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第一部
熱
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「や。透子ちゃん、俺に何か言いたいことない?」
その人が大きな音で手を叩くたびに星屑が舞った。これは、私の夢の中だ、と漠然と感じた。
「来てくれたんですね」
私はぱちぱちと目を瞬かせてその人に焦点を合わせた。理人さんの兄である夢使いの久祈さんが早速来てくれたんだ。
「もちろん、透子ちゃんに呼ばれたからね。この前はごめん。俺は幼い頃から小夜乃には弱くてね……理人にもこってり絞られたよ」
私は上を見上げた。今夜も星空には変わりないんだけど、今日は教科書に出てくるような天体が大きな模型のようになってパステルの色付けで空に浮かんでいる。これも私の深層心理だとしたらちょっと恥ずかしい。すごく可愛い光景だけど、子どもっぽくない?
「……妹さんを大事にしているんですね」
「そうだね、あの子は特に……可哀想な子だからね……すまない。理人と結婚しただけの君には何も関係のないことだとわかっているんだが」
憂いを帯びた表情で久祈さんはキラキラした星を人差し指で押して、私の方へと導いた。星は私の周囲をくるくると回り出すと星空に帰っていった。
「……理人さんが傷ついているのは久祈さんには分かっているんですよね?」
「これだけ近くに居れば、そりゃあね。だが、それでも、小夜乃も可哀想でね……理人にはもう近付かないと約束させられているから、無理矢理持たされた夫達にも心を開かない。何も話さない有様でね、何か刺激になればと思って君の夢へと繋げてしまった」
悔いるように頭を下げると私へと視線を合わせた。
「透子ちゃん、夢の中での対抗策を知りたいと言っていたが……」
「ええ。いつもいつも久祈さんに助けてもらうっていう訳にもいかないので、出来たら教えてもらいたくて。対抗策っていうか必勝法? ですかね?」
私は真っ直ぐに久祈さんを見つめた。この人は頼めばきっと、助けてくれるだろう。でも、夫達のように私の絶対的な味方ではないと思った。
次々に草原に星が落ちて来て、くるくるとダンスを踊る。
まるで一緒に遊んでほしいとねだっている子供達のように。
「……それなら簡単だよ。君の夢の中では君が神様で王様だ。慣れたら……それこそ、君の夫達を自分の意思で出現させることも出来るだろうな」
久祈さんは星達を楽しそうに見つめながらそう言った。
「もう一つだけ、教えてほしいことがあります」
「……どうぞ。俺に答えられることなら」
「死神って何ですか?」
久祈さんはにっと笑うと、何かを言った。私は唇の動きだけを見て、どうしても、聞こえなくて眉を寄せた。
一気に覚醒する感覚がして、はあっと息をつく。時計をみると真夜中だ。どうやらあの久祈さんが出て来た夢から、起きてしまったみたいだ。
無理矢理……起こされてしまったのかもしれないけど。
「……透子? どうした」
一緒に寝ていた雄吾さんは身動ぎをした私に気がついたのか、私のことを見て、首を傾げた。
私はその大きな胸に寄り添って、呟いた。
「何でも。何もないです」
その人が大きな音で手を叩くたびに星屑が舞った。これは、私の夢の中だ、と漠然と感じた。
「来てくれたんですね」
私はぱちぱちと目を瞬かせてその人に焦点を合わせた。理人さんの兄である夢使いの久祈さんが早速来てくれたんだ。
「もちろん、透子ちゃんに呼ばれたからね。この前はごめん。俺は幼い頃から小夜乃には弱くてね……理人にもこってり絞られたよ」
私は上を見上げた。今夜も星空には変わりないんだけど、今日は教科書に出てくるような天体が大きな模型のようになってパステルの色付けで空に浮かんでいる。これも私の深層心理だとしたらちょっと恥ずかしい。すごく可愛い光景だけど、子どもっぽくない?
「……妹さんを大事にしているんですね」
「そうだね、あの子は特に……可哀想な子だからね……すまない。理人と結婚しただけの君には何も関係のないことだとわかっているんだが」
憂いを帯びた表情で久祈さんはキラキラした星を人差し指で押して、私の方へと導いた。星は私の周囲をくるくると回り出すと星空に帰っていった。
「……理人さんが傷ついているのは久祈さんには分かっているんですよね?」
「これだけ近くに居れば、そりゃあね。だが、それでも、小夜乃も可哀想でね……理人にはもう近付かないと約束させられているから、無理矢理持たされた夫達にも心を開かない。何も話さない有様でね、何か刺激になればと思って君の夢へと繋げてしまった」
悔いるように頭を下げると私へと視線を合わせた。
「透子ちゃん、夢の中での対抗策を知りたいと言っていたが……」
「ええ。いつもいつも久祈さんに助けてもらうっていう訳にもいかないので、出来たら教えてもらいたくて。対抗策っていうか必勝法? ですかね?」
私は真っ直ぐに久祈さんを見つめた。この人は頼めばきっと、助けてくれるだろう。でも、夫達のように私の絶対的な味方ではないと思った。
次々に草原に星が落ちて来て、くるくるとダンスを踊る。
まるで一緒に遊んでほしいとねだっている子供達のように。
「……それなら簡単だよ。君の夢の中では君が神様で王様だ。慣れたら……それこそ、君の夫達を自分の意思で出現させることも出来るだろうな」
久祈さんは星達を楽しそうに見つめながらそう言った。
「もう一つだけ、教えてほしいことがあります」
「……どうぞ。俺に答えられることなら」
「死神って何ですか?」
久祈さんはにっと笑うと、何かを言った。私は唇の動きだけを見て、どうしても、聞こえなくて眉を寄せた。
一気に覚醒する感覚がして、はあっと息をつく。時計をみると真夜中だ。どうやらあの久祈さんが出て来た夢から、起きてしまったみたいだ。
無理矢理……起こされてしまったのかもしれないけど。
「……透子? どうした」
一緒に寝ていた雄吾さんは身動ぎをした私に気がついたのか、私のことを見て、首を傾げた。
私はその大きな胸に寄り添って、呟いた。
「何でも。何もないです」
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