2 / 2
後編
しおりを挟む
とかのんきに考えていたあたしが覚えていなかったのはそれまでのこの子の記憶だけではなかった。
転生した乙女ゲームに続編があったということも、ころっと忘れていた。
本来ならメインであるはずの殿下ルート以外はそれなりに人気があったので、続編をと考えるのはまぁ理解出来る。
前作で人気だったキャラを出してユーザーを引きつけようとするのも分かる。
けどさぁ、前作と同じ舞台とか脇キャラをメインに昇格とかならとにかく、ヒロインから攻略対象までほとんど脇に出る程度じゃなく引き継いでるのはいかんだろ。
続編はノーマルエンドで誰ともくっつかなかった少し後から始まる……って、あの注いだ愛情をまるっとなかったことにしないで。
そりゃスチル集めるためとかで複数キャラクリアしてたから一途ではなかったかもしれないけど、それでも推しもいたし、いろいろ苦労もした。
所詮データといえばデータだし、消えるのはあっという間だけど。
自分で最初からやり直したくせに、あれだけ仲良くなったキャラに他人行儀に振る舞われてちょっと落ち込んだりしたとか、いろんな理由で記憶の中以外にはなかったことになったルートもあったけど、それでも公式に否定されたくはないわけで。
どうしてもそうしなきゃならない事情があったとしても、せめて前作のデータ引き継ぐとか、クイズを出して正解したキャラの好感度は少し上げとくとか出来なかったわけ?
それに時間をかけて育てる愛情も素敵だけど、一定期間そういういろいろ経て結局進展しなかったのなら諦めろよどっちもという気もする。
そこまでして前作のキャラを出すのに、どうしてか悪役令嬢が出ないと思ったら、何故か国外追放されてヒロインに復讐しにこっそり戻って来てた。それから守り守られつつ愛を育むのが続編の内容になる。
いやさ、百歩譲って殿下エンドの続きならそうなったかもしれないよ? あのルートに関してのみは性格破綻してたし、国外追放確かにされるし。
けどノーマルエンドの続きなんだよね? 復讐も謎だけど、そもそも何が理由で国外追放されたわけ? 殿下ルート以外でされたルートなんて知らないし、されるまで殿下ルートいったならそのままくっついてるはずだし? 最後に振れる選択肢とかあったら振ってやりたいとずっと思ってたもん。
それが何故なのかを追求する人たちと今度こそ悪役令嬢との隠しルートがある事を期待した人が買ったので続編もそこそこ売れた。てかあたしも買った。
けれどついぞ謎は解けず、あたしの中であれは黒歴史にした。
だからってマジで忘れてることはないでしょうが、と転生した今なら思う。
せっかく生活慣れてきたのに、これから何か復讐したいと思う理由が出来るわけ?
そもそも悪役令嬢としての記憶ないのに? 今あるのって全部ゲームからの知識なんだけど。
まさかシナリオの都合とかでいきなり――。
今、怖いことを思いついた。
他人を自分の都合で動かそうとする人は現実にもいる。大げさな陰謀ではなくとも手伝いをして欲しいとかでもある意味では操りたいと言えなくもない。
ちょっとしたことならとにかくそれが出来たらマニュアル本が出せるぐらい簡単じゃないのは、アクシデントがあった、操ろうとした人の能力等を見誤った、何よりその人の意思が読み切れなかったからだろう。
けれど創作物の中ではキャラに意思はない。
二次創作は元々の原作があるから人格があるし、一次創作でも細かい設定や思い入れをもって書いているキャラは勝手に動くまでは行かなくともなんとなく違和感があるなと予定していた行動を止める事があると友人が言っていたが、出番の少ない脇キャラという意味でなく完全なるモブの場合属性はあっても人格はないから予定外の行動を取ることはないともいっていた。
このゲームのキャラには細かい設定はある。なぜならそれが売り物の一つだから。
けれどそれを人格ではなく属性と捉えているのなら。
見えないところで何をしているかなんて欠片も想定されていないとしたら。
この子が殿下ルートとそれ以外で性格が違うのも当たり前だ、殿下ルートでは恋に狂った女という属性を与えられた代わりに他のルートにかろうじてあった個性らしきものを取り上げられたのだから。
この子の令嬢時代の記憶はもしかして忘れているのではなく、最初からなかった?
正確には最低限の行動は記憶はあったけれど、先にゲームだと考えてしまったせいで体験としての記憶ではなくゲームの知識として認識された?
命令だけを与えられた空っぽの人形の中にあたしという前世の人格、あるいは迷い込んだ魂が入ってしまった――それが今の状態だとしたら。
もしかして他の攻略対象やヒロインまでも人格がなかったり? プレイヤーキャラだけど没個性じゃなかったのに?
