妹の結婚を邪魔するために姉は婚約破棄される

こうやさい

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断罪は手のひらの上?

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 けれど殿下はあっさりと騙された。
 よっぽど鬱屈が溜まっていたらしい。内々で処理するでも、訴えるべき場所へ届けるでもなく、皆が集まる卒業式の最中、殿下は壇上から降りず、私と妹を呼びつけた。
 そして妹を抱き寄せて庇うように背後に立たせ、思わずにらみつけた私に向かい、件の手紙を一度突きつけてから、読み上げ始めた。
 どうでもいいがいつもより声も滑舌もいいので練習していたようだ。
 内容が内容なので、さすがに皆がざわめき始める。
 妹が止めるように、あるいはすがりつくように殿下の服の裾を握りしめる。
 今度こそ完全に嫌われたかなぁと思うと覚悟していたつもりでもやっぱりへこむ。
 この手紙が前金らしき金の入った袋とともに落ちていたと言われたが、とりあえずしらを切る。
 そうしたら予想通り筆跡の事を持ち出してきた。
 一方、襲う相手を妹と書いてある事には触れない。
 ……というか、本の台詞そのままじゃこれ。
 本だと殿下の想い人は襲われる寸前に助け出されて、その後手紙が見つけ出されて差出人はなかったものの筆跡が証拠となった訳なんだけど。
 別に姉妹じゃなかった訳で。
 あの本って本当に男性向けだったのだろうか? それとも面白かったからこっそり妹の本棚に混ぜといたの殿下が見つけて読んだんだろうか。後者だったら腹立つなぁ。
 さらに言うならこの台詞も練習してるよね。間違い探しまではする気はないから細部は違ってる可能性あるけど。

 とにかくこれで私が今後表に出る可能性はなくなっただろう。
 そしてこのまま続けば本の通り殿下か婚約破棄をするのも確実。
 私の方が生け贄になることへの支障はなくなる。
 ……ただ、その場合妹は殿下と結婚する事になりかねないわけで。
 こんな男に妹はもったいない。
 誰ならいいかと言われると具体的に出てこないし、一生独身でいさせたい訳でもないんだけどさー。

 そうして私は婚約を破棄された。
 けれどその時殿下は余計な事を付け加えた。
 ――おかげで笑みを隠すのに苦労した。
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