セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子

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16 名前①

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 私は部屋の中に逃げ込んで扉に鍵を掛けたけれど、すぐにドナルドは来てしまうだろう。

 何もかもがもう……すべては、時間の問題だった。

 すぐには追い掛けずゆっくりと近付いて来る余裕を見れば、私の部屋の鍵だって既に手に入れているはずだわ。

 ああ……とんでもないことに、なってしまった。それに、自分のことがとても情けなかった。やるべきことに背を向けて、変に感傷的になって、これまでの自分の頑張りを全て無駄にしてしまう。

 どうにか彼の侵入を防ぎたい私は扉の前に、自分の動かせそうな机を置いた。けれど、こんなのただの気休めでしかない。

 もうすぐ、ここにドナルドはやって来るだろう。そして、私を……。

 ああ……イーサン。

 自分勝手に切り捨てなければと思っていた、あの彼のことを思った。こんな風に都合の良い時だけ、私を助けて欲しいなんて……そんなこと。

 呆気なく鍵がかかっていたはずの扉は開き、机が倒れる大きな音がした。

 私の抵抗なんて、こんなものだ。それに、もう逃げ道はない。ドナルドは私が逃げられないから、余裕なのだもの。

 室内へと足を進めたドナルドは冷ややかな眼差しで、私を見つめた。追い詰めた獲物の価値を推し量るような、嫌な目だった。

「……レティシア。お前は本当に、馬鹿な女だな。両親が亡くなり唯一の継承権を持っているとはいえ、自分が非常に弱い立場にあることは知っていただろうに。俺たちからどうにかして逃げられるとでも思っていたのか」

 私の思惑なんて、何もかもすべて無駄だとするような、嘲るような眼差し。

「私に近づかないで……」

 毅然としていなくてはいけないと思ったけれど、声が震えてしまった。

 ああ……お父様、お母様……エーリク。

 ……イーサン。

 どうか……どうか、助けて欲しい。けれど、イーサンがヴァレリオの言いつけに逆らって、もし来るとしても、数時間は後になるだろう。

 私はその間に、誰にも言えないような目に遭ってしまうのだ。

「弱い立場に居る女が……俺の結婚は嫌だとのらりくらりと断り、いきがりやがって。オルランド様がいくらお前を気に入ろうと、処女ではない女が王族に嫁げるはずもない。お前はもう……終わりだ。レティシア」

 ドナルドの言葉を聞いて、目の前が真っ暗になりそうだった。いいえ。もうすぐ、私が叔父家族から逃れれるかもしれない……そんな微かな希望は、ついには断たれてしまう。


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