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おまけ

デート

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「今度の休みに王都に買い物に出かけないか?」

 こないだ中庭でブライアンに声をかけられた。

 今週の講義は今のでおしまい。
 そう。ブライアンと出かける約束が明日に迫っている。

 どうしよう。これってデートよね?
 ブライアンとはじめてのデート……

 両思いになったとはいっても、アカデミーの寮で暮らしているブライアンと二人きりになることは無くて、恋人らしい事はまだあまりできていない。

 アカデミーにいるとつい周りの目を気にしてしまって、授業を受ける講堂や昼食を取るための食事で顔を合わせても、あえて離れた席に座ってしまう。

 明日は買い物して、食事をして……
 流行りのアクセサリーを贈られたり……
 もしかして……手くらい繋ぐのかしら。

 考えただけで顔が赤く火照っているのがわかる。

 とにかく明日はじゃじゃ馬のミンディは封印しなくちゃ。



 ***


「はぁー」

 おろしたてのワンピースを纏った私は、本日五度目のため息をつく。

 ブライアンにロマンチックなデートを期待した私が馬鹿だったのよ。

 どこに行くのか尋ねても「別に……」の一言で、行く当てもなくフラフラと街中を歩きまわるから、慣れないヒールで足が痛くなるし、疲れたから昼食を兼ねて休もうという話になったと思ったら……

 今いるのは女の子が喜ぶ様なデザートが美味しいお洒落なレストランではなく、味と量が売りの大衆食堂だ。

「ここら辺で一番うまい店なんだぜ」

 ブライアンは嬉しそうにクシャクシャ笑って「あれもうまいぞ」「これもうまいから」と何品も頼んでテーブルいっぱいにしてしまった。

「こんなにいっぱい頼んでどうするのよ? 二人だけなのよ?」
「お前は好きなだけ食えばいいよ。残りは俺が全部食うから」
「えぇっ? 大丈夫なの? 残すわけにいかないのよ」

 ここはパーティー会場じゃない。
 市井には食べるのもままならない人もいる。
 そんな中で貴族然として食べきれない量を頼んで残すなんて無作法な事。

 本当に食べ切れるの?

 私が食べたい料理を少しづつ取り分けると、ブライアンは残りの食事をどんどん平らげていく。

 すごい。
 うちの小さな弟達もこんなに食べるようになるのかしら。

 呆れて眺めながら私も食事を始める。

「わっ! 美味しい!」
「だろ?」

 たしかに美味しいし、女の子が喜ぶ様なレストランじゃブライアンのお腹は満たせないに違いないから、このお店で正解だったのかも。

「ねぇ。この後どうするの? 買い物に付き合って欲しいって言ってたじゃない。何を買うのよ」
「……んー。まぁ、その……もう少し付き合えよ」

 今日のブライアンは買い物の話になると急に歯切れが悪くなる。

 黙々と食事をとるブライアンを眺めながら私は六度目のため息をついた。
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