【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
57 / 276
第二部

7 エレナはお茶会の招待客か否か

しおりを挟む
 ランス様の説明を聞き終わったわたしは、ウェードが入れてくれたハーブティーを飲みほして、再びお兄様を睨みつける。

 シーワード公爵領で行われるお茶会にだけ参加すればいいと思っていたのに……

 お兄様が王女様の案内係を買って出ていたせいで、五日間にわたるシーワード公爵領でのレセプションのみならず、王都内の観光だ何やらで、わたしとお兄様はひとまず二週間近く王女様の側に居なくてはいけない事になっていた。
 ひとまず二週間で免除されるのだって、領地内で「恵みの女神様」に小麦の収穫を感謝して夏から秋にかけての作物の豊穣を願うお祭りがあるからで、そのお祭りが終わった後は、また王女様の案内係をしなくてはいけない。

 だいたいイスファーンの使者達は貿易交渉のために来るはずなのに、王女様は観光気分なのか三ヶ月近く滞在する気らしい。

 三ヶ月もお世話するなんて……憂鬱。

 説明は聞き終わったのに、まだ殿下とコーデリア様はわたしが茶会に参加する理由が公務か招待客かで揉めている。
 殿下がコーデリア様に好意を向けているなんて、どうしてわたしは勘違いしてしまったんだろう。
 ギスギスとしたお二人を見ながらため息をつく。

「お茶会に参加しなくちゃいけない事実は変わらないなら、公務の付き添いでも招待客でもどっちでもいいのに……」

 わたしの呟きに、ランス様とダスティン様が顔を見合わせて苦笑する。

「シリル殿下は、エレナ様にも社交の場で役割があった方が気楽だと思われているだけですので、エレナ様のご希望で構いませんよ」
「コーデリア様は、エレナ様があまり社交の場が得意じゃないとお聞きになって、招待客としてご自身の席の近くでお世話されたいのです。それなのに、シリル殿下がエレナ様に公務を押し付けようとしてるとお思いになって、エレナ様をお守りしようと躍起になってらっしゃるのです。エレナ様のご選択に合わせてこちらも調整いたしますので、よくお考えください」

 ダスティン様の発言を聞き、殿下と議論していたはずのコーデリア様が勢いよく振り返る。

「ダスティン! 貴方はそうやっていつも勝手にわたくしの考えてる事を決めてかかって、しかもそれを言いふらすなんて、どういうつもりなのかしら⁈ いつもそう! わたくしに確認もせずに、わたくしが考えてる事を広めまわって迷惑だわ! もし、貴方の予想がハズレたらどう責任取るつもりなのかしら⁈ 貴方のことだから、すぐ命をかけるなんて言うんでしょうけれど、そんな事で命をかけられて万が一のことがあったらどうすればいいの⁈ 私を置いて死ぬつもりなのね⁈ 結婚前に貴方に死なれるわけにはいかないわ! だいたい貴方は自分の置かれた立場を分かってるのかしら? 将来公爵になる男として……」
「コーデリア様。私の勇気をお試しですか? さすがに私もこのような場で貴女の唇を塞ぐ事は難しい。これは貴女から私への試練でしょうか? 勇気を出してこの試練に打ち勝たねばなりませんか⁈」
「なっ! 何を言ってますの? こっこんなところで、くっ口づけなんて期待しておりませんわっ‼︎」

 真っ赤になったコーデリア様の絶叫が響き渡り、ギスギスして寒風が吹き荒んでいた執務室の空気が一気に甘くなる。
 ほぼツンしかないコーデリア様を強制的にツンデレにしてしまうダスティン様に感動を覚える。

 それにしても……
 殿下とコーデリア様はマウントの取り合いしてたわけじゃなくて、私のために揉めていたのね。
 事実に気がつくと、私は恥ずかしくて両手で顔を覆う。

「エレナよかったね、殿下もコーデリア様もエレナのためにいろいろ考えて下さってるみたいだよ」
「……お兄様が自分勝手な都合で私のこと連れていこうとするから殿下とコーデリア様が揉めてらっしゃったのよ?」

 わたしは顔を覆う指の隙間からお兄様を睨んだけど、お兄様はヘラヘラと笑って誤魔化した。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...