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10 恩恵②
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「大丈夫かしら」
他に誰も居ない部屋の中で、私はぽつりと一言呟いた。
カーテンの隙間から外を覗けば真っ暗で雨が降りそうな空模様で、もしかしたら、イーサンがこちらに向かっている間に、降られてしまうかもしれない。
そして、雨音がし始めたと思ってから、雨足が高まるまでそれほど間はなかった。
そんな中でバルコニーからガタガタと音がしたので、私は慌ててバルコニーへと続く扉へと駆け寄った。
「あ……ヴァレリオ? なの?」
そこに居たのは、黒いローブもびしょ濡れになってしまっているヴァレリオだった。しかも、彼はとても真剣な表情をしていた。
イーサンに何かあったのかもしれないと、彼を見て悟った。もしかしたら、ここに来られないような、何かがあったのではないかと。
心臓はバクバクと高鳴り、身体から変な汗もじんわりと滲み出て来たような気がした。
……怖い。
「レティシア様。今日は、セーブではなくて……ロードしに来ました。昨夜に戻るために」
「え? あの……何かあったの?」
これまでにないくらい深刻な様子のヴァレリオを見て、私は高まる動悸を抑えようと胸に両手を当てた。
「それは……是非本人の口から、お聞きになって下さい。ああ、本当にあの魔法書を使っていて良かったと思う日が、こんなにも近くにあったとは思いもしませんでした。レティシア様のご温情にも感謝しています……どうか、お手をお貸し下さい」
「ええ……」
ヴァレリオは苦笑しつつ、私の差し出した手を取った。
「ロード」
彼の声が聞こえた瞬間に、私は昨夜……イーサンが私の手を持っている、あの瞬間へと戻っていた。
「……イーサン?」
「レティシア。ああ……そうか。ごめん。戻ってきたんだ。俺がダンジョンで、怪我をしてしまったんだ。それで、どちらかがロードを使いに、君へ会いに行ったんだな」
イーサンは何度か目を瞬いて、頭を右手で押さえていた。
「もしかして、大きな怪我をした? ……大丈夫だったの?」
イーサンが見せる妙な様子に、私は心配になった。こうして、時間が戻って、彼は大丈夫だとわかっていても……。
「ああ。高所から落ちて足を折ったので、二人に抱えられて宿まで戻った。それで、鎮痛効果のある薬を飲んだから、眠ってしまって。さっきのロードした時、眠っている状態でここに返ったから……なんだか、不思議な感じに陥ってしまって、心配をかけてすまない」
「まあ……そういうことだったのね」
先ほど動きがおかしかった、あのイーサンの様子の理由を聞いて頷いた。眠っている時にいきなり覚醒状態に戻されるのだから、驚いてしまったのね。
「レティシア様、ありがとうございます……足を折ったら、治療魔法を使っても、完治するまで時間掛かるので助かりました」
イーサンは優しく微笑んで、私への感謝の言葉を口にした。
色々と助けてくれる彼の役に立てたみたい。私もほっと大きく息をついた。
そして、帰る直前だった彼は、そのままバルコニーへ出て行ってしまった。
そして、翌日の朝。
目覚めた私は朝食の席で朝帰りをした従兄弟のドナルドが、暴れ回る記憶が蘇った。部屋付のメイドへ今日は朝食を部屋で取ると言えば、あまりない事なので彼女は戸惑いつつも頷いた。
昼頃には、執事エリックがドナルドの事について報告をしたので、私は過去がロードされるという魔法により、自分の嫌だった事を回避出来てしまい、なんだか不思議と充足感があった。
こんな事が出来るなんて……本当に、凄いわ。
最上級な、特別な時魔法。私も偶然だけど、その恩恵に預かれてしまったようだった。
他に誰も居ない部屋の中で、私はぽつりと一言呟いた。
カーテンの隙間から外を覗けば真っ暗で雨が降りそうな空模様で、もしかしたら、イーサンがこちらに向かっている間に、降られてしまうかもしれない。
そして、雨音がし始めたと思ってから、雨足が高まるまでそれほど間はなかった。
そんな中でバルコニーからガタガタと音がしたので、私は慌ててバルコニーへと続く扉へと駆け寄った。
「あ……ヴァレリオ? なの?」
そこに居たのは、黒いローブもびしょ濡れになってしまっているヴァレリオだった。しかも、彼はとても真剣な表情をしていた。
イーサンに何かあったのかもしれないと、彼を見て悟った。もしかしたら、ここに来られないような、何かがあったのではないかと。
心臓はバクバクと高鳴り、身体から変な汗もじんわりと滲み出て来たような気がした。
……怖い。
「レティシア様。今日は、セーブではなくて……ロードしに来ました。昨夜に戻るために」
「え? あの……何かあったの?」
これまでにないくらい深刻な様子のヴァレリオを見て、私は高まる動悸を抑えようと胸に両手を当てた。
「それは……是非本人の口から、お聞きになって下さい。ああ、本当にあの魔法書を使っていて良かったと思う日が、こんなにも近くにあったとは思いもしませんでした。レティシア様のご温情にも感謝しています……どうか、お手をお貸し下さい」
「ええ……」
ヴァレリオは苦笑しつつ、私の差し出した手を取った。
「ロード」
彼の声が聞こえた瞬間に、私は昨夜……イーサンが私の手を持っている、あの瞬間へと戻っていた。
「……イーサン?」
「レティシア。ああ……そうか。ごめん。戻ってきたんだ。俺がダンジョンで、怪我をしてしまったんだ。それで、どちらかがロードを使いに、君へ会いに行ったんだな」
イーサンは何度か目を瞬いて、頭を右手で押さえていた。
「もしかして、大きな怪我をした? ……大丈夫だったの?」
イーサンが見せる妙な様子に、私は心配になった。こうして、時間が戻って、彼は大丈夫だとわかっていても……。
「ああ。高所から落ちて足を折ったので、二人に抱えられて宿まで戻った。それで、鎮痛効果のある薬を飲んだから、眠ってしまって。さっきのロードした時、眠っている状態でここに返ったから……なんだか、不思議な感じに陥ってしまって、心配をかけてすまない」
「まあ……そういうことだったのね」
先ほど動きがおかしかった、あのイーサンの様子の理由を聞いて頷いた。眠っている時にいきなり覚醒状態に戻されるのだから、驚いてしまったのね。
「レティシア様、ありがとうございます……足を折ったら、治療魔法を使っても、完治するまで時間掛かるので助かりました」
イーサンは優しく微笑んで、私への感謝の言葉を口にした。
色々と助けてくれる彼の役に立てたみたい。私もほっと大きく息をついた。
そして、帰る直前だった彼は、そのままバルコニーへ出て行ってしまった。
そして、翌日の朝。
目覚めた私は朝食の席で朝帰りをした従兄弟のドナルドが、暴れ回る記憶が蘇った。部屋付のメイドへ今日は朝食を部屋で取ると言えば、あまりない事なので彼女は戸惑いつつも頷いた。
昼頃には、執事エリックがドナルドの事について報告をしたので、私は過去がロードされるという魔法により、自分の嫌だった事を回避出来てしまい、なんだか不思議と充足感があった。
こんな事が出来るなんて……本当に、凄いわ。
最上級な、特別な時魔法。私も偶然だけど、その恩恵に預かれてしまったようだった。
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