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75 正解(Side Josiah)
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「レニエラが最近、外出していると?」
「旦那様。左様でございます。郊外にある農園で、誰かと会っている様子だとか」
重要書類作成仕事は、いくらやっても終わりが見えないが、だからと言って家に帰らない生活はしたくなかった。
疲労した身体を引き摺るようにして帰宅した深夜にも、きっちりと身なりを整えた執事ジョナサンが深刻そうにレニエラの外出について、僕に伝えたので、使いすぎて鈍くなってしまっている頭で何がどうしたのかと考えた。
ああ……貴婦人であるレニエラが外出すること自体に問題ないが、誰かと会っている様子であることに問題があるのか。
それが、間男なのではないかと、心配されているんだろう。
「それは、男か?」
どうか、そうでないように願いながら聞いたが、ジョナサンは無言のままで頷いた。
そういえば……レニエラは僕の結婚する条件に、一年経ったら離婚をしようの他に「お互いに好きな人が出来たとしても、離婚しましょう」と言っていたような気がした。
僕はないと言い切れるが、彼女はどうだろうか。
「妻が誰かと会う際には、必ず僕に報告するか……彼女一人では会わせぬように、全員に伝えろ」
彼とてこれは、伝えづらかったことだろう。僕は短く礼を言うと、ジョナサンへもう下がって休むように伝えた。
執事ジョナサンは、明日は僕より早く起きて様々な準備している必要がある。僕の帰宅がどんなに遅かろうが、それが彼の仕事だからだ。
オフィーリアの嫌がらせは、僕よりジョナサンに利いているようだ。彼に倒れられては困る。この激務の生活が早く終わるように、祈るしかないが。
僕はそう言い置いて、自室のある二階へと階段を上がった。短い湯浴みを終えれば、もう後は眠るしかない。
自室の隣にある部屋の扉を見て、大きくため息をついた。当然のようにレニエラは眠っているだろうし、僕は夫なのにその隣で眠ることも出来ない。
何年も想い続けた彼女と、こうして、せっかく結婚出来たというのに……レニエラと話せるのは、朝食を食べている時だけだ。
これまでの行いの自業自得だと人は言うだろうが、僕は僕なりに真剣に考えた結果、秘めた恋は一生心にしまうつもりで、婚約していたオフィーリアとの結婚することを一度は選んだ。
それが正解であるか、不正解であるか。
結局のところ、僕がレニエラへの想いを捨てきれず、それに嫌気をさしたオフィーリアに嫌われて、彼女とは結婚出来なかった訳なのだが。
僕はこのところ悩み続けて、ようやくひとつの答えに辿り着いた。
過去は絶対に変わらないのなら……自分でこれからの未来を、正解にすれば良い。
そうすれば、二つに別れているように見えていたような道だって、いつか交わって正解になるはずだ。
「おやすみ……レニエラ」
扉に手を置いてそう告げても、扉に阻まれて僕の声は届かない。今の彼女の心には、僕の声がそのままの意味では届かないように。
すべての事情を説明すれば、レニエラだっていつかは心を開いてくれるだろうし、二人が夫婦であることを受け入れてくれるかもしれない。
けれど、あの頑なな様子を見れば、強硬に心の壁を突破してしまうことは出来ないと判断した。
……レニエラはまだ、自分がひどく傷ついたことを、認めたくないのかもしれない。
「旦那様。左様でございます。郊外にある農園で、誰かと会っている様子だとか」
重要書類作成仕事は、いくらやっても終わりが見えないが、だからと言って家に帰らない生活はしたくなかった。
疲労した身体を引き摺るようにして帰宅した深夜にも、きっちりと身なりを整えた執事ジョナサンが深刻そうにレニエラの外出について、僕に伝えたので、使いすぎて鈍くなってしまっている頭で何がどうしたのかと考えた。
ああ……貴婦人であるレニエラが外出すること自体に問題ないが、誰かと会っている様子であることに問題があるのか。
それが、間男なのではないかと、心配されているんだろう。
「それは、男か?」
どうか、そうでないように願いながら聞いたが、ジョナサンは無言のままで頷いた。
そういえば……レニエラは僕の結婚する条件に、一年経ったら離婚をしようの他に「お互いに好きな人が出来たとしても、離婚しましょう」と言っていたような気がした。
僕はないと言い切れるが、彼女はどうだろうか。
「妻が誰かと会う際には、必ず僕に報告するか……彼女一人では会わせぬように、全員に伝えろ」
彼とてこれは、伝えづらかったことだろう。僕は短く礼を言うと、ジョナサンへもう下がって休むように伝えた。
執事ジョナサンは、明日は僕より早く起きて様々な準備している必要がある。僕の帰宅がどんなに遅かろうが、それが彼の仕事だからだ。
オフィーリアの嫌がらせは、僕よりジョナサンに利いているようだ。彼に倒れられては困る。この激務の生活が早く終わるように、祈るしかないが。
僕はそう言い置いて、自室のある二階へと階段を上がった。短い湯浴みを終えれば、もう後は眠るしかない。
自室の隣にある部屋の扉を見て、大きくため息をついた。当然のようにレニエラは眠っているだろうし、僕は夫なのにその隣で眠ることも出来ない。
何年も想い続けた彼女と、こうして、せっかく結婚出来たというのに……レニエラと話せるのは、朝食を食べている時だけだ。
これまでの行いの自業自得だと人は言うだろうが、僕は僕なりに真剣に考えた結果、秘めた恋は一生心にしまうつもりで、婚約していたオフィーリアとの結婚することを一度は選んだ。
それが正解であるか、不正解であるか。
結局のところ、僕がレニエラへの想いを捨てきれず、それに嫌気をさしたオフィーリアに嫌われて、彼女とは結婚出来なかった訳なのだが。
僕はこのところ悩み続けて、ようやくひとつの答えに辿り着いた。
過去は絶対に変わらないのなら……自分でこれからの未来を、正解にすれば良い。
そうすれば、二つに別れているように見えていたような道だって、いつか交わって正解になるはずだ。
「おやすみ……レニエラ」
扉に手を置いてそう告げても、扉に阻まれて僕の声は届かない。今の彼女の心には、僕の声がそのままの意味では届かないように。
すべての事情を説明すれば、レニエラだっていつかは心を開いてくれるだろうし、二人が夫婦であることを受け入れてくれるかもしれない。
けれど、あの頑なな様子を見れば、強硬に心の壁を突破してしまうことは出来ないと判断した。
……レニエラはまだ、自分がひどく傷ついたことを、認めたくないのかもしれない。
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