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略奪した立場でも
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閉じ込められた部屋は出口が閉ざされればただひたすら暗かった。霊廟にこんなとこあったんだ。
急ごしらえとはいえせっかくあつらえた花嫁衣装がまともに見えない。
そこの床が綺麗かどうかはよく分からなかったけれど、今から動くのも危ないし衣装も重いのでそのまま座り込む。
しかしこっそり逃がしてくれるとまでは思ってなかったけど、毒杯をあおらせてくれるくらいの慈悲はあると思ってた。
それともなぶり殺されなかっただけましと思うべき?
まさかこんなところで飢え死に……の前に渇き死にさせられるとは思わなかった。
創世王陛下の姿を目にしないよう月が欠けて満ちるまで開けるなとかここ連れてきた人が部下に言ってたもんなぁ。私を閉じ込めるためだよねそれ。
それとも本当に創世王陛下が迎えに来るとでも思っているのだろうか?
王族の言葉は重い。
なので殿下の宣言通り私と妹の立場は入れ替えられ、私が創世王陛下の花嫁に、妹が殿下の婚約者となった。
そしてそれが殿下の王族としての最後の言葉となった。
確かに花嫁が建前に過ぎないのはみんな分かっている。
それでも創世王陛下に嫁ぐことを悪行の罰としてしまう事は王族として許されない。
これ以上王家は間違いを重ねるわけにはいかない。
未だ殿下の処遇は曖昧なままだが、よくて市井に暮らすことになるか、悪くて下級貴族の養子にでもされるだろう。
普通ならよいと悪いが逆になるのだろうが、暗黙を破ったものに貴族は冷たい。その中のしかも下位にいるくらいならなれない庶民暮らしの方がよほど気苦労が少ないだろう。
なのでその失言を聞いた時本当にうれしかった。
数少ないよいことの一つとして、花嫁の代替わりまで残された家族は公式にではないが立場が少し上に扱われる。創世王陛下の姻戚を理由もなくむげには出来ないということだ。
大きな災害の一つでも起これば吹っ飛ぶところかむしろ不利になりかねないシロモノだが、今妹と元殿下の婚約を解消する理由には充分なる。
万一妹が望めば別だっただろうが、妹は元殿下の求婚を断ったらしい。
その時の元殿下の表情が見えなかったのが残念だ。
けれどそれ以上に妹の顔がみたい。
襲撃を依頼するような危険人物に妹を近づけさせないというのは安全のためには正しい。自分が危険人物の立場でないのなら率先してそうしていただろう。
分かっていても寂しくて悲しい。
本当はこんな風に別れたい訳じゃなかった。
幼い頃のように仲のいいまま時を重ねたかった。
もっと優しくしたかった。
嫌いなのは本当だけども、淑女教育も頑張って、尊敬されたかったし教えてあげたかった。
オトモダチとやるときは結局のところ品定めでしかなかった恋の話もしてみたかった。
そうして本当に好きな幸せになれる相手のところに送り出したかった。
私は妹が今どんな人を好ましく思うかすら知らない。
知っているのは創世王陛下が好きだった頃だけ。
だから私はここで死ななければならない。
今でも妹が創世王陛下が好きだとはさすがに思っていないけど。
以前とはいえ、妹が好きだった相手を取るわけにはいかない。
今までいろいろ酷いことはしてきたけれど。
それでも裏切ったつもりはなかった。
そして今後も裏切るつもりはない。
なので創世王陛下が迎えに来てはいけないし、生きて家に戻ってもいけない。
ここで最後の瞬間まで祈り続ける。
どうか幸せであるように。
急ごしらえとはいえせっかくあつらえた花嫁衣装がまともに見えない。
そこの床が綺麗かどうかはよく分からなかったけれど、今から動くのも危ないし衣装も重いのでそのまま座り込む。
しかしこっそり逃がしてくれるとまでは思ってなかったけど、毒杯をあおらせてくれるくらいの慈悲はあると思ってた。
それともなぶり殺されなかっただけましと思うべき?
まさかこんなところで飢え死に……の前に渇き死にさせられるとは思わなかった。
創世王陛下の姿を目にしないよう月が欠けて満ちるまで開けるなとかここ連れてきた人が部下に言ってたもんなぁ。私を閉じ込めるためだよねそれ。
それとも本当に創世王陛下が迎えに来るとでも思っているのだろうか?
王族の言葉は重い。
なので殿下の宣言通り私と妹の立場は入れ替えられ、私が創世王陛下の花嫁に、妹が殿下の婚約者となった。
そしてそれが殿下の王族としての最後の言葉となった。
確かに花嫁が建前に過ぎないのはみんな分かっている。
それでも創世王陛下に嫁ぐことを悪行の罰としてしまう事は王族として許されない。
これ以上王家は間違いを重ねるわけにはいかない。
未だ殿下の処遇は曖昧なままだが、よくて市井に暮らすことになるか、悪くて下級貴族の養子にでもされるだろう。
普通ならよいと悪いが逆になるのだろうが、暗黙を破ったものに貴族は冷たい。その中のしかも下位にいるくらいならなれない庶民暮らしの方がよほど気苦労が少ないだろう。
なのでその失言を聞いた時本当にうれしかった。
数少ないよいことの一つとして、花嫁の代替わりまで残された家族は公式にではないが立場が少し上に扱われる。創世王陛下の姻戚を理由もなくむげには出来ないということだ。
大きな災害の一つでも起これば吹っ飛ぶところかむしろ不利になりかねないシロモノだが、今妹と元殿下の婚約を解消する理由には充分なる。
万一妹が望めば別だっただろうが、妹は元殿下の求婚を断ったらしい。
その時の元殿下の表情が見えなかったのが残念だ。
けれどそれ以上に妹の顔がみたい。
襲撃を依頼するような危険人物に妹を近づけさせないというのは安全のためには正しい。自分が危険人物の立場でないのなら率先してそうしていただろう。
分かっていても寂しくて悲しい。
本当はこんな風に別れたい訳じゃなかった。
幼い頃のように仲のいいまま時を重ねたかった。
もっと優しくしたかった。
嫌いなのは本当だけども、淑女教育も頑張って、尊敬されたかったし教えてあげたかった。
オトモダチとやるときは結局のところ品定めでしかなかった恋の話もしてみたかった。
そうして本当に好きな幸せになれる相手のところに送り出したかった。
私は妹が今どんな人を好ましく思うかすら知らない。
知っているのは創世王陛下が好きだった頃だけ。
だから私はここで死ななければならない。
今でも妹が創世王陛下が好きだとはさすがに思っていないけど。
以前とはいえ、妹が好きだった相手を取るわけにはいかない。
今までいろいろ酷いことはしてきたけれど。
それでも裏切ったつもりはなかった。
そして今後も裏切るつもりはない。
なので創世王陛下が迎えに来てはいけないし、生きて家に戻ってもいけない。
ここで最後の瞬間まで祈り続ける。
どうか幸せであるように。
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