それよりももし。
このまま続編が始まってしまったら。
あたしはどうなっ――――。
転生した乙女ゲームに続編があったということも、ころっと忘れていた。
本来ならメインであるはずの殿下ルート以外はそれなりに人気があったので、続編をと考えるのはまぁ理解出来る。
前作で人気だったキャラを出してユーザーを引きつけようとするのも分かる。
けどさぁ、前作と同じ舞台とか脇キャラをメインに昇格とかならとにかく、ヒロインから攻略対象までほとんど脇に出る程度じゃなく引き継いでるのはいかんだろ。
続編はノーマルエンドで誰ともくっつかなかった少し後から始まる……って、あの注いだ愛情をまるっとなかったことにしないで。
そりゃスチル集めるためとかで複数キャラクリアしてたから一途ではなかったかもしれないけど、それでも推しもいたし、いろいろ苦労もした。
所詮データといえばデータだし、消えるのはあっという間だけど。
自分で最初からやり直したくせに、あれだけ仲良くなったキャラに他人行儀に振る舞われてちょっと落ち込んだりしたとか、いろんな理由で記憶の中以外にはなかったことになったルートもあったけど、それでも公式に否定されたくはないわけで。
どうしてもそうしなきゃならない事情があったとしても、せめて前作のデータ引き継ぐとか、クイズを出して正解したキャラの好感度は少し上げとくとか出来なかったわけ?
それに時間をかけて育てる愛情も素敵だけど、一定期間そういういろいろ経て結局進展しなかったのなら諦めろよどっちもという気もする。
そこまでして前作のキャラを出すのに、どうしてか悪役令嬢が出ないと思ったら、何故か国外追放されてヒロインに復讐しにこっそり戻って来てた。それから守り守られつつ愛を育むのが続編の内容になる。
いやさ、百歩譲って殿下エンドの続きならそうなったかもしれないよ? あのルートに関してのみは性格破綻してたし、国外追放確かにされるし。
けどノーマルエンドの続きなんだよね? 復讐も謎だけど、そもそも何が理由で国外追放されたわけ? 殿下ルート以外でされたルートなんて知らないし、されるまで殿下ルートいったならそのままくっついてるはずだし? 最後に振れる選択肢とかあったら振ってやりたいとずっと思ってたもん。
それが何故なのかを追求する人たちと今度こそ悪役令嬢との隠しルートがある事を期待した人が買ったので続編もそこそこ売れた。てかあたしも買った。
けれどついぞ謎は解けず、あたしの中であれは黒歴史にした。
だからってマジで忘れてることはないでしょうが、と転生した今なら思う。
せっかく生活慣れてきたのに、これから何か復讐したいと思う理由が出来るわけ?
そもそも悪役令嬢としての記憶ないのに? 今あるのって全部ゲームからの知識なんだけど。
まさかシナリオの都合とかでいきなり――。
今、怖いことを思いついた。
他人を自分の都合で動かそうとする人は現実にもいる。大げさな陰謀ではなくとも手伝いをして欲しいとかでもある意味では操りたいと言えなくもない。
ちょっとしたことならとにかくそれが出来たらマニュアル本が出せるぐらい簡単じゃないのは、アクシデントがあった、操ろうとした人の能力等を見誤った、何よりその人の意思が読み切れなかったからだろう。
けれど創作物の中ではキャラに意思はない。
二次創作は元々の原作があるから人格があるし、一次創作でも細かい設定や思い入れをもって書いているキャラは勝手に動くまでは行かなくともなんとなく違和感があるなと予定していた行動を止める事があると友人が言っていたが、出番の少ない脇キャラという意味でなく完全なるモブの場合属性はあっても人格はないから予定外の行動を取ることはないともいっていた。
このゲームのキャラには細かい設定はある。なぜならそれが売り物の一つだから。
けれどそれを人格ではなく属性と捉えているのなら。
見えないところで何をしているかなんて欠片も想定されていないとしたら。
この子が殿下ルートとそれ以外で性格が違うのも当たり前だ、殿下ルートでは恋に狂った女という属性を与えられた代わりに他のルートにかろうじてあった個性らしきものを取り上げられたのだから。
この子の令嬢時代の記憶はもしかして忘れているのではなく、最初からなかった?
正確には最低限の行動は記憶はあったけれど、先にゲームだと考えてしまったせいで体験としての記憶ではなくゲームの知識として認識された?
命令だけを与えられた空っぽの人形の中にあたしという前世の人格、あるいは迷い込んだ魂が入ってしまった――それが今の状態だとしたら。
もしかして他の攻略対象やヒロインまでも人格がなかったり? プレイヤーキャラだけど没個性じゃなかったのに?
それよりももし。
このまま続編が始まってしまったら。
あたしはどうなっ――――。
105
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる