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30 黒歴史
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「……うん。初音は、確か優鷹だっけ。すごいよ。本当に、頑張ったんだな」
かっちゃんは誰からか聞いたのか、私の進学先を知っていたようだ。あ。情報源は弟の銀河かもしれない。姉の私なんかより断然頭の良かったあの子は、実はかっちゃんと同じ藤大に通っているのだ。
最悪の別れ方をした私には何も言わないけど、銀河にとってもかっちゃんは幼馴染で懐いていたお兄さんなので同じ大学に通っているとあれば交流があってもおかしくはない。
頭の良いかっちゃんが好きだった私は、必死で勉強し彼の後を追って中高一貫の名門校へと通った。補欠合格とは言え、日本が誇る有名私大のひとつ優鷹に入る事が出来たのだって、そこで培った勉学の賜物だ。
今はもう、感謝しかない。だって、優鷹に通っていなかったら、私は芹沢くんを一度も見る事すらない人生だったかもしれない。
「ふふ。ありがとう。あの、かっちゃん。もしかして、ここにケーキ買いに来たの? 今日はもう全部、はけちゃってないんだ。ごめんね」
「いや……ここは人気店だって、口コミで見たから。多分そうかなって思いつつ、ダメ元で来てみたんだ。何も、問題ないよ。初音って、ここでバイトしてるの?」
「そうそう。実は今週だけの期間限定なんだけど、ちょうど会えて良かった。午前中だったら、人気のショートケーキも残ってると思うから。また、良かったらよろしくね」
話のキリはここで良いだろうと判断した私が手を振って箒を手に持ち、店内へと戻ろうとしたらかっちゃんは私の手をぎゅっと握った。
「初音っ……」
「……え? ど、どうしたの? かっちゃん」
「俺、お前のこと……ずっと、忘れられなかった。初音が実家に帰省したら銀河にお願いして、会わせて貰う手筈だったんだ。こんなにも、可愛くなってたなんて……お願いだから、復縁してくれ!」
「え? 嫌だよ……ごめん。普通に無理」
自分が浮気した癖に今更ものすごく調子の良いことを言い出したかっちゃんを、私はばっさりと切り捨てた。
あの頃に彼のことがすごく好きだったのは、確かに事実だけど。正直今は、もう触られている部分も鳥肌が立ちそうだし、非常に気持ち悪い。
今までに予想だにしなかった復縁希望も合わせてもう完全に、彼と付き合っていた過去すべて黒歴史と化してしまった。
「初音っ……なんで」
涙ぐみそうな様子も、なんか無理。やだ。ぞわぞわとして身体中の肌を駆け抜けていく、不快感。
「なんでって……私、もう付き合っている人が居るから。それに、かっちゃん、あの時に浮気してたでしょ。そんな人と復縁したい人なんて……居ないよ。私。そういうの、本当に迷惑だから。ごめんなさい」
早く放して欲しいと言わんばかりに、私は強めに手を引いた。その気持ちが伝わったのか、かっちゃんは悲しそうな表情で何も言わずに背を向けて去って行ってしまった。
昔は好きだったかっちゃんが悲しそうにしていると、私もただそれだけで泣き出したくなるくらいに辛くなってしまったものだ。私は共感性が高いのかもしれない。
でも、今はもう、すべてが過去になってしまった。
かっちゃんは誰からか聞いたのか、私の進学先を知っていたようだ。あ。情報源は弟の銀河かもしれない。姉の私なんかより断然頭の良かったあの子は、実はかっちゃんと同じ藤大に通っているのだ。
最悪の別れ方をした私には何も言わないけど、銀河にとってもかっちゃんは幼馴染で懐いていたお兄さんなので同じ大学に通っているとあれば交流があってもおかしくはない。
頭の良いかっちゃんが好きだった私は、必死で勉強し彼の後を追って中高一貫の名門校へと通った。補欠合格とは言え、日本が誇る有名私大のひとつ優鷹に入る事が出来たのだって、そこで培った勉学の賜物だ。
今はもう、感謝しかない。だって、優鷹に通っていなかったら、私は芹沢くんを一度も見る事すらない人生だったかもしれない。
「ふふ。ありがとう。あの、かっちゃん。もしかして、ここにケーキ買いに来たの? 今日はもう全部、はけちゃってないんだ。ごめんね」
「いや……ここは人気店だって、口コミで見たから。多分そうかなって思いつつ、ダメ元で来てみたんだ。何も、問題ないよ。初音って、ここでバイトしてるの?」
「そうそう。実は今週だけの期間限定なんだけど、ちょうど会えて良かった。午前中だったら、人気のショートケーキも残ってると思うから。また、良かったらよろしくね」
話のキリはここで良いだろうと判断した私が手を振って箒を手に持ち、店内へと戻ろうとしたらかっちゃんは私の手をぎゅっと握った。
「初音っ……」
「……え? ど、どうしたの? かっちゃん」
「俺、お前のこと……ずっと、忘れられなかった。初音が実家に帰省したら銀河にお願いして、会わせて貰う手筈だったんだ。こんなにも、可愛くなってたなんて……お願いだから、復縁してくれ!」
「え? 嫌だよ……ごめん。普通に無理」
自分が浮気した癖に今更ものすごく調子の良いことを言い出したかっちゃんを、私はばっさりと切り捨てた。
あの頃に彼のことがすごく好きだったのは、確かに事実だけど。正直今は、もう触られている部分も鳥肌が立ちそうだし、非常に気持ち悪い。
今までに予想だにしなかった復縁希望も合わせてもう完全に、彼と付き合っていた過去すべて黒歴史と化してしまった。
「初音っ……なんで」
涙ぐみそうな様子も、なんか無理。やだ。ぞわぞわとして身体中の肌を駆け抜けていく、不快感。
「なんでって……私、もう付き合っている人が居るから。それに、かっちゃん、あの時に浮気してたでしょ。そんな人と復縁したい人なんて……居ないよ。私。そういうの、本当に迷惑だから。ごめんなさい」
早く放して欲しいと言わんばかりに、私は強めに手を引いた。その気持ちが伝わったのか、かっちゃんは悲しそうな表情で何も言わずに背を向けて去って行ってしまった。
昔は好きだったかっちゃんが悲しそうにしていると、私もただそれだけで泣き出したくなるくらいに辛くなってしまったものだ。私は共感性が高いのかもしれない。
でも、今はもう、すべてが過去になってしまった。
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