1 / 2
表
しおりを挟む
気がつくと何か記号らしきものが規則的に描かれている光る板の前に座っていました。
くらりと目眩がして固く目を瞑ります。
流れ込んでくる何かに意識が流され、気を失うかと思った寸前、何事もなかったかのように意識がクリアになり、記憶が統合されます。
けれど理解までにはもうしばらく時間がかかりました。
ディスプレイには、他の令嬢に心奪われた婚約者である皇太子殿下に婚約破棄された悪役令嬢の小説が……って、これ私ですわ。
私は確かにここに書かれているとおりに、これではヒロインと書かれている少女に殿下が心奪われ、婚約破棄され……って、どうして悪役令嬢としか書かれていませんの!? って、名前覚えられないからというのが記憶から思い出せる辺り頭が痛いですわ。私にはきちんと名前があります。……後で一括置換すればいいという思考が出てきて混乱します。気をつけないと残すべきところも変わったり、中途半端に名前を呼んだり名前からあだ名を付けている場所が変わってなかったりで失敗するというのは誰の言葉なのかしら?
まぁいいですわ、一括置換とやらに付き合って差し上げます。
とにかくその悪役令嬢としての私は、ヒロインに心引かれた殿下によってどこからか冤罪を押しつけられ婚約破棄と共に国外追放を命ぜられました。
そこで隣国から留学していたヒロインが、小国だし今までほどの暮らしは出来ないだろうけれどと、お従兄様を紹介してくださって、ああこの人相手なら負けてもしょうがないのかもしれませんわと妙にすがすがしい気持ちで隣国に向かいましたわ。
本当に感謝していましたの。貴族社会を出れば私は現状何も出来ないと分かっていましたし、親にも早々に切り捨てられましたのでつてもありませんでしたから、屋根と壁があるだけでも助かるほど何も持っていないと本当の意味でかどうかはとにかく分かっておりましたから。技術的に出来るかどうかはとにかく、下働きでも何でもする覚悟はしていましたわ。
ところがそのお従兄様はずいぶんと優しくしてくださり、却って居心地の悪くなるほどでしたので仕事はないかと尋ねたところ妹様のマナーレッスンと後は出来れば自分の話し相手になってくれといわれ……恐らくつまらないであろう女のおしゃべりを熱心に聞いてくださるんですもの、好きになったのは私が悪いわけじゃないですわよね?
と、ここまではディスプレイにも書かれているようですわ。
でもこれ私以外の視点もあるようで……えーっと。
って、あのヒロインさん間諜でしたの!? 冤罪はあなたが殿下に吹き込んでいましたの!?
お従兄様も一味でしたの!? 私の話を聞いてくださったのは探るためでしたの!?
しかも人間ですらなくて、最終的には故国を食料の養殖場にするつもりですって!? 食料って人間でしてよ!?
これでどうして私が悪役令嬢ですの!?
……失礼、取り乱しましたわ。
これはどうすればいいのでしょう?
推測に過ぎませんけれど、決定しているのはここに書かれた部分まででしょうか? 少なくとも私は知りませんし。
だとすればここの続きを都合のいいように書き換えればよろしいのかしら?
ですか、それは誰の都合ですの?
私と致しましては元婚約者には未練がないのでお従兄様と…………ももうどうでもいいですわね、今までの言動ももくろみがあると分かればうさんくさいだけに思えてきましたし、それくらいで醒める程度にしか愛情を信じられる余裕が今はありませんわ。人外に関しては実感がないので保留で。
それに今私がいますのは今までいた世界ではなくディスプレイの前なんですわよね?
続きを書いたとして、結局誰の物語になるのでしょう?
この身体の都合としては考えたとおりに進んだ方がよろしいんでしょうけど、まだ決めあぐねていたようですし。
そういえば私の話を書いてたらしいこの身体の持ち主は今はどうなっているのでしょう?
まさか私と入れ替わったりはしていませんわよね?
……このまま何もしなくていい気がしてきましたわ。
幸いこちらで暮らしていける知識と実感は伴わないとはいえ記憶はあるようですし。
生活にも困りそうもないというか、ある部分ではこちらの方がよい生活をしているようですし。
そもそも私がこんな目に遭ってるのはこの人のせいですものね?
くらりと目眩がして固く目を瞑ります。
流れ込んでくる何かに意識が流され、気を失うかと思った寸前、何事もなかったかのように意識がクリアになり、記憶が統合されます。
けれど理解までにはもうしばらく時間がかかりました。
ディスプレイには、他の令嬢に心奪われた婚約者である皇太子殿下に婚約破棄された悪役令嬢の小説が……って、これ私ですわ。
私は確かにここに書かれているとおりに、これではヒロインと書かれている少女に殿下が心奪われ、婚約破棄され……って、どうして悪役令嬢としか書かれていませんの!? って、名前覚えられないからというのが記憶から思い出せる辺り頭が痛いですわ。私にはきちんと名前があります。……後で一括置換すればいいという思考が出てきて混乱します。気をつけないと残すべきところも変わったり、中途半端に名前を呼んだり名前からあだ名を付けている場所が変わってなかったりで失敗するというのは誰の言葉なのかしら?
