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第一部
呼ぶ声
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呆然とした私を面白そうに見た後、小夜乃さんは乗ってきた車に乗って去っていってしまった。
その森の中に残された私は小さなバッグにあるスマホを取り出して、この状況を皆に伝えるべきか、すごく迷ったけど、静かにスマホの電源を切った。なんて言えば良い?
貴方達を殺したくないから、来ないでって、言うの?
逆効果になるのは目に見えていた。
どれだけあの人達に愛されているかなんて、自分が一番よく分かっていた。
私はそっとちいさなバッグを足元に置いて、森の中へと歩を進めた。もうすぐ、夜が迫る暗い森の中へ。
遠巻きに私を伺う動物達の気配がする。靴が、すこし踵が高いものだったから、歩き辛かったけど、そのまま、奥へと進んだ。
……小夜乃さんの能力は自分の思うような病気に人をすることが出来る能力だったんだ……。確かに、誰からもすごく珍しい能力、としか聞いていなかったから、注意を怠った。これは、自分のミスで私は誰も責めることは出来ない。
私は自分の責任で死を選ぶんだ。
人狼を数時間で死に至らしめる呪い。それは、道を辿って人里にも戻れないことを意味していた。彼女の言う通りになるか確認するために誰かを危険に晒す事なんて、考えられない。
知らず、涙が溢れた。
あの愛する人達にもう会うことが出来ない。あんなに愛してもらったのに、残して一人で逝ってしまうなんて。すごく嫌だった。でもそうするしかなかった。自分のせいで愛する人達が死ぬなんて、絶対に嫌だった。
このまま、森の中に潜んでいれば、水も食料も持たない人間の私なんて、きっと程なくして死んでしまうだろう。
私はふらふらと森の中を彷徨った。
高い、崖みたいなところがあれば、飛び降りたら、死ねるんじゃないかと、そう思いながら。
おんおーん!
どこかで遠吠えがした。もしかしたら、私の夫の一人なんじゃないかと思うと涙がこぼれる。きっと、私を皆今必死で、探してくれている。
そっと空を見上げると、この世界に来たときと一緒の大きな満月だった。
彷徨い歩いてどれくらい経っただろうか。腕時計もしていない私には、今何時なのかすらもわからなかった。
どこか、高い所、高い所、と思いながら、足場もない坂を登った。自分の命の灯火を消すための道筋は、とても、辛いものだった。
「最後に一度だけで良いから、会いたかった……」
我知らず、呟く。この世界に来てから、ずっとずっと幸せだった、愛されていた、それがいつまでも続くと、どこかで慢心していた。
もう一度、抱きしめられたかった。キスをしたかった。
出来たら、このまま、ずっと、一緒にいたいとそう言いたかった。
手足は傷だらけで服も枝に引っ掛けてぼろぼろだった。
こんな姿で会いたくはないかな……そう呑気に思った自分が信じられなくて、すこし笑った。
程なくして、視界が開けると崖にでた。下からは激しい水音が聞こえる。
ここから、飛び降りたら、きっと死ねる、そう、思った。
その森の中に残された私は小さなバッグにあるスマホを取り出して、この状況を皆に伝えるべきか、すごく迷ったけど、静かにスマホの電源を切った。なんて言えば良い?
貴方達を殺したくないから、来ないでって、言うの?
逆効果になるのは目に見えていた。
どれだけあの人達に愛されているかなんて、自分が一番よく分かっていた。
私はそっとちいさなバッグを足元に置いて、森の中へと歩を進めた。もうすぐ、夜が迫る暗い森の中へ。
遠巻きに私を伺う動物達の気配がする。靴が、すこし踵が高いものだったから、歩き辛かったけど、そのまま、奥へと進んだ。
……小夜乃さんの能力は自分の思うような病気に人をすることが出来る能力だったんだ……。確かに、誰からもすごく珍しい能力、としか聞いていなかったから、注意を怠った。これは、自分のミスで私は誰も責めることは出来ない。
私は自分の責任で死を選ぶんだ。
人狼を数時間で死に至らしめる呪い。それは、道を辿って人里にも戻れないことを意味していた。彼女の言う通りになるか確認するために誰かを危険に晒す事なんて、考えられない。
知らず、涙が溢れた。
あの愛する人達にもう会うことが出来ない。あんなに愛してもらったのに、残して一人で逝ってしまうなんて。すごく嫌だった。でもそうするしかなかった。自分のせいで愛する人達が死ぬなんて、絶対に嫌だった。
このまま、森の中に潜んでいれば、水も食料も持たない人間の私なんて、きっと程なくして死んでしまうだろう。
私はふらふらと森の中を彷徨った。
高い、崖みたいなところがあれば、飛び降りたら、死ねるんじゃないかと、そう思いながら。
おんおーん!
どこかで遠吠えがした。もしかしたら、私の夫の一人なんじゃないかと思うと涙がこぼれる。きっと、私を皆今必死で、探してくれている。
そっと空を見上げると、この世界に来たときと一緒の大きな満月だった。
彷徨い歩いてどれくらい経っただろうか。腕時計もしていない私には、今何時なのかすらもわからなかった。
どこか、高い所、高い所、と思いながら、足場もない坂を登った。自分の命の灯火を消すための道筋は、とても、辛いものだった。
「最後に一度だけで良いから、会いたかった……」
我知らず、呟く。この世界に来てから、ずっとずっと幸せだった、愛されていた、それがいつまでも続くと、どこかで慢心していた。
もう一度、抱きしめられたかった。キスをしたかった。
出来たら、このまま、ずっと、一緒にいたいとそう言いたかった。
手足は傷だらけで服も枝に引っ掛けてぼろぼろだった。
こんな姿で会いたくはないかな……そう呑気に思った自分が信じられなくて、すこし笑った。
程なくして、視界が開けると崖にでた。下からは激しい水音が聞こえる。
ここから、飛び降りたら、きっと死ねる、そう、思った。
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