【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩

文字の大きさ
9 / 10
おまけ

デート2

しおりを挟む
 王都の中心街には所狭しとお店が立ち並び、貴族相手の店も庶民相手の店も繁盛している。
 ブライアンがどこに行くつもりなのか分からないので、私は私で久しぶりの王都を歩くのを楽しむことにした。

 見たこともない食事を提供する屋台の出店や、新鮮な野菜の行商が集まる市場は活気があふれている。
 あぁ、アクセサリーや服が並ぶ店先を眺めるだけでも楽しいわ。

 スタスタと歩くブライアンがチラッとアクセサリーショップの店先を眺めたときに少しだけ期待したけれど……結局そのまま素通りした。

 しばらく歩くと急にブライアンの歩みが止まる。

 えっと。馬具のお店……

 なんだ。普通にブライアンが買いたいものを買いに来ただけか。
 勿体ぶらずに馬具を見に行きたいっていえばいいのに。
 まぁ、らしいといえばらしいけど。

 他の店と違い客は入っておらず、静かな雰囲気だ。

 ブライアンは行きつけなのかドアを開けてさっさと入ると、奥にいる店主らしき男性に挨拶をする。

「頼まれてたものはできてるよ。とってくるから待ってておくれ」

 そう言って店の奥に入っていってしまったため、私とブライアンは静まり返った店内で二人きり。

 気まずい……

 二人きりなんて思うと意識しすぎてしまう。

「……ブライアンはこの店によく来るの?」
「あ、あぁまぁうちの厩舎の馬達は昔からここで馬具を揃えてる。王都の店だから農作業用から軍事でも使えそうなものや馬車を引かせる馬につける様な装飾だとか、とにかく品揃えがいい」
「そっそうなのね」

 また、沈黙してしまう。

「あっ……えっと……ほら! 最初から馬具をみたいって言ってくれたらよかったのに。もしかしたら、両思いになった記念になにか贈り物でもしてくれるんじゃないかって期待しちゃったわ!」

 沈黙に耐えきれずに、ふざけた調子でそう口に出してしまったけど、何かねだってる様で恥ずかしくなる。

 私を見つめていたブライアンが慌てた様にフイと視線を外す。

「……いまここで買ってやるから待ってろよ」
「えっ? 馬具店で?」
「あぁ」

 ……酷い。

 贈り物が欲しいなんて図々しいこと言ったように聞こえたかも知れないけど!
 いくらじゃじゃ馬扱いしてるからって馬具?

「なに? 私にハミでも噛ませて静かにさせるつもり? それとも手綱を握りたいのかしら? 鞭打ちなんてやめてよね!」

 楽しみにしていたデートなのにバカにされた気がして、つい口から言いたくもない文句が溢れる。
 
 ねだってるつもりじゃなくて、思い出を形にしたかっただけなのに……
 ブライアンと二人きりでいたくない。

「ミンディ待てよ!」

 私は涙が溢れるのも止められず、ブライアンを振り切って店を出る。

 ちょうど店員の男性が裏から出てきたのが見える。
 きっとすぐ追いかけに来れないわ。

 私は慣れないヒールで痛む足で無理して人々でごった返す市場に戻り、噴水の縁に腰掛ける。

 でける前は期待で胸いっぱい膨らんでいたけど、今はぺちゃんこだ。

 ぼろぼろ泣く私を遠巻きに見ている人達の視線が痛い。
 私を見ながら「あんなに泣いて、フラれたのかな?」「慰めに行ったら付き合えるかもよ? お前行ってみろよ」「あんなに髪の毛振り乱してたんだ襲われそうになったとかかもよ?」みんなコソコソと好き勝手言っている。

「ミンディ!」

 追いかけてきたブライアンが叫ぶと、余計に周りの視線が集まる。
 私は立ち上がり人気のない方向に歩いていく。

「おい。待てよ! どうしたんだよ急に!」
「だってブライアンが相変わらず私の事じゃじゃ馬扱いするから……」
「はぁ? お前、人の話ちゃんと聞けよ」

 ブライアンは私の肩を掴むと持っていた包み紙を押し付けてきた。

「なに?」
「開けろよ」
「あっ……」

 ブライアンから受け取った包み紙を開けると革手袋グローブが入っていた。

 ブライアンはフンと鼻を鳴らす。

「お前が一緒に馬に乗りたいっていうから用意したのに」

「ありが……とう……」

 アクセサリーじゃないけれど、私のためにブライアンが用意してくれた贈り物はもっと素敵でまた胸がいっぱいになる。

「……じゃじゃ馬娘はすぐ逃げ出すからやっぱり手綱は必要かもな」

 そうふざけて言われたけれど、ブライアンの目は優しくてドキッとする。

「手綱の代わりに、握ってて」

 私はそう言って、ブライアンの手を取る。

 ブライアンは耳たぶまで真っ赤にして手を握り返した……



~おまけ・完~
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!

佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」 突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。 アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。 アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。 二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。

【完】幼馴染と恋人は別だと言われました

迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」  大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。  毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。  幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。  そして、ある日突然、私は全てを奪われた。  幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?    サクッと終わる短編を目指しました。  内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m    

恋人でいる意味が分からないので幼馴染に戻ろうとしたら‥‥

矢野りと
恋愛
婚約者も恋人もいない私を憐れんで、なぜか幼馴染の騎士が恋人のふりをしてくれることになった。 でも恋人のふりをして貰ってから、私を取り巻く状況は悪くなった気がする…。 周りからは『釣り合っていない』と言われるし、彼は私を庇うこともしてくれない。 ――あれっ? 私って恋人でいる意味あるかしら…。 *設定はゆるいです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」

処理中です...