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第三部
13 エレナのお願いはお兄様にかわされる
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「少しくらいお手伝いに行かれたらいいのに」
わたしは声のボリュームを上げる。
お兄様の私室は隣の部屋が模様替えをしているから、少し騒がしい。
アイラン様をお迎えする準備だ。
アイラン様はまだ十四歳だから結婚どころか婚約するのはまだ先……
と思っていたけれど、イスファーン王国では結婚の年齢制限がない。結婚が決まればすぐに親の庇護から外れ、夫の庇護に入るのが慣わしだ。
結婚が決まったアイラン様はイスファーン国王の庇護から外れるので、後宮に住み続けることができずに追い出されてしまう。
とりあえずの落とし所として、ヴァーデン王国の法律に基づき結婚するのはアイラン様が十八歳になってからだけど、イスファーン王国のしきたりに基づき結婚相手のお兄様がアイラン様を庇護する事になった。
アイラン様は我が家で暮らす事になったので急ピッチでお部屋を整えている。
「なんで僕がわざわざ王宮に行って殿下のお手伝いしなくちゃいけないの。僕はまだ官吏でもなんでもないんだよ」
めんどくさそうに答えるお兄様を、わたしは呆れて見つめ返す。
「お兄様がアイラン様に求婚したりするから殿下のお仕事が増えたのよ?」
「例えそうだとしても、僕は官吏じゃないのに、国を代表して特使としてイスファーン王国までアイラン様をお迎えに行く役目を担うんだよ。日が迫ってるんだから、その準備で忙しいもの」
お兄様からのプロポーズをうけたアイラン様は、三ヶ月くらいこの国を外遊するつもりだったのを取りやめて、イスファーン王国に戻り婚約に向けてご準備していらっしゃる。
婚約の式典前にお兄様がアイラン様をお迎えに行く事になっているんだけど、本来であれば外務大臣が行くべきところを、言葉の壁の兼ね合いでお兄様が特使として伺う事になった。
お兄様の事だから、上手くロマンチックな事言って「外務大臣が来なかった」じゃなくて「自分がどうしても来たかった」みたいな展開にするんだろうし、なんなら外務大臣に貸しを作って恩を売るいい機会だと思ってるみたいで張り切っている。
確かにお迎えの準備はあるけれど、それでも、殿下が忙しくしてるんだから少しくらい手伝ってあげればいいのに。
「殿下に何を伝えてきて欲しいの?」
お兄様はそう言ってわたしの頭を撫でる。
「え?」
「違うの?」
違くない。
わたしは目を丸くしてお兄様を見つめる。
「なんか、殿下に伝えて欲しいことでもあるからそんなこと言い出したんでしょ? やっぱり王立学園に久しぶりに行ったら、誰かにいじめられたの? 本当は僕を頼って欲しかったんだけど、今日だって僕はオーウェンやダスティンの二人の足手纏いになっちゃったし、頼りなかったもんね。頼りないお兄様でごめんねエレナ。しかもアイラン様を我が家にお迎えしたら僕はアイラン様をお護りしないといけない立場になるから、エレナのこと今までの様に護ってあげられなくなっちゃうんだ。お兄様の事許してね」
陶酔しきった様子のお兄様はわたしの頭を撫でるのをやめて胸に手を当てて首を振る。
「別に誰からもいじめられていません」
「そう? ならよかった。って事で僕は忙しいから殿下のお手伝いには行かないよ。何か殿下にお伝えしたい事があるなら自分で手紙でも書いてお送りしたら?」
そう言ってお兄様は、わたしを立たせて部屋から追い出した。
めんどくさいからって、はぐらかされた!
手紙なんかじゃ上手く伝わらないからお兄様に頼みたかったのに!
