偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。

待鳥園子

文字の大きさ
10 / 10

10 完全犯罪

 だから、俺がミアを勘違いさせたところを、知ってても誰にも言えない。っていうか、こいつらが何か言う前に、ミア本人が俺の事を好きになれば出会うために多少無理をしたって聞いても、あの子は多分気にしない。

 つまり、これで完全犯罪成立。

「はー。こいつ、まじイラつく……早々に、ミアちゃんに嫌われて振られろ!」

 血の気の多い剣士のジャンが机を叩いたので、他の全員が自分のティーカップを持った。ジャンの前にあった紅茶だけが、ぱしゃっと机に溢れた。

「無理だよ。ミアは真面目だから、体の関係が既にあって溺愛してくる男を捨てるなんて、絶対しないし……それに、俺以上のスペック持つ男なんて、この国の同じ年齢で誰か居る? 王太子くらいじゃね?」

 全員が俺の言葉を聞いて、はあっとため息をついた。

「なんで、こいつとあの時にパーティを組もうと思ったんだろ……若いし確かに優秀だけど、好きな女の子に勘違いさせてから向こうから話しかけさせるなんて……どう考えても、おかしい奴じゃん」

「てか、それしか向こうから声を掛けてもらう手がなかった。同じ集合住宅に住んで、俺が尾けられていると勘違いしていると思って、向こうからそれは違うんですと声を掛けてもらうしかない……受付では、仕事の話しか駄目だし……苦労してランク上げした冒険者ライセンスは、絶対剥奪されたくないし……大体、受付嬢からしか声掛けられないなんて、一方的過ぎておかしいだろ。こっちには何の決定権もない」

 別にこいつらも興味もないだろうし、後ろから歩いて来るミアに声を掛けて貰いたくてゆっくり歩いたり、辛抱たまらずに部屋に連れ込んだ事は、全部割愛した。

 絶対に逃したくなくて、体を動かせなくさせたことも、別に言わなくていっか。ミアは結婚してくれるなら良いよって言ったし、ちゃんと先に進む合意は全部得たし。パーティメンバーとは言え、何もかも言わなきゃいけないってことでもないし。

「いや……美人で頭の良い受付嬢は人気あるから、ギルド側もそれは苦肉の策だろ。男性冒険者から彼女たちに誘いをかけられるとしたら、それこそ誘いが殺到してクエストを紹介してもらう仕事どころじゃなくなるじゃないか」

 そう言って穏健派の治療士のザックは、肩を竦めたので俺もその通りだと大きく頷いた。

「そ。だから、勘違いさせる俺の策も上手く行ったんだから、別に良いだろ? ミアが嫌がったんなら、そりゃ断腸の思いで、今からでも諦めるよ? けど、ミアが俺を嫌がってないから、実質何の罪もない。という訳で、俺に彼女出来たから、時間の掛かりそうな遠方のクエストは当分ナシね。結婚してある程度関係落ち着いたら、別にオッケーだから。金は欲しいし」

 冒険者パーティメンバーという運命共同体の三人は嫌そうな顔をしながらも、にこにこ笑う俺の言葉に頷いた。

Fin

感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ai
2023.08.23 ai
ネタバレ含む
2023.08.23 待鳥園子

感想ありがとうございます♡

どうにか話しかけて欲しくて!です( •̀ω•́ )✧

解除

あなたにおすすめの小説

婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました

春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

旦那様が素敵すぎて困ります

秋風からこ
恋愛
私には重大な秘密があります。実は…大学一のイケメンが旦那様なのです! ドジで間抜けな奥様×クールでイケメン、だけどヤキモチ妬きな旦那様のいちゃラブストーリー。

間違えて手を振っただけで、溺愛されまし

西野和歌
恋愛
騎士団隊長の兄をもつミカは親友のラナと、国のメインイベントの武術大会にて決勝戦の兄を応援していた。兄と対峙するのは同じ部隊の美貌騎士。けれど、彼は兄いわく変人なのだと言う。 戦う兄達がミカ達の観戦席に近づいた瞬間、ミカは声を張り上げて応援した。 けれど、応えたのは兄ではなく、なぜか誤解したらしき美貌騎士サイラスだった。 兄を倒し優勝したサイラスは、女神の口づけの相手を王女ではなく、突然ミカを指定した。 大衆の前で、唇を奪われ愛を囁かれるミカ。 今まで無表情のサイラスは暴走し、ミカに熱烈な執着を見せる。派手な馬車で迎えに来たり、朝からバラの花束を届けに来たりと、想定外な行動で愛を示すサイラス。 そして、サイラスがミカのために真面目な騎士になるのなら……と妹を差し出す兄。 なんとか誤解を解こうと迷いながらも、段々とサイラスに惹かれていくミカ。 ただイチャイチャじれじれしているだけの、カップル話です。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

来栖 蘭
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。