婚約破棄される令嬢の心は、断罪された王子様の手の中。

待鳥園子

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02 婚約者

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 ジェレミアが結婚前にどんな女性と付き合おうが、私と結婚することは、何年も前から決まっていて、私側の行動に何の文句も付けようがなければ、彼は決められた未来から逃げることは出来ない。

 別のご令嬢と結婚したくても、私と結婚してから、何年も経ってからと言われるだろうし、一時の浮気心なんて何年もすれば冷めてしまう。

 これまでに良い子の振りをして何も言わなかったのは、ジェレミアに嫌われたくないというだけの打算だ。

 だから、ずっと何も言わずに黙っていた。

 彼の婚約者として例え蔑ろにされていたとしても、ジェレミアのことがすごく好きだったからだ。

 けれど、こんな……周囲に貴族が取り巻く中で、婚約破棄なんて言われてしまえば、そんな我慢も全部全部無駄だったと思い知った。

 もう……私たちの婚約者としての関係も、これで終わりだわ。

 私は手をぎゅっと握りしめて、これからを生きる覚悟を決めた。

 ジェレミアの婚約者でなくなってしまうのなら、我慢せずに嫌われても別に構わないわ。

「……ああ。そうだ。ミレイユ。お前との婚約は、ここで破棄する。それで、良いんだな?」

 眉間に皺を寄せたジェレミアに再度の確認をするように聞かれたので、私は王族に対する特別なカーテシーをして、彼の言葉に同意を示した。

 ……かしこまりました。私の唯一の王子様だった人。そして、これから元婚約者になる人。

 これからは、私のしたかったことをするわ。

「この時を、待っておりました。ジェレミア様。これからは、断罪のお時間です。よろしいですわね?」

 私がそう宣言した瞬間、ジェレミアの周囲に兵士を取り巻き、彼を両側から捕らえた。

 王太子たる自分が、まさかそんな目に遭うなんて思っていなかったのか、ジェレミアはとても驚いているようだった。

 私は冷静に、ジェレミアのことを観察していた。今ではもう、怒りも湧かない。静かな覚悟だけだった。

 好きだった……すごく好きだったから、私以外の誰かと一緒に居るところを見て傷ついていた。

 だからこそ、私はジェレミアを好きなままでいたくて、いつも息苦しいほどの嫉妬の気持ちに耐えなければならなかった。

 けれど、もう好きでなくなっても良いと思えば、すごく楽だった。

 ジェレミアを好きでなくて良いならば、彼に好きになって貰わなくても良い。

 なんだって、私が言いたかったことを言える。
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