバレてしまったのかが分からない。
「なっ。なんで殿下にお渡しする分があると思ってるの?」
「だって、毎年殿下に贈るハンカチと同じ意匠のスカーフタイだのリボンタイだの、セットで作るだけ作るくせに『あまりたくさんお送りしてもご迷惑だわ』なんて白々しい言い訳して、手元に残して眺めてうっとりしてるじゃない。どうせカフスボタンだって眺めるつもりで作ったでしょ」
お兄様によってエレナの秘事が明かされる。
……エレナ……愛が重いよ。
オタクと同じ方向性だよ。
それにしてもお兄様の思ったことをすぐ口にするところは良いところだと思っていたけど、デリカシーのかけらもない。
やっぱり短所だとおもう。
ベンチに座る殿下は、突然明かされた内容に困惑したのか顔を下に向けて眉間を摘んでいる。
「ほら、出して」
お兄様にせっつかれてポケットから、いつでも眺められる様にと小さな袋に入れたカフスボタンをおずおずと出す。
「じゃあ僕ジェームズ商会の息子と契約の話しに行ってくるから、殿下はエレナから受け取ってちゃんとそのカフスボタンつけといて下さいね!」
そういうとお兄様はこちらを振り返りもせずに飛び出して行ってしまった。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる