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第二部
4 エレナ隣国との茶会に誘われる
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「父上! お誘いを受けたお茶会は、最近エレナが親しくしていただいているシーワード公爵家が主催するものです。隣国の使者をお招きしているのであからさまな嫌がらせもないでしょうし、僕も誘われているからエレナと一緒にいてあげられるし、殿下だけじゃなくて、コーデリア様とかダスティンとかエレナが普通にお話できる人もいます。エレナが苦手な知らない人と当たり障りないお話に悩む必要はないし、むしろ好意的に受け入れてくれるはずです! 久しぶりのお茶会に参加するのにこんな好機はないんです! 次の機会なんて考えてたら社交の場に出ないまま婚約発表する事になります!」
屋敷に戻ってわたしがお茶会に参加することを伝えると、お父様とお母様は難色を示した。
いまお兄様が必死に説得している。
もう! お父様達はエレナの味方だったじゃない!
あぁ。あの時に即決せず、屋敷に帰ってからじっくり考えますって言えばよかった。
「それに! 殿下がエレナも一緒にっておっしゃっています! 殿下がそうおっしゃっていたら僕たちの一存でお断りするわけにいかないでしょう?」
「エリオット。シリル殿下が自らそうおっしゃったわけじゃないんだろう。エリオットが頼みこんだのはわかっている。シリル殿下に仲良くしていただいているからと調子に乗ってはいけないよ」
殿下の事を盾にしてドヤ顔しているお兄様に向かって、お父様は冷静に指摘する。
わたしはお父様の意見にコクコク頷く。
「エレナ。できれば我が家が主催する小規模なお茶会からでも……と思ってはいたが、エリオットのいう様に今回はいい機会だ。参加しておいで」
「え?」
「公爵家からの誘いは簡単にお断りできないからね。招待状が届いたら必ず参加するんだよ」
我が家は「侯爵家」コーデリア様は「公爵家」家格が違う。
今までエレナが社交の場を拒否しまくれたのも、お兄様が参加する会を選り好みできるのもトワイン家が「侯爵家」だから。
王室の催しと公爵家からの誘いさえ参加すればあとは適当な理由で断れる。
でも三大公爵家のコーデリア様からの誘いを断れるのは貴族ばかりの王立学園でも殿下やオーウェン様くらいだ。
しかも我が家宛の招待状ならお父様やお兄様が行けばいいけど、お兄様の口ぶりだとお兄様とわたしをご指名の招待状だ。
エレナがお茶会が好きじゃないってくらいじゃ、断れる訳がない。
貴族社会め……
「……はい」
わたしは力なく返事をした。
結局、お父様からもお茶会に参加する様に言われたわたしは、とぼとぼと自室に戻ってベッドに飛び込む。
ふっかふっかの羽毛布団は気持ちがいい。
「はぁぁー」
わたしが思い切りため息をつくと、侍女のメリーがクスクス笑いながらお茶を入れてくれる。
「エレナお嬢様。メリーの入れたお茶を飲んで元気をだしてくださいまし」
「メリーの入れてくれるお茶がこの世で一番美味しくても今は元気を出すのは無理よ。だって……お茶会なんて久しぶりだし、シーワード領まで行くのに馬車で三日もかかるのよ。行きの馬車について考えただけで疲れてしまうわ」
お茶会だけでも憂鬱なのに、そのお茶会が開かれるのは王都にあるシーワード邸じゃない。
馬車に乗って泊まりがけでわざわざシーワード領のお屋敷まで行かなくちゃいけない。
それに、昼間のお茶会はお兄様がいるかもしれないけれど、その夜に開かれる舞踏会だか晩餐会には社交界デビューをすでに終えているお兄様だけが参加するのでわたしは置いてけぼりだ。
「ねぇ、メリー。わたしはお茶会上手に乗り切れるかしら」
「大丈夫ですよ。さあ、エレナお嬢様。お茶が入りましたから、こちらにいらしてください」
メリーがわたしのためにお茶とお菓子を配膳しながら優しく声をかけてくれる。
ベッドから起き上がり、ソファに座る。
「エレナお嬢様なら、シリル殿下の婚約者として立派に振る舞うことができますよ。メリーが保証します」
「ありがとうメリー」
「じゃあ、まずはお茶会で何をお召しになるか決めないと!」
そういってメリーはわたしの何倍もやる気満々でお茶会に参加するための準備を始める。
どこになにがあるか、わたしよりも知っているメリーは、エレナの部屋から続き間になっている支度部屋のドアを開けて見回すとわざとらしくため息をつく。
「エレナお嬢様。残念ながら何もかもが足りません。まずはお茶会用のデイ・ドレスを新調しなくちゃいけませんね。もし庭園で開かれることになった場合の帽子もドレスと揃いで新調しなくちゃいけませんし、そうだ、そろそろヒールのある靴も慣れる必要がございます。エリオット坊っちゃんとしているダンスの練習もしばらくはヒールのある靴で行いましょうね。あと、お化粧にもなれなくてはいけませんよ。今から楽しみですねぇ」
「……今あるワンピースでいいと思うんだけど」
エレナはお洒落な青いワンピースをいっぱい持ってる。
ウキウキでお茶会の準備なんてしたくないわたしはメリーを恨めしげに見つめたけれど、メリーはかぶりを振る。
「エレナ様はもう十六歳なんですよ? 初舞台を済ましていたっておかしくないんです。ワンピースで参加するなんて子供じみた事おやめください」
「うぅっ。でも、去年のデイ・ドレスもあるでしょ?」
去年、殿下のお誕生日パーティー前のお茶会にご招待された時のデイ・ドレスはオーウェン様に揶揄われたりと嫌な思い出もあるけれどそれでもお茶会の準備をするよりはマシだ。
「もうサイズが合わなくて入りませんよ。あの時よりも成長してらっしゃいますから」
成長? エレナも半年前よりは少しは背が伸びてるのかしら。
「お胸が」
エレナのロリ巨乳め!
お茶会に参加するだけなのに準備をゼロから始めなくてはいけない事に、わたしはため息しか出なかった。
屋敷に戻ってわたしがお茶会に参加することを伝えると、お父様とお母様は難色を示した。
いまお兄様が必死に説得している。
もう! お父様達はエレナの味方だったじゃない!
あぁ。あの時に即決せず、屋敷に帰ってからじっくり考えますって言えばよかった。
「それに! 殿下がエレナも一緒にっておっしゃっています! 殿下がそうおっしゃっていたら僕たちの一存でお断りするわけにいかないでしょう?」
「エリオット。シリル殿下が自らそうおっしゃったわけじゃないんだろう。エリオットが頼みこんだのはわかっている。シリル殿下に仲良くしていただいているからと調子に乗ってはいけないよ」
殿下の事を盾にしてドヤ顔しているお兄様に向かって、お父様は冷静に指摘する。
わたしはお父様の意見にコクコク頷く。
「エレナ。できれば我が家が主催する小規模なお茶会からでも……と思ってはいたが、エリオットのいう様に今回はいい機会だ。参加しておいで」
「え?」
「公爵家からの誘いは簡単にお断りできないからね。招待状が届いたら必ず参加するんだよ」
我が家は「侯爵家」コーデリア様は「公爵家」家格が違う。
今までエレナが社交の場を拒否しまくれたのも、お兄様が参加する会を選り好みできるのもトワイン家が「侯爵家」だから。
王室の催しと公爵家からの誘いさえ参加すればあとは適当な理由で断れる。
でも三大公爵家のコーデリア様からの誘いを断れるのは貴族ばかりの王立学園でも殿下やオーウェン様くらいだ。
しかも我が家宛の招待状ならお父様やお兄様が行けばいいけど、お兄様の口ぶりだとお兄様とわたしをご指名の招待状だ。
エレナがお茶会が好きじゃないってくらいじゃ、断れる訳がない。
貴族社会め……
「……はい」
わたしは力なく返事をした。
結局、お父様からもお茶会に参加する様に言われたわたしは、とぼとぼと自室に戻ってベッドに飛び込む。
ふっかふっかの羽毛布団は気持ちがいい。
「はぁぁー」
わたしが思い切りため息をつくと、侍女のメリーがクスクス笑いながらお茶を入れてくれる。
「エレナお嬢様。メリーの入れたお茶を飲んで元気をだしてくださいまし」
「メリーの入れてくれるお茶がこの世で一番美味しくても今は元気を出すのは無理よ。だって……お茶会なんて久しぶりだし、シーワード領まで行くのに馬車で三日もかかるのよ。行きの馬車について考えただけで疲れてしまうわ」
お茶会だけでも憂鬱なのに、そのお茶会が開かれるのは王都にあるシーワード邸じゃない。
馬車に乗って泊まりがけでわざわざシーワード領のお屋敷まで行かなくちゃいけない。
それに、昼間のお茶会はお兄様がいるかもしれないけれど、その夜に開かれる舞踏会だか晩餐会には社交界デビューをすでに終えているお兄様だけが参加するのでわたしは置いてけぼりだ。
「ねぇ、メリー。わたしはお茶会上手に乗り切れるかしら」
「大丈夫ですよ。さあ、エレナお嬢様。お茶が入りましたから、こちらにいらしてください」
メリーがわたしのためにお茶とお菓子を配膳しながら優しく声をかけてくれる。
ベッドから起き上がり、ソファに座る。
「エレナお嬢様なら、シリル殿下の婚約者として立派に振る舞うことができますよ。メリーが保証します」
「ありがとうメリー」
「じゃあ、まずはお茶会で何をお召しになるか決めないと!」
そういってメリーはわたしの何倍もやる気満々でお茶会に参加するための準備を始める。
どこになにがあるか、わたしよりも知っているメリーは、エレナの部屋から続き間になっている支度部屋のドアを開けて見回すとわざとらしくため息をつく。
「エレナお嬢様。残念ながら何もかもが足りません。まずはお茶会用のデイ・ドレスを新調しなくちゃいけませんね。もし庭園で開かれることになった場合の帽子もドレスと揃いで新調しなくちゃいけませんし、そうだ、そろそろヒールのある靴も慣れる必要がございます。エリオット坊っちゃんとしているダンスの練習もしばらくはヒールのある靴で行いましょうね。あと、お化粧にもなれなくてはいけませんよ。今から楽しみですねぇ」
「……今あるワンピースでいいと思うんだけど」
エレナはお洒落な青いワンピースをいっぱい持ってる。
ウキウキでお茶会の準備なんてしたくないわたしはメリーを恨めしげに見つめたけれど、メリーはかぶりを振る。
「エレナ様はもう十六歳なんですよ? 初舞台を済ましていたっておかしくないんです。ワンピースで参加するなんて子供じみた事おやめください」
「うぅっ。でも、去年のデイ・ドレスもあるでしょ?」
去年、殿下のお誕生日パーティー前のお茶会にご招待された時のデイ・ドレスはオーウェン様に揶揄われたりと嫌な思い出もあるけれどそれでもお茶会の準備をするよりはマシだ。
「もうサイズが合わなくて入りませんよ。あの時よりも成長してらっしゃいますから」
成長? エレナも半年前よりは少しは背が伸びてるのかしら。
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お茶会に参加するだけなのに準備をゼロから始めなくてはいけない事に、わたしはため息しか出なかった。
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