何度生まれ変わってもショタコンだと言われています!?

こうやさい

文字の大きさ
1 / 4

前編

しおりを挟む
「生まれ変わったら結婚しよう」
 それは死にゆくあたしに向けられた、陳腐で、ありふれて、だからこそ魂にまで刻み込まれた恋人の言葉。
 覚えている中で一番古い前世の唯一のはっきりした記憶。
 あたしの運命。

 一目見て分かる。
 が彼の何度目かの生まれ変わりだと。
 今度も年下だった。


 最初に前世の記憶があると気づいたのは、飢饉の為に人数が増えた孤児院に、端っこに引っかかっているだけとはいえ貴族の令嬢の義務として慰問に行ったときだった。
 増えた子供達の中に彼はいた。
 客観的に、そして貴族の令嬢としての感覚でいうなら痩せ細った小汚い子供でしかなかった。
 けれどどこからあふれてくる懐かしさと愛おしさで目が離せなかった。
 なぜそう思うのだろうと考えた時、の意識は暗転した。

 結論から言うに彼は前世で将来を約束したあたしの恋人だった。
 ただあたしの方がかなり年上だということの違和感が酷い。きちんと覚えてないけどそこまで離れてはなかった気がする。

 それでも思い出したあたしは父様にとりあえずねだった。
 彼をうちで引き取らせて欲しいって。
 もうわがままも言わないからって。

 で、彼は家令の養子ということで引き取られた。義弟とかにされたらややこしいことになりそうで嫌なのでそれはいい。
 うちは貴族といえど家令まで貴族でなくともなんの問題もない。後継者が出来て家令もむしろ喜んでいた。

 そしてあたしは彼を構い倒した。
 家令に甘やかさないで下さいと注意されつつも、子供だからかわいいし、一緒に居ると幸せなのだからしょうがない。
 さすがにそれは恋人のようなふれあいではなかったけれど。
 彼も少なくとも懐いてはくれていたと信じている。

 けれど身分差と年齢差はやっぱりあって。
 そして貴族の令嬢なのだから政略結婚の義務がある。

 わがままを言わないと言ってしまったのはあたしだ。
 元々飢饉の時の借金の形に将来あたしを娶りたいという話は当時からされていたらしい。
 相手がなんというか、政略でもまっとうなら選ばないような相手というか、あの子とは違う意味で年が離れているというか。
 いい言葉ではないがわかりやすくいうとチビハゲデブオヤジというヤツだった。これ多分前世の感覚だ。
 借金の形で嫁をもらおうという辺り、善人とも思えない。
 領地のためだし結局は行かなければならなかったのだろうが、それでもあたしが嫌がるだろうと父は悩んでいたそうだ。
 そこに子供を一人引き取ればわがままは言わないと宣言してしまったわけで。
 男の子とはいえ愛人に出来るような年齢でもないし、嫁ぎ先に連れて行ける訳でもない。
 義弟にするなら予算もかかるが、使用人の養子ならそこまででもない。
 強いて問題点を挙げるならあたしが彼に構い過ぎて妙な評判がついたことだが、引取先が既に決まっているのだから些細な事とされたのだろう。

 結局、それで終わり。
 あたしは嫁に行かされることになり、彼はさみしがってはくれたものの、一緒に逃げてくれるほどの力もなく。
 そもそもあたしに恋をしていなかった。

 その後、運命と引き離された以上、もう役目は済んだとばかりにあっさりと命を落とした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...