わたしは不貞腐れた気分のまま自分の部屋に戻る。
お兄様が協力してくださらないなら仕方ない。
ルーセント少尉にヘイトが集まらないように、せめてわたしが毎日差し入れを持っていってお配りしよう。
幸いエレナは侯爵家のご令嬢で、毎日稽古に大量の差し入れをしたからってお金に困ることは何もない。
それにスピカさんがいるから、お友達の応援に稽古の見学するのは不自然じゃないはずだもんね。
わたしは毎日稽古の見学と、差し入れすることに決めた。
わたしは声のボリュームを上げる。
お兄様の私室は隣の部屋が模様替えをしているから、少し騒がしい。
アイラン様をお迎えする準備だ。
アイラン様はまだ十四歳だから結婚どころか婚約するのはまだ先……
と思っていたけれど、イスファーン王国では結婚の年齢制限がない。結婚が決まればすぐに親の庇護から外れ、夫の庇護に入るのが慣わしだ。
結婚が決まったアイラン様はイスファーン国王の庇護から外れるので、後宮に住み続けることができずに追い出されてしまう。
とりあえずの落とし所として、ヴァーデン王国の法律に基づき結婚するのはアイラン様が十八歳になってからだけど、イスファーン王国のしきたりに基づき結婚相手のお兄様がアイラン様を庇護する事になった。
アイラン様は我が家で暮らす事になったので急ピッチでお部屋を整えている。
「なんで僕がわざわざ王宮に行って殿下のお手伝いしなくちゃいけないの。僕はまだ官吏でもなんでもないんだよ」
めんどくさそうに答えるお兄様を、わたしは呆れて見つめ返す。
「お兄様がアイラン様に求婚したりするから殿下のお仕事が増えたのよ?」
「例えそうだとしても、僕は官吏じゃないのに、国を代表して特使としてイスファーン王国までアイラン様をお迎えに行く役目を担うんだよ。日が迫ってるんだから、その準備で忙しいもの」
お兄様からのプロポーズをうけたアイラン様は、三ヶ月くらいこの国を外遊するつもりだったのを取りやめて、イスファーン王国に戻り婚約に向けてご準備していらっしゃる。
婚約の式典前にお兄様がアイラン様をお迎えに行く事になっているんだけど、本来であれば外務大臣が行くべきところを、言葉の壁の兼ね合いでお兄様が特使として伺う事になった。
お兄様の事だから、上手くロマンチックな事言って「外務大臣が来なかった」じゃなくて「自分がどうしても来たかった」みたいな展開にするんだろうし、なんなら外務大臣に貸しを作って恩を売るいい機会だと思ってるみたいで張り切っている。
確かにお迎えの準備はあるけれど、それでも、殿下が忙しくしてるんだから少しくらい手伝ってあげればいいのに。
「殿下に何を伝えてきて欲しいの?」
お兄様はそう言ってわたしの頭を撫でる。
「え?」
「違うの?」
違くない。
わたしは目を丸くしてお兄様を見つめる。
「なんか、殿下に伝えて欲しいことでもあるからそんなこと言い出したんでしょ? やっぱり王立学園に久しぶりに行ったら、誰かにいじめられたの? 本当は僕を頼って欲しかったんだけど、今日だって僕はオーウェンやダスティンの二人の足手纏いになっちゃったし、頼りなかったもんね。頼りないお兄様でごめんねエレナ。しかもアイラン様を我が家にお迎えしたら僕はアイラン様をお護りしないといけない立場になるから、エレナのこと今までの様に護ってあげられなくなっちゃうんだ。お兄様の事許してね」
陶酔しきった様子のお兄様はわたしの頭を撫でるのをやめて胸に手を当てて首を振る。
「別に誰からもいじめられていません」
「そう? ならよかった。って事で僕は忙しいから殿下のお手伝いには行かないよ。何か殿下にお伝えしたい事があるなら自分で手紙でも書いてお送りしたら?」
そう言ってお兄様は、わたしを立たせて部屋から追い出した。
めんどくさいからって、はぐらかされた!
手紙なんかじゃ上手く伝わらないからお兄様に頼みたかったのに!
わたしは不貞腐れた気分のまま自分の部屋に戻る。
お兄様が協力してくださらないなら仕方ない。
ルーセント少尉にヘイトが集まらないように、せめてわたしが毎日差し入れを持っていってお配りしよう。
幸いエレナは侯爵家のご令嬢で、毎日稽古に大量の差し入れをしたからってお金に困ることは何もない。
それにスピカさんがいるから、お友達の応援に稽古の見学するのは不自然じゃないはずだもんね。
わたしは毎日稽古の見学と、差し入れすることに決めた。
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