まぁいいですわ、一括置換とやらに付き合って差し上げます。
とにかくその悪役令嬢としての私は、ヒロインに心引かれた殿下によってどこからか冤罪を押しつけられ婚約破棄と共に国外追放を命ぜられました。
そこで隣国から留学していたヒロインが、小国だし今までほどの暮らしは出来ないだろうけれどと、お従兄様を紹介してくださって、ああこの人相手なら負けてもしょうがないのかもしれませんわと妙にすがすがしい気持ちで隣国に向かいましたわ。
本当に感謝していましたの。貴族社会を出れば私は現状何も出来ないと分かっていましたし、親にも早々に切り捨てられましたのでつてもありませんでしたから、屋根と壁があるだけでも助かるほど何も持っていないと本当の意味でかどうかはとにかく分かっておりましたから。技術的に出来るかどうかはとにかく、下働きでも何でもする覚悟はしていましたわ。
ところがそのお従兄様はずいぶんと優しくしてくださり、却って居心地の悪くなるほどでしたので仕事はないかと尋ねたところ妹様のマナーレッスンと後は出来れば自分の話し相手になってくれといわれ……恐らくつまらないであろう女のおしゃべりを熱心に聞いてくださるんですもの、好きになったのは私が悪いわけじゃないですわよね?
と、ここまではディスプレイにも書かれているようですわ。
でもこれ私以外の視点もあるようで……えーっと。
って、あのヒロインさん間諜でしたの!? 冤罪はあなたが殿下に吹き込んでいましたの!?
お従兄様も一味でしたの!? 私の話を聞いてくださったのは探るためでしたの!?
しかも人間ですらなくて、最終的には故国を食料の養殖場にするつもりですって!? 食料って人間でしてよ!?
これでどうして私が悪役令嬢ですの!?
……失礼、取り乱しましたわ。
これはどうすればいいのでしょう?
推測に過ぎませんけれど、決定しているのはここに書かれた部分まででしょうか? 少なくとも私は知りませんし。
だとすればここの続きを都合のいいように書き換えればよろしいのかしら?
ですか、それは誰の都合ですの?
私と致しましては元婚約者には未練がないのでお従兄様と…………ももうどうでもいいですわね、今までの言動ももくろみがあると分かればうさんくさいだけに思えてきましたし、それくらいで醒める程度にしか愛情を信じられる余裕が今はありませんわ。人外に関しては実感がないので保留で。
それに今私がいますのは今までいた世界ではなくディスプレイの前なんですわよね?
続きを書いたとして、結局誰の物語になるのでしょう?
この身体の都合としては考えたとおりに進んだ方がよろしいんでしょうけど、まだ決めあぐねていたようですし。
そういえば私の話を書いてたらしいこの身体の持ち主は今はどうなっているのでしょう?
まさか私と入れ替わったりはしていませんわよね?
……このまま何もしなくていい気がしてきましたわ。
幸いこちらで暮らしていける知識と実感は伴わないとはいえ記憶はあるようですし。
生活にも困りそうもないというか、ある部分ではこちらの方がよい生活をしているようですし。
そもそも私がこんな目に遭ってるのはこの人のせいですものね?
20
あなたにおすすめの小説
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
ヒロインは敗北しました
東稔 雨紗霧
ファンタジー
王子と懇ろになり、王妃になる玉の輿作戦が失敗して証拠を捏造して嵌めようとしたら公爵令嬢に逆に断罪されたルミナス。
ショックのあまり床にへたり込んでいると聞いた事の無い音と共に『ヒロインは敗北しました』と謎の文字が目の前に浮かび上がる。
どうやらこの文字、彼女にしか見えていないようで謎の現象に混乱するルミナスを置いてきぼりに断罪はどんどん進んでいき、公爵令嬢を国外追放しようとしたルミナスは逆に自分が国外追放される事になる。
「さっき、『私は優しいから処刑じゃなくて国外追放にしてあげます』って言っていたわよね?ならわたくしも優しさを出して国外追放にしてさしあげるわ」
そう言って嘲笑う公爵令嬢の頭上にさっきと同じ音と共に『国外追放ルートが解放されました』と新たな文字が現れた。
宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~
よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。
しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。
なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。
そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。
この機会を逃す手はない!
ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。
よくある断罪劇からの反撃です。
当然だったのかもしれない~問わず語り~
章槻雅希
ファンタジー
学院でダニエーレ第一王子は平民の下働きの少女アンジェリカと運命の出会いをし、恋に落ちた。真実の愛を主張し、二人は結ばれた。そして、数年後、二人は毒をあおり心中した。
そんな二人を見てきた第二王子妃ベアトリーチェの回想録というか、問わず語り。ほぼ地の文で細かなエピソード描写などはなし。ベアトリーチェはあくまで語り部で、かといってアンジェリカやダニエーレが主人公というほど描写されてるわけでもないので、群像劇?
『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。
氷の薔薇は砕け散る
柊
ファンタジー
『氷の薔薇』と呼ばれる公爵令嬢シルビア・メイソン。
彼女の人生は順風満帆といえた。
しかしルキシュ王立学園最終年最終学期に王宮に呼び出され……。
※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
よくある風景、但しある特殊な国に限る
章槻雅希
ファンタジー
勘違いする入り婿、そしてそれを受けてさらに勘違いする愛人と庶子。そんなお花畑一家を扱き下ろす使用人。使用人の手綱を取りながら、次期当主とその配偶者の生きた教材とする現当主。それをやりすぎにならないうちに収めようと意を痛める役所。
カヌーン魔導王国では、割とよくある光景なのである。
カヌーン魔導王国シリーズにしてしまいました(笑)
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる