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02 副団長

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 彼はジークと仲良しな幼馴染で、旧知の仲だ。エルンストお義兄さまから見ればもう一人の弟のようであり、マックール家でも家族の一人のような存在のアルベールは、この邸にも自由に出入りしている。

 だから、こうして彼を混じえて三人でお茶をすることは、ジークと私にとっては良くあることだった。

 銀髪青目を持つ王都騎士団副団長のアルベールは、際立って美しい顔立ちをしていて、若い令嬢たちがより集まった時には必ず彼の噂が口に上ったりもする。

 けど、年季の入ったジーク命な私にとっては、ジーク以外の男性は、どうしても皆同じように見えてしまう。

 確かに目の前に居るアルベールが綺麗な顔はしているというのは、造り込まれた芸術品を見るような気持ちで理解が出来なくもない。

 だけど……アルベールの何にどのようにして、ドキドキしてしまうのかが、本当に良くわからないのだ。だから、そういった美形の男性を品評したりして女同士で盛り上がる話には、いつも乗れないまま終わる。

 だって、私の胸がときめく男性って、世界中探してもジークただ一人だけしか居ないし。これだけは、確実に言い切れる。

 けど、アルベールはジークが信頼している一番の友人で、仕事場を同じくしている頼れる同僚でもある。

 ということは、そんな近い存在の親友に、良い彼女だと感じ良く思われておいて、後々何の損もない。得は今は思い付かないけど、多分何かあると思う。だから、私は彼に対しては、なるべく好意的に振る舞うことを心掛けている。聡いアルベールには、そういったことも全てわかられているようだけど、何の問題もない。

 そう。誰かにそう思っていることを知られて、計算高い女と思われたとしても、私は一向に構わないのだ。

 私の行動原理のほとんどが、ジークに好かれたいとか、ジークともっと一緒に居たいという、自らの強い欲望に基づいている。

 だって、今もこうして隣に居てくれるジークが、本当に大好きなので。

 すぐ隣に座って居るジークをチラッと見たら、私が向けた視線に気がついて、優しく笑ってくれた。本当に、私の恋人って最高に素敵。

 だって、若い女の子にとって、大好きな恋人により好かれたい以外に、何か最重要事項ってありますか? 私には、ないです。

 少なくとも私個人にとっては、常に優先順位第一位がジークのこと。これだけは、本当に譲れない。

「ううん。まだ決まってないの。ジークは、海が見えるところにしようかって言うんだけど、私は山の中の湖の近くにある宿泊施設も評判良いって、この前お茶会で噂を聞いて。ロマンチックで素敵みたいで、気になっているの……」

 もうすぐ執り行われる予定の二人の結婚式の後、責任ある立場を持つジークも仕事を特別に休んで蜜月と呼ばれる一ヶ月間を過ごす。

 その場所を何処にするかで、私たちは迷っていた。景色の良いところが良いって言っても……私は、多分ジークしか見えてないと思うんだけど。逆もそうであって欲しいけど、それはただの私の願望でしかないし。

「あー……あそこか。僕も一度行ったことがあるよ。地元の料理も美味しくてね。本当に素敵だよ。僕は、お薦めするよ」

 とてもふわっとした情報しか出していないのに、心得たように大きく頷いて、にこにことして笑っているアルベールに、誰と一緒に行ったんですか? という素朴な疑問が、心の中に浮かんだ。

 けど、今も隣に居るジークに、万が一にも私がアルベールのお相手を気にしているような誤解をされるのは、絶対に嫌だし。
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