何度生まれ変わってもショタコンだと言われています!?

こうやさい

文字の大きさ
4 / 4

初恋を教えてくれるひと

しおりを挟む
 陳腐な言葉だが初恋は実らないとよく言われる。これは初めてなので上手く気持ちを伝えられなかったり接することが出来なくて結果的にそうなる場合と、幼すぎてそれが恋だと気づく前にいろいろな意味で終わっていたりするからそうなるのだろう。
 同じぐらい陳腐な言葉に男の子は年上の女の人に憧れるというのもある。男の子より上ならそれはエロい意味だろうし、それより上になると今度は若い女性がいいと言い出す大人が多いのだが。

 小さな頃、確かに周りの友人に年上の女性ひとに憧れたヤツはいたが、年上だから淡い思いを抱いたというより他に選択肢がなかったという方が正しい。
 過疎が進んだ田舎なので、同世代に女児はほとんどいなかった。年下にもいたがさすがにその当時だと意思の疎通が出来てるか怪しいくらいなので憧れる暇があったら危ないことをしないか見張らなければという感じだったので無理だ。……大人達から見たら俺たちもそう変わらなかったのだろうが。

 実は俺にも憧れている人がいた。
 あまり関わりのない、それなりに年が離れていた、けれど俺を子供扱いしない人だった。
 友達にはあまり人気がなかった。もっと優しくて構ってくれる人の方がいいと。
 それは甘えたいだけで恋ではないだろうと、思っていたが幸い口には出さなかった。
 そしてそれと同時に、自分の気持ちが恋であることを自覚した。

 初恋に気づいたとき、一般的にはどうするものなのだろうか?
 未知の感情に恐れおののいて、そのくせ浮かれたり、相手と自分を比べてみて喜んだり絶望したり、気持ちを伝えようとしてできなかったり、伝えて上手くいったりいかなかったりするのだろう。

 俺はなにも言わなかった。

 こちらがどんな感情を持とうとも子供のいうこととしか思われないだろう。
 だったら告げて流されてその印象引きずられるより、本気だと最低限でも信じてもらえる年齢まで待とうと。

 それでもその前に恋人が出来たり結婚したりしないかとひやひやしていた。
 彼女に近い年齢の独身男性は現在ほぼいないが、いきなり街から帰ってくる可能性はあるし、それより上の死別や離婚で独身となった男性の再婚相手に選ばれることもあり得る。
 そう心配しながらも、彼女はずっと独りだった。

 年月が経ち、その時の想いすら所詮子供のものだったと思い知った頃。
 ようやっと想いを告げようと決意したとき、不意にその衝動はやってきた。

 ――彼女を望んではいけない。

 最初は、単純にひるんでいるのだと思った。
 いくら決意したといえど、長い間こじらせて来たのだから、現状を変えることにためらいが出るのもしょうがない。
 すぐに受け入れてくれると思うほどうぬぼれられる何かがあるわけでもないし。
 それでも地道に行くつもりだった。

 けれど恋情に逆らうように、その衝動はますます強くなる。
 こんなにも恋い焦がれているのに、それを止めようとする。
 そう言っているのが他人だったらどんなによかっただろう。
 たとえ頭がおかしくなったのだとしても、他人の言葉と思い込めたのならばあらがい続ける事も出来ただろう。
 けれどこれは自分自身だという強い確信があった。
 迷っている訳でもないのに、なぜ止めるのか分からなかった。

 その板挟みに疲れ果ててしまったとき、優しくしてくれた女性がいた。
 他に好きな人がいてもいいという言葉に、卑怯にも俺は逃げた。
 なぜか以前にも同じ事をしたような気がした。

 それでもこれで望まなくなったのだからもう少し冷静に彼女の事を考えられるようになるだろうと思った矢先、彼女はあっさりと事故で死んでしまった。
 まるで俺の恋情のためだけに存在していた幻のようだった。

 きっと生まれ変わっても、俺は彼女に恋をするだろう。
 何度でも初恋を教えてくれるだろう。
 その時も何かが俺を止めようとするのだろうか?

 愛していた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...